C-Cherry Crystal Cross:1
まだ書き終わってないけど、間が空きすぎている気がしたので投稿。早く書けるといいなぁ。私の努力次第ですが、仕事もあるし眠たくもなるし……。
どうぞ。
タルクさまより龍晶の育ち方を学んでいるとき、私は畑というものを思い出しました。とんと縁のないものですが、伝聞での形式とはかなり似ている印象です。あるいは、あの方の行おうとしている「漸進」も、それに似ているのかもしれません。
タルクさまは、この世の仕組みに飽いていらっしゃいます。強きものは初めから強く、弱きものはその餌食として一生を終える。そして、強いものはその強さにかまけて生き、その輝きを鈍らせても気が付くこともありません。万魔時代の生き残りは数少なくなり、そして――タルクさまのおっしゃるには「星が失われた」と。あの方のおっしゃることはあの方の知識をもとにしているため、周囲からの理解を受けることは少ないように感じます。しかしながら、答えの一部を垣間見た私はあの方の言わんとしているそれを知ることができました。
タルクさまは、魔力濃度による等級測定のことを言っているようです。赤から紫――それが人間や、より魔力に適応した魔人に計測できる限界。しかし、明らかにそれを超越したものは存在したはずです。現在でも、紫等級を超えた――実験体12号と864号、あのようなものはもう超越的存在と呼ぶべきでしょう。77号や9792号のような現在努力中のものも、最終的な到達点がどこになるのか、あの方の最近の楽しみであるようでした。
私が見たもっとも強力なモンスターは、不可思議に揺らめく紫の魔力を持っていました。タルクさまがおっしゃるには「紫」の先には「黒紫」があるのだそうです。とはいえそれはもはや形骸化しており、ないに等しいものを現すという無駄から切り捨てられ、非公式のものとされています。しかし、下級モンスターから進化――否、「享華」を続けた彼らはそれをさえ超えてくれるのかもしれません。タルクさまが期待されているのは、そのあたりについてのことでしょう。
話を戻しましょう。私が申しあげたいのは龍晶の育ち方について、です。
かれらは区画分けされた部屋や洞窟で育てられ、成長すると自分の足で歩きだします。そして成長し、「玉牙」と呼ばれる状態へと成長します。ここまでは複製したように同じですが、ここからが本番。享華するにも個性は重要で、命令を聞くしか能がないような生物がいつまで経ってもそのままであるように、強さと個性を併せ持つものでなければ龍晶にはなり得ません。
龍晶が色それぞれのものだと思われていながら、実はまったくそうでないことを教わってたいへん驚きました。誰もがそう思うものでしょう。しかし、だからといってそれを知ることのできるものが多くいるわけではありませんので、仕方ないことです。
タルクさまのおっしゃるには、彼らの実験はあの方と時期を同じくして行われているにもかかわらず、あの方とは違いまるで成果を出していないそうです。それというのも、畑に植え付けられた作物には感情がない――というごく単純な事実を、彼らが見落としているからにほかなりません。
かのエピロシディナ――なつくほど仲の良い少女がおり、先導役としてシフィラグルム・カルジスティローソが選ばれ、かれは大変恵まれた環境にあります。もしかれが生き抜くことができなかったとしても、シフィラグルムが勝ち残るだけのこと。もしくは、タルクさまとは関係のない「擬巧剣形」――『二代目』が望まれるだけの力を手にするのかもしれません。生き残るものはすなわち、勝ち残ったもの。「勝者は正義の使者である」という言葉もあるように、勝ちこそがすべてを正当化するのです。
さて、私たちの思うことや考えることをよそに、結晶たちは成長しています。9792号が食べてしまった六角晶も、グレベルス痕源野から撒かれた石晶子のひとつ。いかなる報復が待っているのかは知れませんが、かれはいずれその因縁に決着をつける日を迎えることになります。
そのような未来の話は置いて――ひとまず、現状の観察に映るとしましょう。
グレベルス痕源野の地下――という表現をすると、そこにしかいないかのような思いを抱かれてしまうかもしれません。しかし、実際には違います。ウサギの生息域は人間と同じくしているかと思いきや、実のところ災濫大陸にも上位種がいるのと同じこと。我々には及びもつかないほど小さな力でも、確かにそこにいるものなのです。廃墟にぽうっと灯る六角晶。瓶に入れられて運命から逃れたことを知り、微笑んでいるもの。波打ち際に石と同じに転がる、ほんの小さな光るもの。すべてが「石晶子」です。
龍晶から生み出され、宙を漂ってどこかしらへ付着、魔力の流れを作る生き物としてふわふわと光ることになります。近い生き方をするものは、キノコやコケでしょうか。少し昔に凶悪な龍晶が人間へ寄生する石晶子を作り出し、「夜光病」という病が流行ったことがありました。彼が元凶を殺したことでぷっつりと途絶えましたが、生き急ぐ彼には、あれが誰にでもできる簡単な細工だということが分からないのかもしれません。
瓶に入ってふわふわと光り、火を使わない安全なランプとして人間と共生するものは幸いだと言えるでしょう。かれらはモンスターとしての宿命から逃れ、穏やかな一生を過ごすことができるのです。龍晶のスケールからすればごく短い命でしょうが、戦いに満ちた修羅の国を生き抜くよりは楽なこと。
楽な道を生きるべき魂が、流されるままに竜の力を手に入れてしまえば――いったい何が起こるのかは、想像に難くないかと思われます。
◇
