第二千九百九十八話
地下に向かう通路の明かりが途絶えた。
暗がりの先にうっすらと改札が見える。矢印を示す明かりが点灯している。
改札の先から、ひそひそとささやく声がいくつも聞こえる。けれど電車が走る音も、アナウンスも聞こえてこない。足音だって、私たちのものだけ。
金色を飛ばして照らしてみても、改札があるだけ。その先はずうっと通路が続いているようだ。
お父さんが足下の石ころを拾い上げて、思い切り改札の向こうに投げてみる。なにに邪魔されることなく、石ころは床に落ちた。音が反響する。それもまあ、予想どおりと言えば予想どおり。
「ホラーの定番なんだけどな。境界線があり、その向こうには、なにかがある」
「あっちは行ったことないわけ?」
「前に来たときはなかったんだよ。だから、先に進まないよう止めたわけ」
お父さんは不適切に笑う。
付き合う気がないマドカは私の腕を指でつついてきた。
「探査術、使えない? あの改札だけ」
「できるけど、仕掛けがあったら大事になるよ?」
「そっちのほうが話が早いでしょ」
乱暴だなあ。まあ、いいけどさ。
通路を塞ぐ改札たち。行きもあれば帰りもある。全部で八機。
片側の壁の中に駅員が待機するための部屋があり、窓が備えつけてある。ちなみに窓は閉じられていたし、部屋の中に人の気配はない。真っ暗闇だ。逆側の壁と改札の間には若干のスペースがあり、胸に届かないくらいの高さのある鉄柵が通路を塞いでいた。
ひとまず改札の数だけ金色を出したところで、マドカが二の腕を掴んでくる。
「いい? ぜんぶを理解しようとしなくていいんだよ? 時間がかかるんだから。情報量だって多すぎて、どれを処理すればいいかわからなくなっちゃうんだからね」
「わ、わかってるよ」
干渉するたびに、圧倒されてきたんだから。
ぜんぶを理解しようとしたら、どれだけ時間がかかるのかわからない。
だと、する、と?
「じゃあ、なにをどうしたらいいの?」
私の問いにマドカが口をあんぐりと開けた。お父さんの笑顔が固まる。ついてきたキラリたちも一様に「こいつまじかよ」と言わんばかりに表情が歪んでいったり、あっけにとられたように固まったりしている。
カナタもお姉ちゃんもついてきてくれているんだけど、ふたりして私から目を逸らした。なぜに。
「春灯の頭にはゼロか百しかないの!? あるでしょ! 案配ってものが! なんかこう、いま大事そうなことだよ!」
「それってなに!? 具体的に言ってくれないとわからないよ!」
「たとえば改札なんだから、だれを通すのかとか、切符なのかICカードなのかスマホでいけるのかとか、そういうことだよ!」
「そんなの見たらわかるでしょー!?」
「切符売り場もなにもないからわからないって言ってんの!」
お!? なんだ!? 私の観察力が低いってか!?
低いよ! いちいちなにがあるのか見てないよ! いま言われて気づいたくらいだよ!?
改めて見渡してみた。
ここまで歩いてくる間に切符売り場なんてなかった。
だけど見るかぎり、改札は東京の地下鉄でよく見かける型となにも変わらないようだ。だったら、切符やICカードが使えるはず。で、それって、だいじょうぶ?
「ほんとだ! なんか通ったら危ないところに連れていかれそうな改札なのに、切符売り場がない!」
「そう、なん、だけど、なんかこう、絶対的に足りてない!」
「なんか通ったら危ないところに連れていかれそうな改札なら、気にするのは切符売り場の有無じゃないだろ」
キラリがぼそっとつぶやいた。だけど、私とマドカしかしゃべってないから、あえての低音なのだろうツッコミボイスがよく響く。
すこし固まったのちに、考えてみた。
「いや、切符売り場については考えたほうがよくない?」
「だから、もっとあるだろって」
「たとえば?」
「なんか通ったら危ないところに連れていかれそうな改札なら、危ないのは改札なのか、それとも通ることなのかとかだよ」
「「「 おおおお 」」」
私だけじゃなかった。キラリの見立てにうなり声をあげたのは。
たしかにキラリの言うとおりだ。なるほど。さすが賢い!
