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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第九十九章 おはように撃たれて眠れ!
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第千九百四話

 



 小さい頃を覚えてる?

 覚えたことをすぐに使いたくなるの。

 なんでもかんでも指して、覚えたてのことばを言う。

 親が驚いてくれたり、喜んでくれたりすると? もっと言いたくてたまらない。

 そんな頃のことを覚えてる?

 忘れちゃってるかな?

 私はぷちたちを見ていても、思い出せなかった。

 ただお母さんに「もー、何度くりかえすんだろうね?」なんて言ったら「あんたもトウヤもちびの頃はうんざりするくらいやってたじゃない」って切り返された。ぐうの音も出ない。トウヤのおちびの頃ならぎりぎり覚えているし。お父さんに確認する勇気も出なかったね!

 そのワードを唱えたら「もう考えなくていい」魔法がかかる。そんな癖として残らない?

 オカルト絡みでばりばり働いていたことが明らかになったお母さんも、表のお仕事じゃけっこう? ううん、かなり苦労してるみたいだ。契約絡みに詳しいのも自衛のために学んだからみたい。そんなお母さんから口酸っぱくして言われているのは、なにも仕事の契約や避妊絡みの話だけじゃない。

 まるまるだから、と理由をつけて手を抜くのはだめ。そういう人のそばにも近づかないこと。

 そういう状態でいるとさ?

 どんなに情報を集めても、分析しても、結局は「はいこれで自分に一切の責任はありませーん! おまえがわるいでーす!」ってしたかったり「だめえええ! ぜったい、だめえええ! じぶんわるくなーい!」ってしたかったりするだけ。

 だから先がない。自分の枠組みを頑丈にして、閉じたいだけ。

 そういう相手と仕事をすると、とにかく「自分に合わせろ! できなきゃだめー!」と手を抜きまくるだけでなく、いちいち「おまえだめー!」と言ってくるのだそう。

 ただただ迷惑。

 相手も世界も見ようとしない。自分に都合のいいように情報を利用するだけ。

 そういうの、だめだよって言われてる。

 なのにうっかり忘れて、やっちゃってた。

 アマテラスさまの館で目覚めた私は、とことこ館を歩き回る。あれから愛生先輩にもマドカにも出会えていない。もちろんアマテラスさまにもだ。

 ウカさまが忙しすぎるし、縁があるからとアマテラスさまの神使になった私だけども。もしもウカさまのお世話になっていたら、アマテラスさまよりもっと会えなかったのかな。

 忙しいのって本当にたいへんだ。

 正直かなりさみしい。

 やむなく狸街を目指して出かけることにした。

 今日は歩く。

 歩きたい気分なんだ。ふわふわ雲に挟まれた道を。


「星に名前をつけて、どんな星にも適当に指をさしては、あれはこれって言う」


 ジョーカーやハンニバルに。

 教授やアダムに。

 覚えたてのことばに勝手に当てはめて、私の浅知恵枠に押し込めちゃう。

 そりゃあ、よくないよ。よくない。

 なんにもならない。

 お母さんが言う、だめで雑な振る舞いと変わらないもの。


「よく見て、聞いて、感じて。頭を働かせて。心を開いていく。氷山の一角で済ませても、なんにもならない。済ませたい私の都合は閉じたまま。それじゃなんにもならない」


 とっとこ進む。

 歩く。ただのんびり歩く。金毛が揺れる。稲の輝きに挟まれながら、ゆっくり前へ。

 学んだことをなにかに活かしたい。

 そういう気持ちはある。ゼロにはなかなかできない。

 お母さんの教えは示唆してる。

 だれしも自分の世界しか見えない。だれもが偏見を持つ。

 自覚的でないと、自分の世界の外に出ることはできない。意識すること自体ができない。できたとしても自分の世界を大事にする限り、外の氷山も海も、空を見上げた点くらいにしか感じ取れない。

 それじゃどうにもならないんだ。

 ジョーカーの人となりもわからないし、ハンニバルという人がどういう感じ方をしているのか想像できない。ただ自分の妄想を当てはめるだけで済ませてしまう。

 情報の内容のみならず密度さえも、自分の枠組みをぎゅっと狭めて、都合のいいものしか受け取れなくなるし、見えなくなってしまう。

 世界はずっと広いのに。人はひとりでさえ、ぎゅっと凝縮された複雑なものなのに。

 言動も判断も選択も、自分の枠組みが映し出される瞬間に繋がる。

 閉じないで。つらいときには、そうじゃない世界があることを知らせるし。楽しいときには、満喫できる世界があることを知らせるし。行き詰まったときには、ほかにも捉えようがあることを知らせる。繋がることができるし、繋げることもできる。

 これはこれで、偏見。

 なんでもかんでも開けばいいものじゃない。

 楽じゃないね。

 それが自分の頭で考えるってことだし、それには自分の心に耳を傾けなきゃだし? 一緒にいたい人をないがしろにしたら、どうなるの? どうでもいいからと大勢をないがしろにしていたら、一緒にいる人からどう見えるの?

