ガチャ1177回目:原初魔法
「それで兄さん、まだあの暗闇については分からないままだけど、このまま次の階層に進むのかい?」
「ああ。今はやれることがなさそうだしな」
「珍しいね。兄さんがマップを全部埋めずに次に進もうとするなんて」
「まあ……そうだな。いつもなら楽しいんだけど、このダンジョンでやろうとすると苦行になりかねないからな。明るくなってからにするよ」
景色に色があるならまだしも、この階層は明るさ関係なしに全部黒いからな。全然楽しくないし目新しさもない。ひたすらに黒い空間を見せられ続けるのはちょっとした拷問である。
「流石の兄さんも音を上げたか。……なら、今回もついていった方がいいかな?」
「手間じゃなければ頼めるか? 明るさが0近くになれば俺だけでなんとかなるが、今のままだとまだお前の殲滅力が欲しい」
「了解だ、任せてくれ。……ところで兄さん、レベル上がったみたいだけど、消費しなくて良いのかい?」
「あー、それなぁ……」
「……? 彼女達が気になるなら下がらせるけど」
「いや、そうじゃないんだ。どっちかっていうと……」
『キャン?』
なぜかは分からんが、この暗闇の目の前で使用するのは躊躇われるんだよな。
まあでも使用しないのはレベルが勿体ないから、折を見て使うとしよう。例えば、次のレアⅡの直前とかにな。
「ま、後でやっておくさ」
「そうかい?」
「ねえねえお兄ちゃん。次の階層でもモンスターの能力が見えなかったら、私達も戦いたいんだけど~」
「お兄様の戦いを間近で見られるのは良い経験にはなりますが、やはり私達は実戦で学んでいきたいです」
「ん? ああ、良いぞ」
「やったっ!」
見てるだけじゃ暇だし、それなりに動き回っても問題ないくらいの明るさにはなったからな。
「分かってるとは思うけど、穴に落ちたりはするなよ~?」
「気を付けまーす!」
「兄上はあそこに入るとどうなるとお考えですか?」
「んー……多分死ぬんじゃないかな?」
「「「「「「ッ!?」」」」」」
俺は分からんけど、命の危険があることに変わりはないな。
「できる限り近付かないようにして戦いますわ」
「イズミ、指示宜しくね!」
「任せてー☆」
「んじゃ、行くかー」
そうして俺達は第三層に続く階段を降りて行った。
◇◇◇◇◇◇◇◇
次の階層もやはりというか、明るさに変化はなかった。ただまあ、第二層に降りた時と比べると視える世界の広さが段違いなので、それほどストレスは感じなかったが……それでもやっぱり、不快感を感じるな。具体的にどうと説明はできないのが気持ち悪い。
「エス、1匹釣ってくれるか? 複数釣れるとは思うが」
「OK」
風が通り抜けると、闇の奥からけたたましい鳴き声が響き渡った。
『ゴケケケケ!』
『『『『ゴケケケケ!!』』』』
そうして現れたのは、体長1メートルちょっとの黒い鶏だった。こいつも虎と同じく体毛が黒いとかそういう次元じゃなく、黒い影のような存在だったが……多少暗さが軽減されたからか、虎よりも若干影が薄いか?
だが、相変わらず『鑑定』で詳細は視れないままだったが。
「原初の炎」
ターゲットを認識し魔法を行使すると、正面に居た黒い鶏は突如として炎に包まれた。そして炎は対象の生命力を燃料にして瞬く間に火柱へと変化する。その炎は数メートルほど離れていたはずの他の鶏にも伝播していき、5体のモンスターは数秒ほどで消し炭になり消えていった。
「「「「「「「「おおー」」」」」」」」
「初めて使ったが、悪くないな」
『でしょー♪』
アズからコピーした『原初魔法』のうちの一つ、原初の炎を使ってみたんだが、まさかここまでの威力と使い勝手の良さだとは思わなかったな。
文字通りこの炎は対象の生命力を燃料にして一気に引火して、爆発的な火柱を発生させて対象を飲みこみ、更には付近にいる対象と同族の存在へと伝播していくという疫病みたいな恐ろしい能力を持っていた。
はじめてこの魔法を見たのは『バトルアリーナ』を観客に公開した際に、ゴブリン軍団がアズに襲い掛かった時だな。あの時は何が起こったか分からなかったものだが、コピーの際に効果をある程度聞いておいてよかったな。もし仮にこれを『強奪者』戦の時に使ってたら、周囲の人間に飛び火してとんでもねーことになってただろうな。
そんなことを考えている間、アズは原初の炎の効果を自慢たっぷりに皆に説明していた。
「しっかし、今の炎ですら全然明るさを感じなかったな」
『本来なら眩しさを感じるレベルの炎でしたが、まるで色を奪われたような炎でしたね』
『本来お姉様の原初の炎は、真っ赤で綺麗なはずなんですけど、黒かったですもんね』
『ショータはアズ様のスキルを使ってなんともないの?』
『心配要らないわ。マスターは色んなスキルを持ってるから、副作用とか絶対発生しないのよ』
『ほぇー。ショータすごーい!』
スキルをコピーしてもらった時、そんなデメリットがあるって説明受けてないんだけど??
まあでも良いか、実際何も起きてないんだし。俺の『直感』も無反応だったしな。
「んじゃアズ、ここのマップだが、上と似たような感じか?」
『ええ。穴の位置や数、全体の広さは増してるけど、真ん中に巨大な穴がある点も含めて構成はほとんど一緒ね。あと、マップが広くなるのに比例して雑魚の数が多くなってるわ。さっきの倍近く居るんじゃないかしら?』
「よし。じゃあ個別に動こうか。俺は変わらず右回りで外周からいくから、カスミ達は左回りで。んでエスはそのまま真ん中まで行って先に陣取っててくれ。レアを倒したら中央で合流な」
「オッケー!」
「了解だ」
そうして俺は第二チーム、第三チームと別れ、原初魔法を中心に討伐を進めていく。何度か使っていて実感したのだが、原初魔法の特徴は、やはりそのしつこさにあると思う。原初の炎もそうだが、一度発動すれば対象が死ぬまで効果を発揮し、なおかつ同族存在が近くにいれば勝手に伝播していく。集団戦にはもってこいだし、単体相手だろうと無類の強さを発揮する。
これがアズと初遭遇の際に使われてたらと思うと、ぞっとするね。対処法は無くは無いんだけど、連続で使われたら詰むし、対処している間に他のスキルで攻撃されて後手に回って詰むだろう。アズの性格からして最初は手抜きプレイしてくれるだろうけど、本気を出されたら手が付けられないだろうな。
『マスター、何考えてるのー?』
「いやぁ、アズと殺し合いにならなくて本当によかったなとな」
『んふ、ほんとねー♡』
アズがくっついてきて頬ずりしてくる。
今の状態であの時の本気アズと戦ったとしても、不殺を条件とした場合、多分勝てっこないんだよなぁ。
ほんと、ダンジョンギミックさまさまだわ。ここのギミックは微妙だけど。
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