ガチャ1176回目:視えない結果
「兄さん!」
「おう、エス。さっきはサンキューな」
コハクを可愛がっているとエス達がやって来た。エスが連れ歩く彼女達は、先ほどの彼の活躍に満足しているんだろう。シルヴィは幸せオーラ全開だし、リリムとリリィは熱い視線をエスに向けている。
俺もああいう熱量ある視線は飛ばされがちだったけど、他所から見るとこうもわかりやすかったのか。なんというか不思議な気分だ。
「それにしても不思議なダンジョンだね。多少明るくなって見やすくなったけど、あの空間はそのままだし」
「ああ、中が視えないまんまだ」
所々に発生している空間の穴。あれは明るくなって以降、マップを解放しているアズとイズミに再更新を掛けさせても変化が無かったところからして、まだ読み解くための条件は整っていないという事だろう。
現状考えられる条件としては……。
「やっぱり明るさが鍵かな」
「そうなるだろうね」
「最低でもプラマイ0。もしくは、太陽が登るくらいの明るさを取り戻して、ようやく中身が認識できるようになるんだと思う」
「兄さんとしては、明るくなる条件は何だと思う?」
「そうだな……。まず大前提として、コハクがその力の受け皿なんだろう」
『キャン』
こいつが俺の隣に出現した瞬間、そして名づけをした瞬間に若干ながらも世界は明るさを取り戻した。そしてレアⅡを撃破した際に、世界に広がった夜の帳が弱体化すると同時にほんのちょっと成長してみせたのだ。これで無関係なはずはない。
「ただ、それ以外にもこのダンジョンには謎があるよね」
「ん?」
「敵の情報が見れないのもあるけど、一番はこれさ」
エスが見せたのは魔石だった。雑魚の『中魔石』に、レアと思しき『特大魔石』。そしてレアⅡと思しき『中魔煌石』。
「これがどうした?」
「どうしたって、ドロップアイテムの事だよ。まるでシルヴィと連結する前の僕みたいじゃないか」
「ああ、それね。……それはなんとなく、予想は付いてるんだよな」
「そうなのかい? 僕としては『極大魔石』クラスのレアモンスターがスキルを一切持っていないことが不可解なんだけど……」
「ああ、まずは前提条件としてそこが間違ってる。あのモンスター共は間違いなく通常のスキルを持ってる。ただ、ドロップしないだけでな」
「……どういうことだい? 兄さんの『運』でもドロップしないほど、倍率が0に近い数値に設定されているとか?」
「それも多少考えたが、俺の『運』が1個も引っ張ってこれない時点でそれは無いと考えた」
「……凄い自信だけど、確かにそれもそうだね」
「それでお兄ちゃんは、アイテムがドロップしない理由に心当たりがあるんだよね?」
「教えてお兄様ー☆」
「……まあ良いけど、あくまで仮説だからな?」
そう言うと、嫁達がうんうんと頷いた。めちゃくちゃ期待されてるけど……まあ、彼女達なら仮説が外れたところで、期待と希望が反転する事は無いだろうけど。
「かなり前の話になるけど、俺が日本で初めてスキルのⅡ以降の存在を公開した頃の事だ。あの時は、レベルのないスキルは全て無印しか存在しないと認知されていた。まあ、国外ではそれなりに広まっていた話ではあるんだが、日本では大衆に認知はされてなかった内容だな」
「もう1年近くも前の事ですね」
「懐かしいですわ」
「そうそう。その頃の話を以前サクヤさんから聞いてたんだ。んで、その時に得た情報と、今回のドロップ無しは非常に関係のある話なんじゃないかと予想している」
「その情報って?」
「それはな、スキルのⅡとかⅢを持ってるレアモンスターを倒した際に、そのモンスターはⅡやⅢではなく無印をドロップしてたという話だ」
「……??」
「え?」
「どういうことー?」
第二チームの間に困惑が広がる。初めて聞く話だったのかもな。
そしてペット組は案の定こちらに背を向けていた。気が利くな~。