 みんなちがう世界の見方をしている。同じ言語圏で、同じことばを使いながら、仮に同じように捉えていたとしても目的を違えているだけで話が噛みあわなくなる。同じことばでありながら、ちがうように捉えていたら? こちらもやっぱり噛みあわない。

 発声言語に限らず、私たちは常に翻訳しあいながらコミュニケーションを取っていると思うしさ? その翻訳の手間を省いたり「おれのルールに従えー!」と押しつけはじめると、もー! うんざりしちゃう。

 うんざりを感じたくないから自分の内へと閉じて、越境する必要がある人がコストを払うべき! なんて考えだす困ったちゃんもいる。それはお母さんが私にだめだよって教えてくれたやり方と同じくらいアウト。

 どこまでもいっても、自分越しにしか考えられず、感じ取れない。

 そこはもう変わらない。

 自分のすること、したことさえ、自分越しにしかわからない。

 自分に閉じたら、なんでも正当化できるし、矮小化できる。その危うさは結局、自分の損になる。

 ならば「あいつはまるまるだから、そもそも損!」として閉じる人もいるけどさ?

 そのまるまるに入るのが性別だろうと年齢だろうと人種だろうと立場だろうと過去だろうと、やってることは同じ。構図は一緒。

 それじゃどうにもならないんだ。ほんとにさ。

 おんなじことの繰り返しになる。

 つらさがあるのなら、一時しのぎしようとも、やがて循環して戻ってくる。

 変わらない。


「話したいなら、よく聞いて、なのに」


 忘れちゃう。

 ちっちゃくなった身体で短い歩幅を繰り返す。

 身体が小さければそのぶん負担も少ないのか、どこまでも歩いていけそうな気がする。

 たんに元気いっぱいなだけかな?

 わかんないや。ただ、身体は「自分、まだいけるっす! なんなら走ってもらってもいいっす!」と言いたげに元気を持てあましている。

 思えばちっちゃい頃は走りたくなったら、なにも考えず当たり前に走ってた。

 ピカソの話を思い出す。箱根で眺めた展示にある「こどものように描く」の境地は、ほんとに、とことん、徹底的にむずかしそうだ。さらにその思いが強くなった。

 崩壊したビル跡でぷちたちが教えてくれたっけ。

 知りたいのなら尋ねる。

 けれどそれは「自分の求めてることだけ答えろ」と圧をかけるようなものじゃない。自分の疑念に相手を利用しているだけだ。それじゃ意味がない。

 右手を掲げて金色を出す。結ちゃんたちとここで再会したときの記憶を軸に凝縮させて転化する。まんまる金色お球を持って、ふり返る。

 結ちゃんはうれしい、たのしいって気持ちでいっぱいだったって教えてくれた。

 そのぶんだけ色づく記憶を思い浮かべてみる。私とレンちゃんのぷち状態をいじった結ちゃんは冗談を言っていたんだなーって感じる。抱っこしてぎゅっとして頬ずりしたそうなあれは、私たちがぷち状態だったから? 結ちゃんがちっちゃいのが好きだから? それだけなのかな?

 思えば同じ学校に通うことになったキラリほど、結ちゃんとスキンシップ取ってないなあ。

 キラリは中学時代、私とふたりして微妙な関係値だった。

 でも結ちゃんはちがう。

 ずーっとずーっと、私と一緒に過ごそうとしていた。どんなに私が逃げても隠れても、絶対に見つけ出してた。ほっとかなかった。私のぼっちのこじらせっぷりになんか負けてなるものか、みたいな執念さえ感じた。実際、めげる気なんかなかったんだろう。

 でも、結ちゃんはひとり、北海道の高校に進学した。

 奇しくも士道誠心と同じ、隔離世絡みの教育を受けることができる北斗に入った。

 そのおかげでいま、天国修行で結ちゃんとも会える。けど、そうでもなきゃ、滅多に会えない。

 高校に入った私は当時のこじらせ拗ねっぷりを反省して、やめた。けど、結ちゃん相手にデレたかっていうと?

 うーん。

 たぶん。いや、間違いなくデレてない。そんなにデレてない。

 深刻なデレ不足なのでは?

 あり得る!

 私がちっちゃくなっただけでデレ判定されちゃうくらいなのでは!?

 ――……あり得る!


『そうなのか?』

『妾に尋ねるでない』


 戸惑わせてごめんて。

 いまね? いっちょ景気づけをして、やる気を出してるの。

 人の言動も、そして世界の捉え方にも、どうしたってイデオロギーが組み込まれる。切り離せないもの。

 私は自分の心の中で、私に対して「こういうのはだめ」とか「こうしなきゃ」とか思うほう。

 そのひとつひとつが氷山の一角につけた名前くらいの情報量。空に見つけた星に「きれい」とつけた情報量とたいして変わらない。だけど、それも結局は世界の見方として組み込まれるもの。

 たとえどんなに名前をつけても、見えた一部分に対する「自分はこう思うっす」を越えることはできない。忘れないようにしておきたい。

 だ、け、ど。

 そればかりだと、自分のしたいこと、楽しい気持ちとか全部、見失っちゃうからさ?