「で、それってどうやって調べればいいの?」
「あんたのさじ加減だろ」
「ええええ!」
「なんでいやそうな声だすんだよ」
「どうやって調べればいいのかわかんないんだもん!」
もんて。
いや、でもさ? それって、どうすればわかるの?
「じゃあ聞いてみればいんじゃね?」
「答えてくれなかったら?」
不安から、その場で足踏みをする私の頬をキラリの尻尾ビンタが襲う。
容赦のない二往復が、ただただこそばゆい。
「こどもか!」
とうとう怒られてしまった。
「でもさあ、キラリぃ」
「いいからやんなさい。あんたのさじ加減なんだ。あんたなりにやれるかぎりやってもらわなきゃ、あたしらじゃ手がだせないの」
孤立無援!
助けを求めてマドカを見たら、顔を背けられてしまった。つれないなあ。
「マドカぁ」
「私、たしかにコピーできるけど、イメージできないと無理だから」
さっきまで無茶振りしてたくせに!
すっかり尻尾を内股に挟んじゃってさ。おうおう。びびっちゃって! この!
ちなみに私の九尾はマドカよりも細くしゅっと窄んで、両足の間にある空間をぴっちり埋めている。
予期するものがある。あの改札には近づかないほうがいいし、ましてや通らないほうがいいと。見れば見るほど気圧されるものがある。
これは、あれだ。お父さんのビデオライブラリのなかに、妙に触れちゃいけない、近づいちゃいけない、ましてや再生しちゃいけないやつがあるって感じたことがある。あのときよりも明確。ちなみに怖いビデオばかりだ。DVDやBDにもあるけど、VHSのほうがより強く感じる。経年変化のぶんかな?
お母さんやお父さんの隠し本棚のちょっとえっちな漫画とかとはわけがちがう。
だけど、実に凡庸な感覚でさえある。
ジョーズ、ディープ・ブルー、海底47mを見て「海こええ!」「サメこええ!」「お風呂に入るのさえこええ!」となるくらい、怖がる。敏感になる。
歩行中、とりわけ夜には足音が後ろから聞こえたら身構えてしまうようなもの。
怖がって恐れることの当たり前さときたら。
野火やプライベート・ライアン、硫黄島からの手紙、兵隊やくざとかを見て「戦争むり」「戦うのこわ」「平和が一番」ってなるくらい平凡なものだ。
ゾンビ映画でゾンビが出る外を怖がるように。パンデミック映画で外出を極端に嫌がるように。
なにより、ホラー映画でこっわい予兆に絶対に近づきたくなくなるように。
改めて思う。
ああいう映画って、危険に近づくような人か状況があるから事態が動くんだって。
近づかないもん。いやだから。怖いし。
「無理です」でおしまいだ。
でもね?
残念でした!