モンスターに「種族」という概念を付けたのは広義のヒトであるため、個体ごとの違いを説明することはたいへん難しい。文字で示される名前は指標にすぎず、「鋼鱗」と書かれてはいるが鋼を鱗にしているようなものは非常に珍しかった。鋼とは精錬された鉄であり、そのようなものを日常的に食えるトカゲなど、好事家に飼われるもの以外にはいないからである。それは一種の比喩、かつ彼らの見た目が「金属光沢を帯びた地の蛟」であることに由来する、実情からすれば少しばかり大きな名前だった。
命の輝きを失い、血を流し尽くしてぐったりとくずおれている「鋼鱗蛟」は、ごく弱い陸生のザリガニやカニを主食としているトカゲから享華した。
かれの尻尾は、金属装甲を殴るために鱗をまっすぐ揃えることしかできず、それぞれを微調整して切れ味を上げるようなことはできない。金属の鱗の成分はおもに合金への添加剤として使用されるニメルキット、かれのエサと同じく打撃にはめっぽう弱く、重さのある斬撃を受け止めるにも強度が足りない。
その遺骸の真相を簡単に言えば――「才能のない」個体だから、であった。手軽に手に入る安楽に身を任せ、必要な力それのみで満足してしまう生き物は「その先」を求めない。結果として、享華しても甲殻類の硬さから何かを学び取るようなことはなく、戦闘能力はトカゲであったときと何も変わっていなかった。
否、その通りだが断じてそうではない。確かに鋼鱗蛟は強力な生物ではないが、それ以上に相手があまりにも絶対的すぎたのだ。人のみならずほとんどの生物が逃げ出し、災害であると語り継がれるほどの強者――王の子として生まれる「玉牙」である。
陰から死骸の様子をうかがっているものたちの気配を感じて、彼女――「桜玉牙」はひどく憂鬱な気分になった。相手は死んでいる。そして、彼女がそれを食べることはない。ソリッドにして凝魔霊命体である「玉牙」は自分が動くための魔力を自分で作り出すことができ、その吸収を誰かに依存することはない。当然、食事も不要である。相手が襲ってきたとはいえ、殺す必要のないものをどうして殺してしまったのか――。彼女は、強者のみに許される、一種驕慢とも思える考えを抱いていた。
『どうしたんだい、さくら』
「あ、――母様……なんでもありません」
もっとも早く、最適な享華をした個体として、「母」は彼女に目をかけている。ただ、その気弱な性格は以前からたしなめているものの、直りそうもない。
『あんたも早くその性格を直したらどうなんだい? あんたは強いし賢いから悩めるのさ、他のやつらをごらんよ……言葉が聞けるだけマシじゃあないか』
まともな返答ができないもの、言葉というものを知らないもの、自分勝手しか言わぬものや従うことしか知らぬものもある。従うこと、反抗すること、返答することがすべて満足にできる個体などというものは、なかでも上位の玉牙なのだ。
『力を磨くにも、戦いの勘を研ぎ澄ますにも――殺す、勝つってことは重要さね。見たところ、あんたはもう「答え」にたどり着いてるみたいじゃないか』
「答え」――玉牙が龍晶になり得る絶対の条件として、その魔力を固め放つ「剣気」を操ることがある。玉牙は動くことができるが、龍晶は足も腕もなく、ほとんど動けない。何かしら外部に影響を及ぼす手段がなければ、愚にもつかぬ強度の道具しか持たない、吹けば飛ぶような人間ごときにアルエリウムを採掘されて死ぬという屈辱を受けることになるだろう。
『……わざわざ言いに来たのはね。二人になったのさ――あんたと「紅玉牙」のね』
「それでは――」
分かったみたいだね、と「母」は笑いかける。
『最後の殺し合い……前哨戦を始めるよ。あたしが蟲毒に出すにしたって、負けて死ぬようなのを出すのはマナー違反じゃないか? 自信のあるのを表に出さなきゃ、お披露目にしたってひどすぎるってもんさ』
蟲毒は、最上位の生物の戯れであることが多い。ここ数年幾度も行われてきたタルク・ザーンのものにしても、目的がなければ同じようなものである。
『あんたの答え、楽しみにしてるよ』
桜玉牙は、静かにうつむいた。
目つきとか足音の関係で「天然ストーカー」である私、この頃も絶賛勘違いされ中。私が近くにいると「こいつ……」みたいな顔でこっち見てくる女性、マジ怖い。会話したことすらないし名前も知らないんだから興味持つわけないんですけどぉ! 女性はともかく、男性も「……?」みたいな顔するんですよねぇ。(ホモじゃ)ないです全然。なんで行く先々でこういう女性にばかり当たってしまうのかなぁ……いやすぎる。女運改善の方法ってどなたかご存知じゃありませんか?
「鋼鱗蛟」
爬虫類・蛟系統派生・下位偽竜:武装甲殻類下位種
気能:「甲殻変性」
液能:(おおむね「なし」と考えられている)
剱蜥蜴の享華体。「四足歩行の肉食恐竜」というたとえがいちばん分かりやすい(はず)。尻尾の先端付近は縦に扁平な甲殻になっており、力を入れてそれらを繋げることで「巨剣形態」と呼ばれる状態に変化させる。武装甲殻類であるため、食べたものから甲殻を形成、強化する性質を持っている。
グレベルス痕源野における食物連鎖ヒエラルキーは下位。ふつう知能が低く、目立った武器である尾剣もあまり扱いやすい部類ではないため、それなりに強いが攻略方法は存在する相手として、上位のモンスターからすると常食できるエサとして扱われている。ときおりそうとは思えないほど強い個体がいるが、これはさらに享華した個体と間違えている(見た目があまり変わっていない?)か、たぐいまれな才能を持つものだと考えられる。
最近「背中に晶殻を生やしたミズチ」の目撃情報があったが、ミズチにしては強すぎるため、なにかほかの地竜・剣竜系モンスターだと考えられている。




