第九百四十二話
血を吸われるときの官能感とか、どんな気持ちだったのかは横に置くよ。
いや、置くのかよ! そこ大事なポイントなのでは? おいしく伝えられるところなのでは!?
でもね?
私、思うんです。
「はふはふはふはふはふ! はうううう! どきどきしますね、これ! されるのも悪くないと言いますか!」
「きもちわるっ!」
って、噛まれる直前に興奮しすぎて一言でばっさり切られたら、さすがにおいしくお伝えできる自信はなくなるってね!
「うそ。冗談。そんなに泣きそうな顔しないで? 別にこれが初めてでもないし」
「初めてじゃない……っ!」
「あなたがそこでショックを受ける意味がよくわからないんだけど。血を吸うわよ?」
「ああん!」
「……なぜに喜ぶのか」
調子狂うといやそうな顔で呟かれて血を吸われたのでね!
ちゅううううって、音を立ててさ? 半分くらい溶けたシェイクのボトル底にストローを差し込んで、めいっぱい吸うような勢いでさ! たった三秒でお終いなんだもん!
横に置くしかないでしょ!
「ごちそうさま」
「え!? 足りない!」
「それ言うの、私じゃなくて? 足りてるから言わないけど」
「足りないです! もっと吸ってくれていいのに!」
「だから、足りてるからいいです」
ちょっと引かれてる!
もっと素敵な場面を夢見てたのに!
これじゃアメリカンなギークボーイがハイテンションで憧れの存在に迫って引かれてるのと、大差ない状況なのでは!?
そんなばかな! こんな予定じゃなかったのに!
目を潤わせながらミコさんを見つめて、赤面しながら瞼を伏せて首への噛みつきを受け入れてさ!? 恍惚とした吐息からの、全身の震え! 甘い感覚と背徳感に羞恥を覚えて堪えるみたいなさ!? で、自分の血を吸う相手を見つめると、人ならざる存在の偉大さに畏怖と恐怖を覚えるんだけど、よくよく見ると自分の血に夢中になっててさ? で、私の血をこんなに欲しがってるんだみたいな倒錯感に打ち震えて、感極まって、そしてふたりは――……。
みたいな!?
みたいな!
そんな場面になるべきなのでは!?
でもって、吸い終えたミコさんに私は自然とお姉さまって呼んじゃうみたいな――……。
「ならないから。ごちそうさま」
「ああん!」
おでこをぺちって強めに叩かれました!
ばんなそかな!
こんなはずじゃなかったのに!
興奮しすぎたのがいけませんでしたか!?
それとも、なんでしょうか。
「吸血鬼なのに一口でもういいやってなるほど、私の血はまずいってことなのでしょうか!?」
「違うから。今回あなたの血を吸いすぎると、さじ加減が難しくなりそうだから控えただけ」
「ってことは次があるのでは!?」
「いまから前向き、なんで? いや、あるんだけど。眷属は私の血を飲みたがるようになることはあっても、あなたみたいに欲しがる子ははじめてだわ」
「なんと!」
「ちょっと引く」
「なんと……」
「まあいいわ。部屋を変えるわよ」
ミコさんが手を壁にかざして、左から右へスライドさせる。
それだけで部屋中が細かいキューブに分解されて、それらがすべて独立してくるりと回転していくの。
私の足下も、天井も、赤い絨毯すらもそう。
変化がないのは私とミコさんだけ。
そういえばミコさんは私の血をちょっと飲んだけど、私みたいに変化したりしない。
ミコさんの血は影響力があるけど、ミコさんにとって他人の血は支配下にあるから変化しないみたいな理屈なのかなあ。
それか、シンプルに取り込むことができるからとか?