「理由は簡単だ。当時モンスターを『鑑定』していた人間は重ね掛けによるⅡやⅢの存在を知らなかったんだ。その結果、『鑑定』結果もⅡやⅢではなく無印に視えていたし、ドロップも視えている情報通りのものしかドロップしなかったんだ」
「「「「「「へぇ~!」」」」」」
「……なるほど、そういう事か。兄さんの言いたいことが分かったよ」
「お、分かってくれた?」
「ああ。つまり、視えている情報のスキルしかドロップしないのなら、スキルが視えない以上何もドロップする事は無い。兄さんはそう判断したんだろう?」
「そういうことだ」
「「「「「「「おお~」」」」」」」
その答えに、シルヴィも参戦して小さく拍手をしてくれた。
「だからここの雑魚もレアもレアⅡも、何のスキルもドロップしなかったんだと思う」
そしてこの話には当然例外がある。その内の1つが魔石だ。これはこのダンジョンに始まった話ではない。なんせ、最初にダンジョンが出現した際人類は誰も『鑑定』スキルなんぞもってなかった。それなのに魔石が出回っていたという事は、魔石に設定されたドロップ条件は、知る知らないに関係なく、確率だけしかないって事なんだろう。
そしてもう1つは……『レベルガチャ』だ。他の『幻想』スキルは特殊な試練や宝箱を通してだったからさておき、『レベルガチャ』はレアモンスターからの唯一ドロップだった。となると、こいつは普通のスキルの枠組みにとらわれない存在なんだろう。そして『真理の眼』を持たない状態で『鑑定偽装』スキルを持ってる相手と戦った時も、この例外が関わってそうなんだが……それは俺では検証のしようがないので、これは除外するものとする。
それらの話を追加で説明すると、彼女達は皆感心したように拍手を送り、ペット組は背中で応えるのだった。
「兄さんの考えた通りだったとして、もし仮にダンジョンのモンスターがどんなスキルをドロップするか全く何も知らないまま倒すような人がいた場合、その人は絶対にスキルを得られないってことになるのかな?」
「そうなると思うぞ」
「……お兄さん、それって結構重要な情報じゃないかな?」
「あたしもそう思うけど、お兄様よくわかってなさそー☆」
「ん?」
何か問題があったか?
こんなに大々的にモンスターの情報を公開してるのに、知らないまま倒すような人とか居ないと思うんだが……。
「お兄様みたいな世捨て人がいるでしょ☆」
「そこまで捨ててないんですけど?」
「それでもお兄ちゃんみたいに、極力情報をシャットアウトする人はごく少数だけど居ると思うな~」
「実力がない人がそれをすればただの自殺行為ですけど、実力がある人がそれをしてしまった場合、労力に見合った結果は得られないんですものね」
「そうね。お兄様は自前で『鑑定』スキルを持っていたから今までこんな事態にはならなかっただけで、普通の人は何の成果も得られない可能性が高い事は全国に通達するべきですね」
「まあ、そういうことなら任すよ」
その辺はサクヤさんやミキ義母さんが協議して、良い案を出してくれる事だろう。
『クゥ~ン』
「ああ、長話しちゃったな。退屈だったか?」
コハクがお腹を見せて地面に転がっているので、それをワシャワシャしてあげる。
けどここはダンジョンの第二層で、それも端っこではなくど真ん中なので割と危険地帯なのだが……それでもコハクはとっても暢気な姿をさらしていた。俺が傍にいる事で安全だと思ってくれているのかもしれないが、それ以外にも……。
「ふむ。こんだけのんびりダベってても雑魚が湧く気配はないな。このダンジョン、他とは違って進展した攻略進捗はずっとキープされるのかもしれない」
「つまり?」
「何か大きな変化が起きない限りは、一度倒した雑魚は再出現しないって事だ」
「……なるほど。どうりで平和な訳だ」
世界は暗いままだけどな。
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