私たちは先に行かなければならない。
「全部はわからない」
これまでの様々な霊子現象への干渉調査で実感してきた。
金色で理解する回路を作ってみせたって、相手の情報量のすべてを読み取れやしないのだ。
いいや。そもそも、すべてを読み取る力など、だれにもありはしないのだ。
膨大な情報を処理しきることができない。
だれも自分のすべてを把握しきれない。
なぜって、そもそも、その必要性がない。もっといえば、そんなことより優先されることが太古の昔からある。目先の問題の対応だ。解決できない、答えのないことへの対処だ。
そんな無茶な情報量を処理する能力よりも、よっぽど必要なことがごまんとあるのだ。
接する情報量の増えるばかりの社会においてさえ、それは変わらない。
お父さんに昔のインターネットの情報処理の遅さを教えてもらったことがある。いろんな人が写真やイラストをアップしてるでしょ? 動画はいったん、置いといて。
そういう写真やイラストを一枚表示するのに、なんと、数十分かかっていたそうだ。一時間以上なんていうことも。画像のデータサイズはいまよりもっとずっと少なかったろうに。通信速度が遅くて、すんごいゆっくり、上から順に表示されるのが目で追えたそう。ゆっくり、徐々に。
膨大な情報量を前にしたら、まさにそんな感じ。
あらゆることを処理するのだから、すべてにおいて、そこまで遅いってことじゃない。
なんだけどね。
なにせ桁が違う。
いつも処理する情報量を仮に、ぷちたちと遊ぶときの水鉄砲、もっともおそまつなやつの水量と例えるのなら? 金色で人ひとりを相手にしたときの情報量は、さながら梅雨時の日本列島の上空に漂う水分子の数と動き、これまでの動き、その歴史をすべて把握するようなもの。
そんな必要性、ないじゃん。私たちの情報処理能力、そこまで求めるくらいなら、もっと他の能力をさまざまに伸ばしたほうがいいじゃん。ね?
だけど、そのぶん必然的に学習の速度には限界がある。興味の向かう先にないのなら、まるで理解できないか手間取るし、そもそも興味の持ちようを失いつづける。おまけに日常の難題から政治や経済の実情への理解に至ると、もはや手に負えない。
人ひとりのことさえ。
手に負えない。
わからない。
なのに、それでも生きていかなくてはならない。
行かなくてはならない。
怖いのに。
効率的でも合理的でもなんでもないのに。
答えも解決もないのに。
恐ろしくても生きる。
そんなの、だれにでも、いつでも、当たり前にできることじゃあない。
インド映画の「きっとう、うまくいく」では、あーるいーずうぇーると唱えた。私たちは怖がりだから。だいじょうぶだよと唱える。だいじょうぶじゃないときほど、怖がるほどに身動きが取れなくなってしまう。怖がらないといけないことは、怖がらないといけない。それさえ、満足にできなくなってしまう。だから唱える。
だけど現実には無理だ。
いいや。より正確には、だれにだって、ぎりぎりなんとかなっているときがあって、無理なときもたくさんあるのだと。
「なに長考してるんだ。考え事してる場合か」
「おぅっ」
キラリにどつかれちゃった。
悩んでいてもしょうがないか。
悩むよりも、ちゃんと考えないとね。
「しょうがない。やるだけやってみるから、備えておいてよ?」
みんなに伝えて、前に出る。
膨大な情報が行き交っている。私もみんなも、ひとりひとりがわけのわからない情報量を抱えている。
みんなから放たれる霊子も、空中に漂う霊子もそう。
圧倒的な情報量が当たり前に存在している。
なのに私たちはそれを正しく理解できないし、受け止められない。
そもそも飽き性だし。
めんどくさいし。
いそがしいし?
宿題を嫌がるこどもの言い分くらいのトーンでしかないんだけどね。
わくわくは維持できない。
漫画やアニメは励ます。楽しむことが一番だって。だけど楽しむだけで一番になれるなら、とっくにみんながなにかの一番になっている。そんな風にはならないし、なってないし、楽しんでばかりいられない。
わくわくを失うほうがよっぽど早くて楽ちんだ。
飽きたほうが。
やめたほうが。
がんばらないほうが。
全力にならないほうが。
深掘りしないほうが。
ずっと楽ちんだ。
そんな生き方しまくったうえで「世の中は実力主義じゃね」なんてうそぶくんだ。
努力したほうがよくって、こつこつでも続けたほうがマシで、才能があったら最短で最高の効率と合理性で進められてて、どちらにせよ実力をこしらえた者勝ち。
むしろ有象無象が邪魔。リソースなんて割くべきじゃない。あほみたい。ばかじゃね。いらね。
こじらせにはいろんなものがあるけど、これもこじらせの一種。
ちゃんとかかって、さくっと解脱するのが大事。
だって現実は、そんな単純じゃない。
あらゆる実力なんてものは、膨大なものに依存して、ようやく支えられてんの。
要素は膨大。情報量も。その相互性も。影響の度合いも。
あらゆる要素が多くのものに依存している。それに依存の相互性もある。
飽きてられるのも依存あればだし?