わからないまま突っ立っている間に、キューブの回転が止まる。
内側から家具が飛び出てくるんだ。
そうして変化した部屋は、ミコさんの棺のある内装から一転。
「あなたには見覚えがあるはず」
実家の私のお部屋にそっくりだった。
いや、厳密には広さが違う。
キューブは回転しながら空間を広げるように遠ざかっていたみたい。
六畳一間くらいの私の部屋の家具がそのまま配置されているけれど、部屋自体は体育館ほど広くなっているので、だいぶ隙間が目立つ。
「いまの肉体年齢には馴染みが深いのではなくて?」
指摘されたとおりだ。間違いない。当然だ。自宅から中学に通っていたからね。
全寮制の学校に行き始めたのは高校からだもん。
こじらせていた私の自意識で買い集めたものすべて、ここにある。
モデルガンを振り回してがつんとぶつけてできた傷も、必死におねだりしてお手伝いもしてやっとの思いで買った模造剣も、鹿の頭像ことアンドレもそう。
お母さんの学生時代のお友達でいまは占い師として活躍しているお姉さん――……そう呼べって叩き込まれた――……からもらった水晶玉やタロットも、なにもかも。
中学卒業までの私を守り、束縛する証。
カナタが同棲すると決めて「手狭になるから」という理由で送り返されてしまった品々。戻そうとしなかった理由はちゃんとある。そんなことしたら高校デビューに失敗する予感があったからね! 渋々我慢したの! でもたまに実家に帰ると「ああ! しゅき!」ってなる。
付け歯もマントももちろんあるよ?
それだけじゃない。
アメコミで見たガントレットに憧れた私に、お父さんがアメリカのオタクの巨大なパーティーで買ってきてくれたレプリカも。児童文学としてだけじゃなく、ハリウッド映画で世界的に広まった魔法使いの少年の杖のレプリカも。
コウモリに扮して街を守る資産家おじさんのマスクのレプリカもある。
私の趣味の固まり。その一部ね?
蜘蛛男くんの糸を飛ばす装置とかもあるよ。
目立つ大きさのものだと映画寄りの小道具のレプリカが多いのは、お父さんの影響かなあ。
ファンタジーの太祖のような、かの有名な指輪のレプリカもある。さすがにコメディドラマで見かけた映画の小道具のひとつほどレアな一品じゃないけどね!
最近のものだと、あれかなあ。ブラックなジョークもこみこみのスパイ映画で主人公の青年がかけていたメガネとか? アークリアクターのレプリカはちょっと古めかな。
ちなみにうちのお父さんはダークナイト版ジョーカーの衣装をフルセットで揃えていて、ハロウィンにお強請りするとメイク込みで完コピしてくれるの。えらく色気ただよういけおじになるし、演技プランが仕上がりすぎていて怖かったりするので、一度しか見てないけどね……。
蟻男のマスクとか、ヘルズキッチンの悪魔のマスクとか、トウヤも買ってもらえそうな場面があったけどさ。あいつは欲しがらないんだ。大人になってから自分で買うからいいっていう、お父さんの誘いを的確に断るうまい言い方で辞退するの。全部、実はお母さんの仕込みなんだけどね。ちっちゃい頃のサイズに合わせて高いの買ったら、大人になっていらなくなったときに切ないだろうっていう、よくわからない理由でお母さんはお父さんサイズのものを買っている。
結局買うんだけど。買ってるんだけど!
私の場合、ちっちゃなものはお母さん譲りの趣味のものが多めかも?
古い木材を切り出して作った幸運の二十面体ダイスとか。動物の骨を削って作った百面体ダイスとか? あ、これはお母さん譲りっていうより、お母さんのお友達のお姉さんからもらったものになるか。
机の中に、たぶんたくさん入っている。
ぬいぐるみとか、オモチャもあるよ? 私の世代が幼稚園時代のときの、戦隊ヒーローの合体ロボも、変身ベルトもある。女の子が主人公の変身セットもあるよ。なんならパンツも――……いや、あれはさすがに捨てたのかな。トウヤにお下がりであげてた可能性も微かにありそう。
ロボの模型は机の上に飾られていた。変身セットはどっちも机の中かな。
ゲームで見るような宝箱が押し入れの中にあって、鍵を開ければ宝物があるよ。
押し入れの扉も見えるから、間違いなくこの部屋には私のすべてが置かれていた。本棚にちゃっかり黒の聖書が並んでるし!
