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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第九十九章 おはように撃たれて眠れ!
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第千九百十二話

 



 夜中の学生寮、売店に足を運ぶ。

 男子連中で集まってゲームで遊んでいたら、お菓子が尽きたのだ。

 部屋中スナックの匂いで充満している。掃除をしたら、掃除機がさぞやいい音を聞かせてくれるにちがいない。それでもお菓子はいる。だべってだらだらしょうもない話をしながら、ただ遊ぶ時間がくれる楽しさといったら!

 八葉カゲロウは賑やかなのが好きだ。

 同じようなのが集まっている。ただ、あんまり長引かせると寮母さんに叱られるので、ほどほどに。そのほどほどがいつもむずかしいのだが。


「さてさて、なにがありますかね」


 チョコとか飴とかも仕入れたいところだ。

 会費を徴収して、そこから出すから全員の懐がちょっぴりさみしくなる程度。

 売店になければ寮の外に行ってコンビニまで行かなきゃいけない。それは正直めんどい。

 顔を出すと、先客がふたりいた。


「なあ、無理せず僕に任せてくれよ」

「いい。あたしが行く」


 シロと仲間がふたりで揉めていた。


「おう、どした?」

「カゲ。尾張先輩から千葉に行ってほしいって連絡が入ったんだけど」


 彼女がと呟くシロに、仲間は答えない。

 仲間トモカ。うちの学年じゃ指折りの侍候補生だ。けれど、御霊の力か、彼女自身の力なのか、コミックヒーロー顔負けの走力を手に入れてからというもの、走り通している。

 おかげで心配になるくらい痩せはじめていた。世界大会クラスでマラソン選手がゴールした直後みたいなガリガリぶりだ。

 筋肉も体脂肪も落ちすぎている。

 BMIは22となるのが標準体型であり、最も病気になりにくい状態だとされているという。肥満のリスクは騒がれているが、低体重は低体重で、栄養が足りておらず危ういことを忘れてはいけない。太りすぎも、痩せすぎもよろしくない。

 しかし最近の仲間ときたら、日に日に痩せ細っていく。

 男子に比べて筋肉がつきにくい女子の中で、ボディメイクがすごいと評判だった彼女がいまでは見る影もない。いまならあばらが浮いているんじゃないか?

 仲間と付きあっているシロは、間近で見守り続けているからか、俺たち以上に心配している。俺たちもなるべく気にしているのだが、それでも仲間は走ることをやめない。だれかを助けに駆け出していく。なにが彼女をそこまで駆り立てるのかはわからないが、いずれにせよ、ことばじゃもはや彼女は止まらないし、止まれないのかもしれない。

 けど、そんな事情を知らないとは思えないシオリがふたりに声を掛けたのも解せない。

 加えて言うならば。


「もう夜も遅いだろ。明日じゃだめなのか?」

「一年生が春灯んちにきたおっさんのアジトに向かってるの」


 仲間の声にも、肌にもハリがない。


「お前、ちゃんと飯くえてんのか?」

「いつもどおり。ユリア先輩ほど食べられないけどね。これで満足?」


 おまけにかなりピリピリしている。

 痩せ型全盛期な時代にしても、ほんといえばほどほどがいい。

 本来の仲間はそういうヤツだ。けど、いまはあまりにも消費エネルギーが多すぎて、身体が追いついていない。そもそも追いつけるような構造してないまであるんじゃないか?

 マモリちゃんたちを呼んで、養護教諭か寮の健康絡みのスタッフさんとこにでも連行できやしないか。男からは尋ねられないが、いまの身体の酷使ぶりからすると月経まで影響を受けていそうだし、それはやっぱり健康からはほど遠い。そんな状況じゃつらすぎるだろうに。


