ガチャ1217回目:危険物の正体
宝箱を開封する前に、まずは全身を魔力で覆う。石化粒子に腕を突っ込んだ時と同じ要領だが、全身となるとそれなりに集中力を要する。それの維持もまた同様だ。今は戦闘中じゃないけど、戦いの最中これをずっと維持し続けるのはかなりしんどいと思うが、強敵……例の『炎の大精霊』や、『四神』と戦うときなんかにもきっと役立ってくれるはずだから、なるべく戦闘中にも維持できるように練習は続けていきたいところだな。
んじゃ、この状態で宝箱を開けるとしますかね。
『プルプル』
『プルプルプル』
宝箱を開けようとしたところで、何体かのスライムが飛び跳ねながらこっちに転がって来た。攻撃の為か跳ねたスライムが俺に向かって突撃してきたが、魔力でできた外皮にぶつかり跳ね返っていく。完全にノーダメージというか、そもそも俺の身体にすら届いていない訳だが、この魔力の鎧は物理的な攻撃も避けられるようだ。
一応旅行中に軽くこの行為に関して検証してみたんだが、攻撃の意志の有無にかかわらず、物質的接触のみならず、魔法攻撃すら退ける効果があり、その防御力もアキやレンカの近接格闘型の攻撃や、エスやクリスの四元素魔法すら防げる代物だった。ただ、威力が高ければ高いほど纏った魔力はごっそりとえぐられるし、維持し続けるだけでも魔力の消費は激しい。その上、ちょっとでも気を緩めると魔力は霧散してしまうというデメリットがあるんだよな。
しかも、スキルとして行使しているわけじゃないからか、『魔力の叡智』による消費量軽減効果も機能しないってんだから、辛いところだ。
『プルプル』
『プルプルプル』
スライム達は気まぐれなので一度攻撃し始めたら連続で飛び掛かってくる事もあれば、諦めて離れる事もあるのだが、こいつらは諦めないタイプのようだった。その辺は個体差があるようで、スライム博士の俺でも見た目からでは判別できないんだよな。
そんな彼らは今も尚、弾かれようとおかまいなしに突撃をしてきている。今の俺なら軽く手で払っただけで倒せてしまいそうだが、ここに通い出した時はこんな攻撃でも当たれば痛かったんだよなぁ。懐かしい。
『マスター、そいつら掃除した方がいーい?』
「いや、宝箱の中身がどんな影響を与えるか確認したいからな。こいつらはこのままで良い」
『はーい』
うん、改めて後ろにいるアズ達を『解析の魔眼』で見たが、ちゃんとしっかり魔力を纏えているな。聞くところによるとこういう技術は向こうでも一部上位存在の間では認識されてはいたそうだが、実戦向きとはされていないようだった。この魔力纏いは燃費が最悪な上に集中力もいるからな。
その上、体系的な確立もされていないらしい。まあ確かに、向こうで確立された技術ならスキルとして存在しててもおかしくないもんな。
物理的接触を完全に弾き、なんなら魔法すら弾くんだから、ある意味最強の防御手段だ。それがもし魔力の消費が抑えられ、確立された技術としてスキルに登録されていたとしたら……間違いなく『幻想』枠だろう。
おっと、思考が逸れた。周辺のスライムも集まって来てるようだし、そろそろ開けちまうか。
「ぱかっとな」
『ブワッ……!!』
『パキパキパキッ!』
宝箱内部から石灰色の粒子が溢れ出した。
俺の全身は魔力で覆われている為影響は受けなかったが、俺の周囲にいたスライムはその影響をモロに受けたようで、完全に石化していた。そうなってもなお、宝箱からは石灰色の粒子が溢れ続けており、放っておけばこの辺り一帯を埋め尽くしかねないな。
一応ここはダンジョンだから、自浄システムが働いているので、滞留し続ける事は無いはずだが……原因が取り除かれなければずっとこうなっている可能性が高い。まずは原因の究明が先だな。
まずチェックすべきは、宝箱の中身だが……。
「……」
何もない。
中身がある訳でもなく、暗闇がある訳でもない。ただ、認識できない虚無が広がっていた。その虚無を調べようと『鑑定』系統を働かせるが、何の情報も得られなかった。それでもその虚無からは石化させる粒子が溢れ続けているし、俺の周囲は完全にその粒子で包まれてしまっていた。
少し離れた位置にいるアズ達が心配ではあるが、集中が途切れてしまうとこの魔力纏いも解ける可能性があるし、下手に動くことはできない。今は無事であることを信じよう。
「……見えないなら、本質はこっちか?」
俺は、虚無や辺りに漂う粒子ではなく、宝箱本体を視る事にした。
名前:【No.09】十戒罰の箱
品格:≪奈落≫アビス
種別:死の秘宝
説明:世界に10種ある戒罰の箱の1つ。人々に様々な災いを振りまく十戒罰。触れた物を石化させる粒子を無尽蔵にばらまき、周囲の全てを石像へと変える。浄化による破壊が可能。
★No.01~No.10まで存在し、No.に応じて異なる災いを齎す。
★世界に1つしか存在できないが、必ず1つ存在する。
★従来の石化とは異なり、石化した対象の魔力を奪い続ける。対象の魔力がなくなると死亡する。
「……」
その文面を見た俺は、猛烈に箱を浄化したい感情に支配されそうになるが、歯を食いしばりそのまま箱を勢いよく閉じた。
すると粒子がそれ以上外に漏れる事はなくなり、次第に周囲に留まっていた石灰色の粒子も薄れて消えて行った。そして俺の周囲をちょろちょろしていたスライムは、いつの間にか粉々に砕け散っていた。……内部の魔力を吸い尽くされたようだな。
「……ふぅー」
名前:ミスリルの宝箱
品格:≪遺産≫レガシー
種別:モンスタードロップ
説明:ブラックコカトリスのアイテムリストから抽選。
改めて宝箱を視れば、いつも通りの情報に置き換わっていた。これは箱を閉めた事で宝箱から抽選をやり直す……とかでは全くない。俺の直感が、こいつは『奈落』だとハッキリと告げている。
……流石は『奈落』といったところか。偽装が上手い。
「はー……。しんど」
俺が気を抜いて仰向けに倒れた事を認識したようで、アズ達が駆け寄って来る。今は彼女達に甘えて、この精神的疲労をなんとかしてもらうとしよう。
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