「赤髪のあなたを模倣してもつまらない。あの頃の夢を形にしてみせて? 金色のあなたの力を用いて、私が対処してみせる。あなたはまず、かつての夢を自分のものにするの」
さあ、いつでもどうぞと手を広げられる。
血を吸われようと、力は衰えず。みなぎるような感覚はそのまま。
ためらうけど、でも壁に設置されたアンドレに手を伸ばした。
「おいで」
呼びかけると、びくびくと頭が上下に揺れるの。
瞬きをした。口を上げて吠える。壁にヒビが入った。打撃音、二回。
割れて、内から鹿の頭をした大男が出てくる。
黒い肉体は筋肉質な巨漢そのもの。興味津々な頃の妄想よろしく、いろいろとおっきいし性的。お父さんの本棚からこっそり、狂った戦士の漫画を読んで「こ、こいつはえっちだぜ!」とほんほんしてたかつての自分に、その場で破裂しそうなレベルで恥ずかしさがこみ上げてくるんですけどね!
すぐにその場で横に一回転のターンを決めたアンドレは紳士の象徴としてスーツを身に纏っていた。金の懐中時計、ぱりっとした白いシャツと黒いジャケットのアクセントに赤いネクタイ。いま思うと、色の取り合わせ、これはどうなんだと思わなくもないね! どうせならもうちょっと、ほら。チェックとかでもいいからさ? 柄にこだわってもよかったろうに!
鹿男なのに、足は蹄じゃなくてブーツ。
かつかつと音を立ててフローリングの上を歩いて、私の元へ。
当然のように跪くの。
「お嬢さま。今夜の要望は? 甘い夜ですか? 激しい夜ですか?」
ぶわっと耳まで赤面しながら、両手で顔を覆う。
言わせて!? これだけは主張させて!
あの頃、私! こじらせていたんです……!
「そ、そういうの、いいから。そ、そばにいて」
「抱擁のターンでしたか?」
「いい! 座ってていいから!」
「わたくしを最初に呼び出してくださったのに? あの頃、あなたは悶々とするたびに私を思い描いていらっしゃったのに? なんなら回数をお伝えしましょうか?」
「あんどえええええええええええ!」
やめて! やめてくだしい!
部屋に飾ってあるから、余すことなく私の私生活を見ていたろうけど!
それ以上はやめて!?
死んじゃう! 精神的に死んじゃうから!
「今日は! あの頃の妄想を形にして戦うの!」
「あの頃の妄想を思いだして悶々とするの間違いでは?」
「アンドレ!?」
あなた私にとってなにが恥かわかっていてやってない!?
「私は何度も見て参りましたから。ええ。今日も朝までがんばってもよろしいのですよ?」
「あんどれえええええええええええ!」
違うね! 百パーセント善意で言ってるね!?
しかもたぶん、それが最善策だと信じて疑ってない勢いだよね!?
「よそう! アンドレ、ちょっと黙ってて!?」
「そういうプレイがお好みですか。大人になりましたね」
「ふぐっ」
泣きそう。
ミコさんが口を半開きにして私をじっと見てるんだけど。
見ないで。
こんな私を見ないで……っ!
「ま、まだありますから! いけてるのが!」
最初に形にするなら、あなただと思ったのに!
おのれ、アンドレ! おのれ、かつての私! いつか命が宿るかもって信じていたなら、信じていたなりに見せちゃいけないものは隠さなきゃだめでしょ!
って、あほか! わかるわけないでしょ!? そこまでイメージしてなかったよ! むしろほんほんしてたよ!
おおおおおお!
だめだ! 考えれば考えるほど、かつての痛さを思いだして死にそう!
「こここ、こい! 私のクレイモア!」
願うだけで、壁に飾られた模造剣がソーのハンマーのように手元に飛んでくるんだ。
握ってみる。かつての私は、手にするたびにぷるぷる震えていたものです。
重たいんだ! レプリカなのに!
「お嬢さまは何度も試そうとしていましたよね。舐めていたこともありました。ええ、そう。まるで」
「あんどれえええええええええええ!?」
ふぁっきんがっでむほーりーしっと!