「あー。それって、お前らふたりじゃなきゃだめなのか?」

「知らない」

「そ、相談してみる」


 いいよいいよとシロを止めて、スマホを出した。

 直ちにシオリと通話して確認を取る。いったん売店の外に出てから、言わずにはいられないことばの代わりに尋ねる。


「仲間がやべえ状態で行かせるからには策でもあるのか?」

『コユキが装備を用意するって言っていたから。それを使えば、仲間トモカちゃんの負担が減るはずだって』

「つってもなあ。いまにも倒れそうだぞ」

『そこまで?』

「おう。俺の力つかってさ、一直線に空とんで行くってわけにはいかないか?」

『彼女が消耗しているんなら、コユキの装備があっても負担は変わらないんじゃない?』


 もどかしさを感じるが、シオリに当たる必要などないのだ。

 落ち着いて、俺の部屋で遊んでいる連中の顔と名前を思い浮かべながら笑う。


「だったら、久々にマシンの出動ってのはどうよ」

『大騒ぎしてほしいわけじゃないんだけどなあ。スマホで撮影されたり、ニュースになるくらいの騒動は望んでないよ?』

「けど仲間の負担は減らせるし、千葉でやろうとしてるなにかも人手があったらできることが増えるだろ?」

『まあ、ねえ』

「任せてみろって。な?」

『それなら三年生も出したほうがいいか悩むね』

「あああ、影渡りにそこまで大勢入れられるか試したことねえな」

『じゃ、カゲの手配に任せる。今回は偵察だけ。解決までは望んでない。ハルちゃんちのポストに勝手に投函したおじさんを懲らしめる、までしなくていい』

「じゃどこまで望むんだ?」

『理華ちゃん曰く、おじさんは外出がむずかしいこどもたちを集めて、ひどいことをしている可能性があるというんだ。だから隔離世絡みで異変が起きていないかと、事実確認かな』

「ゆすりのネタ探しみたいだな」

『言い得て妙かも。対象のおじさんの邪がいたら、いろいろおしゃべりしてくれる気もしてるけど。それは一年生にはまだ荷が重い』

「俺らでもきついかも?」

『わからない。ただ、足の早いふたりなら偵察して、危なくなったら逃げられるでしょ?』

「なるほど」


 だいたいわかった。

 偵察がメインだ。事件性があるかもしれないから、その確認もする。

 仲間たちで素早くこっそり。

 でも俺たちが行けるのなら?

 隔離世から、こっそりと。噂のおっさんに気づかれることもなく忍び込める。身体の置き場が必要になるが。そもそも俺が行くなら、影渡りで済む。

 邪まで確認できたらいい。おっさんの欲望がなんなのかわかれば、青澄に絡むおっさんの本意もある程度までは掴めるかもしれない。

 ただ、あくまでうまくいったらの話だ。なんにもわからない可能性も高い。

 それなのに仲間は走ろうとしている。青澄のためか。ゼロではないだろうが、それだけか?

 いまはとにかく、ひとりで走らせてはいけないし、ふたりでも足りないのだ。

 なら?

 みんなで行けばいいだろう。


「なるほどねえ」


 そうそう。

 だいたいひとりでなんでもかんでも背負われちゃあ困るんだ。

 俺らにだって、それぞれにやってみたいことや、譲れないことがあるってもんだ。

 そうだろ?

 一枚と言わず、何枚でも噛ませろよ。なあ?


『なんか思いついた声してない?』

「してるー。んじゃ、あとは引き継ぐ。つかシオリは来ねえの? 寮にいるんだろ?」

『ボクにはボクで、いろいろ仕事があるんだよ』

「それもそっか」


 ゲーム会社を作ったり、いろんなところから情報収集を頼まれたり。

 そもそも三年生だけに受験もあるはずで。そういやシオリは卒業したらどうするんだ?

 うちの大学部どころか国内の大学に限る必要性さえ、シオリならないだろうが。

 いや。それは改めて落ち着いたときに聞いてみたい話だ。いまじゃない。


「わかった。急いで準備するから、仲間たちは引き取る。コユキ先輩は?」

『仲間トモカちゃんの部屋で待ってるはず。目的地はすぐにメッセージで送る。向かう前に現地の理華ちゃんに連絡してあげて』

「了解」


 通話を切ってから、すぐに別のヤツに通話を。

 仲間にそっくりなヤツがいるんだよ。なんでも抱え込んで、自分でやればいいや、やるしかないんだってすぐに塞いでしまうヤツが。

 愉快なことを言いだしてくれるところがいいし?