飽きてることで生じる依存や相互性もやまほどあるし。
たいへんなのだ、実際のとこ。
実力がものをいう?
ちがうよね。
ものを言うものの要素の中に実力”も”あるだけだ。
それだけじゃ足りない、足りない。
これぞ至上、至高? 足りない、足りない。
残念ながら世界は複雑で、読み切れないし読み取れない。
じゃあおしまいっていうほどじゃない。少なくとも、私たちは。
生きてて、考えてて、探れてる。
幸運にも。だけど、不幸にもつながる。
八尾を注がれたときみたいに。老いちゃって入院していたときみたいに。
世の中にはもっと身動きが取れなくなったり、負荷や苦痛の具体的かつ膨大な状態で生きるどころでさえない人がたくさんいる。
それでも生きて、考えて、探るのなんて、もう地獄のようだ。
飽きやすいのが悪いみたいに思いがちだけど、その飽きやすさだって、いろんな理由や状態で成り立ってる。
駄目って言えば片づくことじゃない。
指図で世の中まわらない。
だからコミュニケーション。
だからけんか。
だから無視。
だから一方的。
膨大な情報、現実の複雑さ、その面倒さ、厄介さを前にどうするかっていう、お互いの問いかけあいになる。
「ちょいなあ!」
八台の改札に金色を撃ちこんだ。
すべての改札が七色に煌めき始める。それだけじゃない。ひとりでに動いて、真ん中の二台に寄っていく。あっという間に隙間なんてなくなり、ぴったりとくっつき合った。そのうえ、溶け合い、七色の固まりになっていく。
「ちょ! なにしてんの!」
「意味ありげに改札があって、ものを言わないから怖いんだよ。ここは隔離世なんだから、いっそ邪か、なにかそれっぽいものにしてみたらいいんじゃないかなって思って」
「はあ!?」
「プリキュアの敵がやるじゃん。ものを怪物にする、例のあれ! あれっぽいことをしてみたんだ。これで話すにせよ、聞くにせよ、荒ぶるなら納めるにせよ、相手の出方が見えるってものでしょー!」
我ながら複雑でなにがなんだかわからない状況を、選択肢が制限される状況にする名案なのでは?
「ものでしょー、じゃないんだよ!」
「私、探ってって言ったよね!?」
キラリとマドカに詰め寄られたこと以上に、ふたりのツッコミが痛かった。
そ、そういえば、そんなこと言ってましたっけ。
「くふ! 忘れちった!」
「「 春灯ぃ! 」」
「むりむりむり! いまさら怒られましても!」
いまにもつかみかかってきそうなふたりに両手を伸ばす。肩を怒らせて、胸いっぱいに息を吸い込んだふたりの身体が大きくなって見えた、はずだった。すぐにしぼんでしまった。はああ、と。気の抜けた息を出して、ふたりの目が私から、私の後ろにずれる。
誘われるように振り返った。
七色にきらめいていた固まりから、光が徐々に失われていく。
八台が合体したわりに、その固まりは非常にスリムだった。参考例がありながら、実際には再現しきれず、巨体にならない。
当然といえば当然だ。私は別に、プリキュアを相手にするつもりもなければ、大暴れさせるつもりもないのだから。
ただ、八台がひとつになったのは予想外だった。
さらに予想を外れてくる。
固まりは人型をしていた。頭は四角い箱形。電気ケーブルを束ねた筋肉繊維がむき出しの肉体。身体の中央に矢印を示す電光パネルがある。
彼はひざまずいていた。裸で。右の握りこぶしを地面につけて。
「ダダンダンダダン!」
「ちょっと、お父さん」
恥ずかしいからやめてと小声でつぶやきながらも、悔しいけど同じテーマミュージックを連想していた。
彼はまさにいま、降り立ったのだ。未来からじゃないけど。元は改札機械なんだけど。
なぜにターミネーター風の登場を?