その場で反り返ってブリッジして、そのまま横に転がりまくる。
やめて! もうやめて!
おいアンドレ! 黙ってろって言ったのに!
それは言っちゃあならない秘密でしょうよ! わかるでしょ!?
私いまにも死にそうだよ! まだ訓練のくの字も始まってないのに! ぜんぶお前のフレンドリーファイアだよ!?
もしかしなくても、真っ先にこの鹿を倒すべきなのでは?
私はミコさん相手に訓練する前に、まず私の黒歴史をすべて目撃していたこの鹿を討伐するべきなのでは!?
「私のサイズはそれより大きいです」
「あんどれええええええええええええええええええ!」
違う! 違うよ!?
それきっかけじゃないから! だからお願い、ミコさん! どん引きした顔して私を見ないでくだしい!
違うの! ほんとだもん!
『もはや違うとしか抗弁できておらんのう』
責められないよ! 責められない! 電動ハブラシでひとりあそびするエミリーを私は笑えなかった! 大人になってもひとりが続いていたら、電動歯ブラシで止まっていたかどうかすら自信ないレベルで、よりこじらせていたに違いないよ!
でもそれはさ!? あんまり人に話すことじゃないでしょ!?
ほら。あるじゃん。なんかほら。セラピー的な? そういうときに話すか、あるいは絶対別れないか一夜限りの相手でかつジョークとして成立するときにこそ言う、鉄板ネタみたいな。
それくらいでしか使いどころないじゃん!?
セックステープを作るとレス解消にいいっていう映画がありまして! 撮影した動画がネットに拡散しちゃって、さあ大変! みたいな展開の話なんだけどさ?
拡散の方法がクラウドにアップされたからっていうの、地味に笑えるし。街の人全員が見ちゃってたのが拍車を掛けて笑えるけれどもさ!
あれはコメディ映画だからこそ「ああよかったな。ハッピーエンドだな」って落としどころがあるし、あってもらわなきゃ困るんだけど! コメディだし!
でも、違うじゃん!?
ミコさんに知られる時点で死ぬほど恥ずかしいじゃん!?
映画のキャラクターたちもはずか死ぬレベルのショックだったろうけど!
ふたりとひとりあそびはまた違う的な――……じゃなくて!
「待って。確認させて。アンドレ」
「脱ぎますか?」
じゃなくてね!?
そこまで奔放に育ってないからね!?
それに、そんな振りされると部屋でそれしかしてないみたいに思われるでしょ!?
ないから!
占いとかしてたし! ヒーローごっことかもしてたし! 中学生で!
あああああああ! それはそれで死ぬほど恥ずかしいけれども! ほっとけ! 部屋でくらいいいでしょ! なにしても!
でもなくてね!?
「下ネタっていうか、下に絡まない道具、あったっけ……?」
「すべてにおいてお嬢さまの妄想に絡めて、私はすべてを余すことなく性に繋げることが可能です」
「いやああああああああああああああああああ!」
クレイモアを手放してごろごろ転がりまくる私を見かねたのか、それともあきれ果てたのか、ミコさんがぽそっと言ったの。
「ぷちたちを連れてこなくて、ほんとよかったわ」
おっしゃるとおりで!
◆
一度体を手に入れたら、もう二度と戻る気はないのかな。
鹿が消えません。おのれ、鹿。許すまじ、鹿。
アンドレ無駄に体格いいのは、中学時代の私の好みが一時期マッチョに寄っていたからです。
車に乗って派手にかっ飛ばす映画シリーズで、外交保安部の捜査官として出てくる役者さんあたりのマッチョ感も好きなんだけどさ。なんていうの? ダンプカーが突っ込んできても、右ストレートで止めちゃうようなのも好き。アメコミなら、あれだね。緑色の肌の最強マッチョね。
で、それがアイアンなスーツで戦う社長のイケオジにスライドした時期もありまして。
アンドレの声は、あのイケオジの声にわりと近いです。吹き替えの声優さんでも喜んで!