 なんなら、うまくできなかろうがなんだろうが、居てくれりゃあいいんだ。

 お互いそうやって支えあってんだろうってのに、そいつを忘れがちなヤツがいるからな。

 ここはひとつ、巻き込めるのなら巻き込んで、のほほんとしていてもらわなきゃあ。


「お。よっしゃ、起きてたか? 青澄」

『んんん。びみょうにねてた……』


 完全に寝起きの声だった。

 正直ごめん。それでもあえて、わがままを伝えさせてくれよ。


『なあに……んん? あ、カゲくん?』


 いま気づいたんか。ガチ寝起きじゃん。

 まだ日付は変わってないんだが。やっぱぷちたちとの生活は大変なのかもしれない。

 それでも、だ。


「青澄さ。お願いがあるんだけど」

『ええええ……なにい?』

「デートしねえ?」

『――……ええ? ばつげーむかなにか?』

「真面目にさ。俺ら二年の救援部隊で一年の支援に向かうとこでね。みんなで夜に空を飛んで、わあぎゃあ騒ぐんだ」

『おそらとぶの?』

「おう。飛ぶぞ?」

『んん、待って――……』


 すこしマイクから離れて伸びをする声が聞こえる。


『ぷちたちもカナタもいるけど』

「ぶっちゃけ青澄だけでいいかな。青澄が寝てたんなら、ぷちたちも先輩ももう寝てんだろ?」

『まあ。でも、救援って、えと』


 寝起きでまだまだ頭が働かないみたいだ。


『あの』

「ああ、いいのいいの。なんかしてくれってんじゃなくて。一緒に行かねえ? って話なんだよ。最近ご無沙汰だろ? 俺らはさみしいぞ? そろそろ」

『――……うん』


 声に元気がこもってきた。

 そうこなくちゃ。


『あれ、でも一年の救援って、危ないんじゃない?』

「だいじょぶだいじょぶ。そうなら総出で出てるって。合流したら詳しく話すよ」


 青澄が気に病まないように編集はするかもしれないし、実際に事実と遠くないが。

 要するに彼女に接触を試みたおっさんが実はクロでしたって話だろ?


「服はTシャツとスウェットくらい、刀なしの、いろいろな装備もなしでいいからさ。着替えて待っててくんねえ?」

『それじゃほんとに遊びに行くだけじゃん』

「気楽でいいって伝わるだろ?」

『備えはしておくよ。じゃあ待ってる』


 徐々に声が起きてきた。通話を切る頃にはすっかりいつもの青澄だ。

 けど、足りないんだろ。ほんとは。

 青澄んちに行った連中から聞く限りじゃ、いまだにたくさんの悩みを抱えてパンクしているみたいだしなあ。

 ほっとけないだろ。

 俺たちそこまでドライじゃない。そうでなかったとしても、どんな形であろうと縁がある限りほっとかないのが人情ってもんだろ。なあ?

 それに一年に任せてばっかってのも性に合わない。

 狙いのおっさんがクロってんなら、ますますな。

 ところで、ここまでお膳立てして気づいたんだが。

 俺の力って、マシンロボを出せる仲間たちと組んだら、移動に役立ちすぎじゃねえ?


 ◆


 スマホに連絡がきて、家の前に出たらカゲくんが私の影から飛び出てきた。上半身だけ。

 青澄、こっちと囁いて手を差し伸べてくる。迷わず取って、影の中へと引っ張ってもらった。

 ひさしぶりにみんなと会える。なのにゆるい格好はなしじゃない? って思ったけれど、お風呂も済ませて寝ていたのに、再び外出からのまた睡眠が待ち構えているのなら?

 Tシャツとジャージ最強でしょお!