通じてるの私とお父さん、お姉ちゃんくらいで、あとは大概、きょとーんとしてるんだけど。
反応の薄さにお父さんが思わず顔を歪めた。
「くそ! だから、夜の映画番組は削っちゃいけないって、あれほど言ったんだ!」
お父さんがどんなに言ってもテレビ局の番組編成を変えるだけの力にはならないけどね。
足りないもの。
まあ家族で映画を見るのもいいものだけどさ。
そういう話じゃあないんだよ! いまは!
「は、春灯、なんとかしろよ!」
キラリ、匙を投げるの早すぎじゃない?
「全裸なんだけど、だいじょうぶなの!?」
マドカは心配の方向性がちょっとずれているかも。
ほかにも大勢いるんだけど、改札が裸のマッチョマンになるなんてことに慣れていないので対応に戸惑っていた。
私だって、自分の術が裸のマッチョマンにするとは予想してなかった。
けど、改札を裸のマッチョマンにしたからには、その責任は取らなければなるまい!
「ねえ、教えて? あなたの名前、ここでなにをしていたか。これからどうしたいのか」
むき出しになったケーブル類から、なぜか稲光がびかびかと放たれる。
マッチョマンはゆっくりと顔をあげて、私をにらみつけた。たぶん。顔がつるつるの箱形だから、わからないけど。
「ダダンダンダダン!」
お父さん、ちょっと静かにしてて!
身構える私たちの前で、彼はゆっくりと立ち上がった。
あんまりたくましい大胸筋と嘘みたいな腰のくびれ、そしてシックスパック。それらがすべて、ケーブルや鋼の繊維で構成されている。幸か不幸か、お股はつるんつるんで、あえていえばデッサン人形みたいだった。
よかった。造形モチーフが昔の、たとえば古代ギリシア時代の彫像だったら? おちんちんがついていたに違いない! ダビデ像やプリアポスの彫像みたいに! ちなみにペニスの計上やサイズにもちゃんと時代柄の事情とか、宗教上のあれこれがあるらしいね? 具体的に述べたらたぶん、それなりの文量になるのでは? それだけで本になるのでは? 深いね!
「ダダンダンダダン! ダダンダンダダン!」
「「 お父さん! 」」
お姉ちゃんとハモっちゃった。
めちゃくちゃ興奮しながら歌うお父さんときたら、さすがに羽目を外しすぎている。
だけど、それも納得できてしまえるくらい、彼はゆっくりと立ち上がり、己の身体を見下ろした。たぶん。顔が箱だから、わからないけど。
それがあんまり不便だったからか、彼が顔を撫でた。つるつるの改札の外装らしき四角い頭、その正面が電光パネルに変化する。
最初に上を示す矢印が表示された。しかし、すぐに光が消える。
思わず、みんなが身構えた。
なんだ。なにを見せてくるのだろうか。
沈黙。
お父さんめ。気まずい空気を破るために、いまこそユーモアを発揮するべきではないか。さすがに大勢の学生たちがいるなかで娘たちに怒られたくないのか、黙り込んでしまった。
あまりにも厳ついボディのマッチョマンがゆっくりと両手を下ろす。
不意に、顔のパネルが点灯した。いや、点滅した。
『ダ』
『ダ』
『ン』
『ダ』
『ン』
『ダ』
『ダ』
『ン』
それきり、明かりを消したまま動きを止める。
さらなる気まずい沈黙のなかで、キラリがぼそっとつぶやいた。
「おい。こいつ、もしかして、おばかさんなんじゃないか?」
そのつぶやきの後、なぜだか一斉に視線が私の背中に集まるのを感じた。
みなまで言うな。言うな、みなまで。
術者に似るってか。化かして出たものは。
私がおばかさんってか?
不本意! でも同意!
つづく!
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