ド直球の自己満足だよなあ。
実際に実体を手に入れることはないと思っていたし、だからこそいくらでも妄想をもあもあ! ましまし! に増やせた。
イマジナリーフレンドっていうほど繊細なものでもないかな。
それでいったら、小学校に入るときに買ってもらったぬいぐるみが一番近いけどね。
アンドレがこんなんだと、怖くて実体化させられないよ。すくなくともアンドレがいなくならないとやだなあ。
なんかこう――……アンドレがそばにいるだけで、えげつないことになりそうだし。
分けよう。分けたほうがいい。
ぬいぐるみたちが夢なら、アンドレはもう迷わず欲望の化身だ。
私が二十代後半とか三十代くらいになって、大人の欲望の歌が似合うようになってから歌えば題材として映える気がするけど、いまのままじゃ十代のあほな妄想、それもえっち限定の集合体みたいになっちゃう。
呼び出す前はさ。もっとこう、頼りになる特別な相棒みたいなイメージだったんだけどなあ。
一生雷友達でいようと決めたけど大人になったら品のないクマのぬいぐるみみたいなさ。あのテイストだよ。これじゃ。
襲いかかってこないあたりはマシだけどね。基本、見ているだけだったせいかなあとか思うと、それはそれで死にたくなるので考えたくないですよね……!
「あなたの部屋にお邪魔して品々の霊子をそっと持ち出したとき、もっとスムーズにいくと思ったんだけど。再現品でこれじゃあ、今日中は無理かしら」
「ああん!」
呆れられてるぅ!
ミコさんを心底困らせてるぅ!
あといつの間に私の部屋に? こっそり? ううん、お母さんが喜んで迎えいれそうだし、ミコさんならそれくらいわかりそうなものだから、正攻法で部屋に来たのでは!
部屋の品々は、私の部屋の実物の霊子を元に再現されたものたち。
それでアンドレが私の黒歴史、しかも主に下方向に特化した発言ばかりするんじゃあね!
そりゃあ困るよね! 呆れるよね!
私は死ぬほど恥ずかしいだけだけどね!
「違うんです! 違うんですってば! アンドレ絡みになるとデフォルメされるだけでして!」
「なにせこのわたくし、お嬢さまの欲望の化身ですから。ええ、そりゃあもう。すべての側面から欲望を露わにしますよ。今回はお嬢さまの欲望に限りますけど」
「ならしゃべらないでもらえますぅ!? アンドレえええええええええええ!」
「キレ芸は中学時代に比べて達者になりましたね……感動の極みっ!」
私は恥の極みだよっ!
うるうるしてるんじゃないよ! いきなりまともなこと言わないで!?
あと謎の保護者目線やめて! ほろっとしないよ! さっきまでの落差がひどすぎて、お、おうってなるだけだよ!?
そもそもあなたを呼び出すときの私のドヤ感よ! いまとなってはただただ恥ずかしいわ!
思い通りにならないからこそ、アンドレはアンドレとしてここにいる意味があるんだろうけどね! お願いだから、もう暴露は許して……!
実家に彼氏を連れてきて赤ちゃん時代の裸写真を見せられるよりもえげつない角度で心を抉るから! もうやめて……!
「冗談はこのくらいにいたしまして。お嬢さまの欲望を形に変えて戦闘すればよろしいので?」
「待って。心が追いつかないから突然のシリアスやめて。アンドレ、いままでのノリからして妙なことになりそうだからやめよう? お願い、やめて!」
「はっはっは、涙ながらに足下に抱きつかれる妄想をなされたのは中学一年の春のことでしたか?」
「あああああああああああああああ!」
絶叫しながら身悶える私と朗らかに笑うアンドレを見て、ミコさんが俯きがちに言うの。
「なんか……ごめんなさいね?」
肩がぶるぶる震えていたし、笑いをこらえているのが一目でわかる顔だし。
私にも言わせてくだしい!
なんかごめんなさい! こんなはずじゃなかったんです!
でも、こうなる運命だったような気もします!
だって……だって!
あの頃、私ひとりぼっちで、いろいろとこじらせていたんです……っ!
つづく!




