ガチャ1146回目:群影
予想通りというべきか、渡っている途中で2度ほど足場が消失した。真ん中くらいの足場はたどり着く数歩手前で見えなくなったが、最後の足場は最初の1歩の段階で消え去っていた。
もちろん見た目だけの話であり、実際には当たり判定はしっかりあるし、水なんかの自然物の影響ももろに受けるので、落とされるようなことは無かったのだが。
「最後の島に辿り着く道では、何ヶ所消えるのかね?」
「やっぱり兄さんの予想通り、全部かな?」
「なんなら、渡ってる途中で道が変わったりして」
「覚え直しってことかい? それはそれは、普通の人には難しいだろうね」
「まあそれも、文明の利器を使えば乗り越えられるんだろうけど」
今、エスやタマモがやってるように、録画とかな。
「っと」
そんな事を話している内に3つめの島に到着した。それと同時にタマモが頭の上へと移動する。動きは完全にケモノのそれだな。
それにしてもここは……。
「草原か? やたらと暗いが」
「光が足りないんじゃなくて、闇に飲まれているみたいだね。奥の方は視覚的に何も見えないよ」
『ベリアルのダンジョンみたいなのじゃー』
あー、真っ暗なアレね。体験した身としては、それの簡易版かな。数メートル先まではハッキリと見えるし、そこから奥にかけて徐々に暗くなり、10メートル先は完全な闇だ。
それは俺自身がその場から進んでも変わらない以上、島の一部が明るいんじゃなくて、俺達個々人の視覚に強制的に効果を齎しているように思える。
「うーん、製作者のこだわりが見えるダンジョンだな」
「そうだね」
『なのじゃー』
んで、ここのモンスターも……狼っぽいんだよなー。唸り声が聞こえてくる。
『グルルルル……』
「唸ってるだけで突っ込んではこないみたいだな」
「そうみたいだね」
だが、『解析の魔眼』は『伝説』だ。暗闇の中に潜んでいても、50メートル圏内であれば同じく『伝説』の『真鑑定』が届く。
*****
名前:ロッキーウルフ
レベル:45
腕力:330
器用:380
頑丈:180
俊敏:460
魔力:400
知力:120
運:なし
【Aスキル】暗視、嗅覚強化
★【Eスキル】群影
装備:なし
ドロップ:ロッキーウルフの黒革
魔石:中
*****
ほう、『群影』。中々そそられるスキル名だな。
俺がステータスを読み上げ、頭の上にいるタマモが端末をぽちぽちと入力していく。不安定な頭の上だが、タマモは何の問題なくバランスを取っていた。両手というか、両前足が塞がってるのによくやるなぁ。
でも流石に戦闘には付いていけないようで、入力が終わったらそそくさとインナーの中に戻ってきた。
「おかえり」
『定位置についたのじゃ!』
「よしよし。じゃあエス、俺は音と気配を頼りに手当たり次第に斬りまくるから、回収は任せた」
「OK。ついでにこっちに向かってくる奴らは兄さんの方に吹き飛ばせば良いかな?」
「それで頼む」
『グルルルル……』
『アォーン!!』
前方の闇の中から遠吠えが聞こえてくると、その叫びは連鎖していき周囲の闇の中から無数の殺気が飛んできた。どうやら、追加でモンスターが出現したらしい。
『ガゥッ!』
『ガウガウッ!』
そのまま待機していれば、闇の中から漆黒の塊が現れ、飛び掛かって来る。俺はそれを一薙ぎで斬り捨てたのだが……。
「お?」
その黒い塊は攻撃と同時に粒子となってザッと消え去り、煙もドロップもなくその場から消えた。
「あー……なるほど」
今のがスキルにあった『群影』か。自分の姿そっくりの影を使役して戦わせることができると。そして増えたように感じた殺気は、『群影』によって出現したダミーからだな?
『アォーン!』
『ガウッ!』
『ガウガウッ!』
そして今し方撃破した連中が出現した付近にいる個体が本体で、再補充せずに別の『群影』をけしかけてくるところからして、再使用に時間がかかると見た。
「時間稼ぎじゃなくて、本体もろとも同時に来てくれたら多少は楽しめたのに」
『残念なのじゃー』
んじゃ、さっさと片付けますか。
俺は押し寄せる『群影』の群れを無視して、闇の奥に待機していた本体に吶喊し、これを斬り捨てた。
『ドスッ!』
『ギャンッ!』
今狙ったのは、呼び出すだけ呼び出して『群影』を側に控えさせていた個体だが……。
「ふむ」
どうやら、本体が消えると消失するらしい。その辺は雑魚召喚のスキルとは違うようだな。本体依存の分身スキルってところか。
「『Eスキル』じゃなくて主要スキルなら遊べたのに、残念だなー」
『なのじゃー』
『アォォーン!』
そうして俺の攻撃を許した狼達は、作戦を変更。全ての『群影』をけしかけてきたのだが、それじゃあ足りないよなぁ。
「ぬるい!」
『ぬるいのじゃ!』
そうして周辺に居座っていた狼どもを全て蹴散らすと、闇が晴れ、周囲が見えるようになった。まあ、奥の方はここと同じく闇に包まれていたのだが。
「集団を倒すと闇が晴れるのか。凝ってるなー」
「凝ってるねー」
『凝ってるのじゃー』
オウム返しをしてくれるタマモを撫でつつ、顔を覗き込む。返事の仕方的に気怠げなのかと思ったが、とてもご満悦に見えた。
「タマモ、この状態を楽しんでるようだな?」
『くふ。この特等席にいると、まるで自分が武芸の達人になったかのように錯覚するのじゃ。だから楽しいのじゃ~』
「そっかー」
タマモは武器を錬成できるのに、直接扱う技量がないもんな。それで向こうでは近接戦闘で使えるスキルは軒並み獲得できず、魔法系のスキルに偏った構成になったらしいし。
けど今なら、山のようにスキルオーブがあるんだし、好きにスキルを増やせる環境にある。だから克服できるんじゃないかと提案したことはあったんだが、どうにもタマモ自身に自信が無いとか、乗り気になれないとかの理由で拒まれたんだよな。
まあ、人間苦手意識はそうそう取れるものじゃないし、今はこの状況を楽しませてやるか。
「よーし、奥まで殲滅するぞー」
『殲滅なのじゃー!』
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