ガチャ1226回目:フレグランス
「ではご主人様、次はどうされますか?」
「んー……。今って何時?」
「11時半ですね」
「じゃあお昼にしようか。場所は…向こうの電波塔設置ポイントにしようか」
そうして俺達はカニの群生地を抜け、次のモンスターをスルーして2つ目の安全地帯を目指すことにした。ちなみに1つ目はダンジョンの入口である。
「どうもー。お疲れ様ですー」
安全地帯にいる駐在員に軽く挨拶をし、そのままいつもの拠点を建てて昼食を摂る。
「……他の皆には悪いけど、やっぱりこのメンバーだとなんか安心するな」
「ショウタ君……。ふふ、そうね。懐かしくなっちゃうわよね」
「ここ最近はずっとお家で留守番していましたから、新鮮です」
「えへへ、旦那様ー」
「家庭を大事にする事も大切ですが、この時間もまたかけがえのないものですね」
「ああ、まったくだ」
ただ、あまりにも幸せすぎてこの空間から抜け出すのがちょっと億劫ではあるんだよな。狩りをしなきゃいけないのはわかるんだが……。
「ふふ、だめですよショウタさん」
「今日中に全ての雑魚のレアを終わらせちゃえば、あとはゆーっくりできるのよ」
「いっぱい頑張ったら、いっぱいご褒美が待ってますわ!」
「さあさ、ご主人様。お立ちになってください」
「むむむ」
……はー、頑張るか。
やる気を取り戻すために彼女達を順々に抱きしめていると、エンキ達も並んでやってきた。
『ゴーゴゴ』
『ポポ』
『プルプル』
『キュイキュイ』
『♪』
「おー」
順番にハイタッチを済ませ、そのまま外に出る。
「んじゃ、再開しますかね」
彼女達が片付けをしている間、俺は軽く準備体操をしつつマップを開く。次の獲物は、さっきスルーしたモンスターだな。
「……こいつらかー」
さっき通り過ぎる時に見ていたステータスを思い出す。
*****
名前:チェリーサップリング
レベル:27
腕力:100
器用:120
頑丈:120
俊敏:200
魔力:400
知力:80
運:なし
【Pスキル】鞭の心得Lv2
★【Eスキル】蕾、蔓の鞭
装備:なし
ドロップ:チェリーの実
魔石:小
*****
見た目は地面から生えたピンク色の木の枝だったが、あれには覚えがあった。『幻想ダンジョン』こと、エス達のダンジョン第二層で見たモンスターだ。あれは確か本体が球根で、木の枝部分は触覚というか、それを鞭のようにしならせて振るってくるんだったかな。
「片付け終わったわよー」
「それでは、行きましょうっ」
「ああ」
その記憶を辿りながらモンスターの群生地にやってきた。そこでは、ピンク色の枝が所狭しと地面から伸びており、風を受けてゆらゆらと揺れていた。
「あのモンスターもあのモンスターで、懐かしいよな」
「ふふ、そうですね」
「あの頃も、メンバーとしてはほとんど変わらないわよね」
「ですわー」
「あの時は枝を切って本体を叩くか、本体を遠距離で直接叩くかで対処していましたね。今回もそうなさいますか?」
「ああ、そのつもりだ」
とりあえず、まずは安全策として枝を切り落とすか。
『スパッ』
連中が俺の動きを察知するよりも早く、付近にいた5体分の枝を根本から切り落とす。
『……!』
唯一の武器を落とされたことに気付いたようで、焦りのような感情が地面から伝わってくる。球根にも感情はあるんだな。モンスターだからかな?
けど、何をしてくるんだろうかと見守っていたけど、本当に何もできないのか地面の中でじっと動かないでいるので、そのまま本体を剣で突き刺し順番に始末していく。
そして剣を引き抜く頃には奴らは煙となって消えていき、アイテムをばら撒いて行った。
「やっぱ、狩りやすい相手だよな」
「確かに狩りやすい相手ではあると思うけど、率先して狩るにはちょっと旨味が無さすぎる相手だと思うのよね」
「スキルは『鞭の心得』だけしかありませんし、ドロップアイテムも木の実だけですもんね」
「経験を積むなら安全ではありますけど、このモンスター相手に長居する事は無いと思いますわ」
「そうですね。この場から動けず魔法も使用してこないのであれば、鞭を使うタイプのモンスターを想定とした練習相手にはなるとは思います。ですが、メインの狩り対象になるかと言われると……。疑問しかありませんね」
「ぬぬぬ」
嫁達からは不評のようだった。
まあ、これが『鞭術』のスキルだったならその評価も覆せたかもだけど、心得じゃしょうがないか……
となると、価値があるか見出すにはこの木の実が大事な訳だが……。
名前:チェリーの実
品格:≪最高≫エピック
種別:食材
説明:チェリーサップリングの頭に稀に生ると言われるピンク色の果実。甘くて美味しい。食べると30分間桜の香りに包まれる。
「ほぉ?」
見た目はピンク色のさくらんぼで、従来のイメージするさくらんぼと同様にヘタが付いていて、果実は1ドロップに付き2個出てくるようだった。この見た目って事はやっぱり種有りなのかな? それならワンチャン我が家で栽培できたりするか……?
それにしてもカニ肉は『希少』だったが、こっちは『最高』なのか。レベル20台の雑魚モンスターなのにそれなりの品質が出るって事は、それだけ希少性が高く、ドロップ率もそれに準じて低いって事だよな。
「食べればサクラの香りに包まれるっていうが、それは口臭か? それとも体臭の方か?」
「5体倒して10個も出たんだし、まずは食べてみましょうよ」
「旦那様、あーんですわ」
「あーん」
とりあえず、ヘタについてる1個を口に運び、舌で転がす。身の柔らかさは従来のサクランボと同じ感じか。そして歯を立てればやっぱり種があったが、構わず噛み砕く。
『ガリゴリ』
うん、別に種は旨くないな。
「イリスちゃんもどうぞ」
『プル~♪』
果肉の方の味は、さくらんぼと桃を足して割ったような甘ったるい感じだな。まあ悪くはない。そして肝心の匂いだが……。
「まるでご主人様がディフューザーになったかのように、全身から桜の香りがしますね」
「良い香りですわ~」
「どれどれ?」
「失礼しますね」
アキとマキが俺にくっついて深呼吸をする。
「うーん。ショウタ君の匂いが全然しないわね?」
「体臭とかも全部、桜の香りに塗り変わってるような感じがします。それに服にあるはずの汗の匂いも、今はしません」
「そうなのか」
強制的な匂いの上書きか。それも、過去に俺が流した汗の匂いも丸ごと上書きする効果があると。
「まるで食べられる香水だな」
30分しかもたないけど。使い所は……わからんな。俺の分野じゃないし。
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