ガチャ1231回目:経験値システムの秘密
「イリスはさっきこのレッドパイナップルを食ってたよな。ちょっとこっちおいで」
『プル?』
コロコロ転がってきたイリスを抱き上げ、香りを嗅いでみる。
「うぐっ」
するとかなり強烈な香りが鼻腔を突き抜けた。まるでパイナップルそのものに顔を押し付けているような感じだ。まあぶっちゃけ、イリスを抱きしめるまでもなく、近くに転がってきた段階で、既にかなりパイナップルの匂いがこっちに来ていたんだが。
「メリットはあるけど、デメリットの方がデカいかもな」
「そのままの使用は難しそうですね」
「でも、旦那様の桜の香りなら全然大丈夫なのですわ」
「リンゴ以降は明らかに果実の香りがするから、薄めないとキツそうねー」
「ご主人様。このレッドパイナップルを1つ、切ってみてもよろしいでしょうか」
「ああ、良いぞ」
そうしてアイラがパイナップルを切り分け、フルーツ盛りやジュースにしたりと色々と作ってくれた。
だが、果実そのままは『鑑定』結果に変化はなく、果汁100%ジュースも同様だったし、他の果汁と混ぜても香りが重複すると言うとんでも効果になったため試飲せずイリスに丸投げする事にした。
その結果、イリスはパイナップルとリンゴの香りを放つ存在へと進化したのだった。30分で効果切れるけど。
このまま外に出たらアリにたかられそうだが、イリスの存在力が強すぎるせいでアリも近寄れないかもな。仮に近寄れたとしても、待っているのはイリスに捕食される未来だけだ。
『プルプル』
「ジュース、美味しかったってさ」
「それはようございました。現状即座に試せるものではデメリットを打ち消せませんでしたね。水で割るのは味の低下を招きますし」
「だな」
「ですが、種の確保はできましたので、我が家で栽培することは可能かもしれません。そこで品種改良ができれば、使えるものになるやもしれません」
「ふむ。まあそういうのは任せるよ。マキも、惜しみなく使ってくれな」
「はいっ」
とりあえず、とんでもなく甘い匂いを発するイリスは少し離れたところで遊んでもらうとしてだ。気になることを片付けておこう。
「アイラ」
「はい。レベルの事でございますね」
やっぱ聞こえていたか。
「アイラが大怪我したその事件って、具体的にどの程度の強敵と戦ってたんだ?」
「そうですね。あれは『中級ダンジョン』に潜む特殊なレアモンスターとの戦いでした。レベルは238。当時の宝条院家では選抜チームを選出して討伐する選択をしました」
ほう、238か。
……ん? 238!?
「アイラの当時のレベルは?」
「はい。169でした」
「……あれ、それって」
「はい。結果から言えば、討伐こそできましたが私のレベルは上がっていません」
「マジか」
何か特殊な敵だったのか?
でもレベルの表示がある以上、経験値のないモンスターだったわけでもないだろうしな……。
「当時の私としましては、そういうものなのかと納得していました。しかし、改めて考えるとおかしな話ですね。思い返してみても何か特別なことはしていなかったはずなのですが……」
「サクヤさんに詳細を聞いたりは……してないんだよな」
「はい。その事件以降、選抜チームからは抜けましたし、以後はお嬢様と共にしか行動をしておりませんから」
「ふむ」
……なら、色々と聞いてみるか。
「当時の選抜チームの人数は?」
「30人ほどだったかと」
「レアモンスターは単一型か? それとも複数型か?」
「単一型でした。ご主人様も戦ったことのある相手ですね」
「ほう。……『クラーケン』とか?」
「はい。正解です」
「あー……」
義姉さん達も戦ったことあるって言ってたし、そうなんじゃないかなーとは思ってたが、その通りだったか。
「実際に戦っていた人数は?」
「入れ替わり立ち替わりでしたが、先ほど述べた全員が戦闘に参加していました」
「戦闘に参加したメンバーの中で、一番レベルが高かったのは?」
「178です。私は3位でした」
「討伐後にドロップはしたのか?」
「私が直接確認した訳ではないのですが、していたようですね」
「その時現場にはいなかったのか? ああいや、大怪我してたんだっけ」
「ダンジョン内にはいましたが、攻撃の届かない距離まで離れていました」
「選抜チームの中で、レベルアップした人はいたのか?」
「……記憶にある限り、いなかったように思います」
「ふーむ」
……となると、考えられる要素としては1つだけだな。けど、前例がな……。俺の経験の中で、その事象に関係のある出来事はなかったっけ……?
『思考加速』と『並列処理』を全力稼働させ、過去の出来事を順番に思い出していく。すると、かなり前の出来事ではあったが、思い当たるイベントが1つあったことを思い出した。
「ふむ。大体理解した」
「わっ。すごいです!」
「流石ショウタ君ね」
「流石旦那様ですわー」
「ご主人様、お聞かせ願えますか」
「ああ。多分だけど、討伐人数が一定の数を超えると経験値が入らないんだと思う。その人数が15か20かは分からないが、大体その辺りから同時に戦闘すると経験値が突然0になるんじゃないかな」
チームを組もうがソロで戦おうが経験値の減少が起きないシステムだと思ってたけど、増えすぎると逆に問題が起きるとは思わないよな。
「え、でもそんな単純な話なの?」
「人数が多すぎると経験値が入らない、ですか。想像できなくはないですけど、聞いたことがないですね」
「そりゃ、普通は1体のモンスターに、何十人も一斉に攻撃して殴りかかることがないからだろ。普通はそんなに集まって攻撃しようとはしないし、小型のモンスターに大人数で集まっても効率が悪いし事故も起きかねない。なんなら、モンスターの体力がもたないだろうし、練習だからってそんな状態でレベルが上がるまで何体も倒すなんてこともないはずだ」
「納得ですわ。学校でも、先導する先輩と追従する後輩がセットで動くことはあっても、10人以上で同じ相手に攻撃することなんてありませんもの」
「なるほど……。思考から察するに、ご主人様にも似たような経験があるように見えました。それはどのような場面だったのでしょう。思い出そうとしましたが、私の記憶にそのような場面はなかったように思えますので」
しれっと思考を読んでそこから察するなよ。まあ良いけど。
「ああ、それはアイラやアヤネと出会う前の話なんだ。それにマキも、実際に見てないから想像つかないかも」
「え、じゃああたしだけ知ってること?」
「ああ」
アキは思い出すためにうーんうーんと唸り始めた。だいぶ前の出来事だけど、アキは思い出せるかなー。
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