 でも、そのまま見せられないので髪はざっと梳かして、服は化かした。

 狐は化けるものというノリで。

 言ってもジャージをぴっちりタイトめのデニムに変えただけだけどね。夏だし。

 装備はぜんぶ持ってきた。

 カゲくんの影渡り。それは彼が任意で影の向こう側に行けるというもの。

 あらゆるフィクションでよくみるし、それだけ理想的な力なのかなあとも思う。ドクターストレンジのミラーディメンションだっけ? あれほどのインパクトはないにしても、やっぱりすっごく便利だ。

 上下の感覚が狂いそうになって、一瞬めまいがしたけれどすぐに慣れた。

 そばにカゲくんがいて、彼の後ろ、家の前の通りにどでかいマシンロボが立っていた。二足歩行型。顔を出すのは二年生ばかり。


「春灯ー!」

「こっちこっち、早く中においでよ!」


 つま先の装甲が左右に開いていて、キラリとノノカが元気いっぱいに手を振っている。

 未来ちゃんや麗ちゃんの姿も見えた。


「そんなにたくさん集める予定じゃなかったんだけど、馴染みの連中みんな来ちまってさ」

「「「 はやく乗ってー! 」」」


 キラリたちの後ろから、マシンロボの至るところが開いて、みんなが顔を出して手を振ってくる。興奮せずにはいられなくて、尻尾がぶわっと膨らんだ。なんでか目に涙が浮かんできた。

 じんわりきちゃった。

 ああ。これこれ。

 こういうのだ。私がいた場所は。

 いつの頃からか、すっかりご無沙汰だった。

 昂揚が助けてくれたからか、ぷちたちを布団ごと、大きめな金魚マシンに入れて、しっかり尻尾に入れることができた。やっぱり家に置いて、放ってはおけないからなあ。

 異変が起きたらすぐにわかるように、尻尾コプターのリングに金魚マシンと連動するヒモをつけてある。なにかがあったら引っ張られるけど、願わくばなにごともなく済みますように。


「行こうぜ」

「うん!」


 起きたらカナタが拗ねそうなくらい、元気いっぱいに返事をしちゃった。

 申し訳ないけど、でも行かずにはいられない。

 居場所に再び出会えた気分なんだ。これを手放したら、ますます私は悩んでしまう。

 足からエレベーターに乗って、胸部へ。

 初期のマシンロボとおんなじようなデザインだ。

 幼稚園や小学生の頃に描くような、輪郭はテレビで見るもの、内装は骨格や強度なんかは一切無視の部屋まみれのタイプが近いかな。さすがにそれよりはずっと狭いけどね。至るところに人がいる。冗談抜きで二年生が勢揃いじゃないかってくらいに。エレベーターが搭載されてる時点で「現世じゃ絶対、作っても自壊するだろうし、動けない」。

 でも、それでいい。

 あちこちに巨大な液晶パネルが設置されている胸部フロアにはステージがある。

 そこで横になってパジャマ姿のマドカが寝ていた。キラリと未来ちゃんは元気いっぱいだけど、ふたりとも私と大差ない格好だ。他のみんなもそう。

 おそらくは頭部にあるであろう、司令室兼操縦室にいるレオくんたちにしたって一緒。


『二年生、全員集合を確認しました!』

『よし、それでは全速前進!』

『『 全速前進! 』』


 モニターに移る景色が上下する。

 内部は縦揺れ一切なし。ツッコミどころしかない。

 いまの私なら思いつく。

 狙われたらすぐに潰されてしまいそうな頭部に操縦と司令を集めちゃうの、弱点もろだしやんけ! とか。このステージで歌うだけって、なにがどうなるの? とか。

 でもね?

 知ったこっちゃねえ!

 そういうんじゃないんですよ!

 考えるんならさ? じゃあ、どうやって楽しんでやろうか。どうやってもっとしっかりしようか。そういう方向性。そういう遊びが許される力であり、場所なんだ。

 忘れちゃったらもったいない!

 久しぶりの居場所に戻れたからこそ、尋ねたくなる。


「それで、いまから向かう先になにがあるの?」


 遅れてエレベーターから出てきたカゲくんが隣に並んで、話してくれた。

 うちのポストに投函したおじさんについて調べたら、理華ちゃんが別途相談を受けていた問題と重なる可能性があると気づいた。それで直接、千葉に向かって調べようとしているけど、現地で妙な幽霊たちがやまほど出ているという。それも現世で。

 千葉にはおじさんの活動拠点がある。幽霊と因果関係があるとみて間違いないだろう。

 なので救援と支援に向かっているのだという。

 責任を感じる私に「余罪が他にもやまほどあるっぽい。立沢はそれに気づいたんだろ」とカゲくんがフォローしてくれる。理華ちゃんたちは無事だし、連絡も繋いでいて確認が取れているからだいじょうぶだって。


「なんかすごいね! こういうこと、ほんとにしているんだね?」

「まあ、わりとたまにあるよな」

「こうして実感する日が来るなんて!」


 頬を真っ赤にするくらい興奮した未来ちゃんのことばに、引っ張ってもらう。

 けれど彼女の見ている光に照らされた影に、だれかの被害があることを思い浮かべずにはいられない。

 それをいきなり未来ちゃんに言うかって? まさか。

 キラリがした返事にも、私と同じ思いを感じる。

 件のおじさんの運営する私塾のアジトへ向かったら、幽霊が出た。

 放っておけない事態なのに、なんで装備はいらないなんて。

 確かめずにはいられない。カゲくんの真意はなんだろう。


「今夜はあくまで立沢たちの支援と偵察。ぶっとばしに行く気はねえぞ?」

「だから、装備はいらないって言ったの?」

「おう。おっさんの邪相手なら、こいつがあれば十分だろ? 幽霊たちを助けたいってんなら、刀はいらない。現世でおっさんの対処と捜査が必要なら警察の仕事だし、おっさんが精神的にやべえってんなら、それは医者の領分だ」


 隔離世でできることに閉じて。

 戦うならマシンロボがあればよくて。

 助けたいなら、刀を振るう必要もない。

 まるで私の最近の悩みをいくつか代わりに答えてくれたかのような手配。

 さすがにそれは考え過ぎ。たまたまだ。

 ああでも、そういう解決と分け方があるなんて思わなかった。


「隔離世からこっそり盗み見、邪相手の幽霊相手ってんなら、お前がひとりで背負うより、俺ら全員でやったほうが、楽だしうまくいくってもんだろ?」

「――……そう、だね」

「てなわけで、大船に乗ったつもりで久々の空気を満喫してくれよ。な?」


 したいことがあったら教えてくれなと言って、カゲくんはエレベーターに戻り、上へと向かった。操縦か、はたまた司令の補佐か。いつもならレオくんのサポートをするはずのマドカが爆睡しているもんだから、たしかに代わりの人が必要だ。

 マシンロボは走り続けている。

 夜の東京を東に向かって、猛烈な速度で。

 カゲくんの力で入り込んだ影世界を行く。

 車なんか楽々と追い越していく。最大速度を悠々と上回る勢いで進む。踏みつけたものを潰すこともなければ、警察や現世の人に咎められることもない。そもそも見えないのだから。

 それは同時にとてもさみしいことのようにも思える。

 表をどうどうと行けない。

 考えようでもあるなと思い直す。

 お父さんが遊んでるご長寿ゲームシリーズにアサシンクリードっていうタイトルがある。実際の時代、舞台を元に再現された広大なフィールドを行く。時代によっては、地下組織として地下に張り巡らされた通路を行き来する人々がいた。

 悲しいかな、いまはまだ、私たちそこまで認められてない。受け入れてもらうにはまだまだ長い道のりを行かなければならない。

 シュウさんは焦れて、一足飛びに解決したくなるくらい参った。それが去年の出来事だ。

 いきなり風向きは変わらない。

 焦ったところで事態は変化しない。

 けれど、できることをみんなですれば?

 現世じゃきっと、自壊しかねない。そんな巨大ロボットに大勢で乗って、快適に猛烈な速度で目的地に向かえる。

 いきなり多くは変わらない。

 だからなに?

 私たちみんな集まれば、影の世界で巨大ロボットに乗って、夜を疾走できる。

 ひとりで抱え込まなくていい。

 それを示すお誘いに違いない。

 まったく、カゲくんめ!




 つづく!

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