「渾身のデレを見せるぞ?」


 どうしよっかなーと考える。

 遊びは大事。とっても大事。

 ウィニコット著、遊ぶことと現実を読みふけりたくなるくらい、大事。

 去年はカナタを体育館に呼び出して、床からせり上がってドデカ衣装姿で演歌を歌ったっけ。

 結ちゃん相手なら、どういうのがいいかな?

 転化した球を両手で抱き締めながら進む。引っこ抜ける気持ちはふたつ。

 だけど、そんなのはさておき、あのとき私はうれしくなかったのか問いかける。

 うれしかったよ? もちろん。

 だけど最初に引っこ抜いたのは、最初に思い出した「なんで結ちゃんはぷち状態じゃないの!?」のまま。

 足りないなら、いまから感じちゃえばいいじゃない?

 ということで、再会を祝しそびれているので、思いっきり祝っちゃおうかな! とね!

 思うわけですよ!


『先送りでいいのか?』


 制限時間を設けて、きっちり計画的にやりましょうねっていう話だとは思うの。

 いつだれがやってくるのか、私にはわからないけど。

 それでも平時から備えておくのが、うちの学校で学ぶ心得のひとつだ。

 いま習得中の技術をしっかり仕上げていくうえで大事なんだ。こういう遊びさえ。

 失敗を積み重ねて、なにかができあがるというのなら?

 最初は失敗から始まると思うの。

 実利から遠い、ばかげた試みみたいに言われることさえあるんじゃないかな。

 人類が空を飛ぶことさえ。歩けるのに、動物にまたがったり、乗り物を作ろうとしたことさえそうだったかも。

 実現するまで、しっかり失敗するためには、内側に閉じてちゃだめ。

 自分に閉じてたら、失敗をちゃんと掴めない。

 それじゃ失敗の先にある成功までたどり着けない。

 だったらどうする?

 ちゃーんと、遊ばなきゃ。

 これは先送りなんかじゃないんだよ?


『見通している、と?』


 ううん。うなずきたいけど、きっとちがう。

 見通しは立ってないんだ。

 ただ、道の歩き方を決めているだけ。


 ◆


 翌日の昼、和室がそば粉と小麦粉で粉まみれになっている中、高城さんからの連絡があった。

 思ったより好評。でもめんどくさがる子もいるので、無理強いはなし。わあわあ騒いでいるうちに無視できなくなった子もいる。そんな中での連絡は正直「いまむり!」だったんだけど、多忙な高城さんのスケジュール確認は拒否しがたい。

 ぷちたちに許可をもらってカナタに託してからお庭へ。

 ビデオ通話越しに画面に映る高城さんを見る。パリッとしたスーツ姿で、いつものお顔。どこかの会議室か待合室なのか、白いパーテーションを並べた壁が後ろに見えた。


「お待たせしてすみません、外にでました」

『春灯、顔が真っ白だけどどうしたの?』


 いけない。顔洗ってなかったから、粉まみれだ。


「――……ぷちたちとそば打ちしてまして」

『あああ……』


 すこしだけ私の顔をまじまじと見てから「ごめんね」と切りかえる。


『次のライブの詰めと収録が近いから、予定の確認と、あとは先日の病院の結果はどうだったか改めて聞いておきたくて。だいじょうぶそう?』

「そりゃあもう!」

『よかった。明坂サイドから来月の大きな仕事のオファーが来ているけど、これも大丈夫だよね?』

「もちろん!」


 ミコさんに誘ってもらったんだった。

 ライブのときに約束したんだったかな? 協力してもらったから、お返しにお仕事。

 そういうのも、縁だよね。


『あと真壁さんから、次のロケは一週間ほどスケジュールが欲しいって。夏休みに入れてもだいじょうぶそうかな?』

「ああああ」


 いやとは言えないけれど、答えるのがとびきりむずかしい。


「ぷちたちと一緒ならって言いたいんですけども。それってかなりむずかしいですよね」

『や。真壁さんのほうから是非ともってきてるから』


 意外。

 気を遣ってくれたのかな。

 すっごくたいへんになるよ? いいのかな。

 逆に怖いまであるな……。まあ、でも。


「じゃあ、だいじょうぶです」

『よし。あとね、耳に入れておきたい話がある』

「またなにか撮られたり、急な無茶ぶりです!?」

『あはは、今回はそういうんじゃないよ。ただただ厄介な話で』


 それはそれでいやなんですけども!


「どうしました?」

『ここ何日か、春灯とぷちちゃんたちを一緒に、教育運動の広告塔として是非にとオファーが来ていてさ。しかも同じオファーが、あちこちから。あの手この手でね』

「はあ」


 初耳。


『毎回お断りしているのに、妙にしつこくて』

「え、と」


 お断り?


「なにか、変な仕事なんです?」


 教育運動って、いかにも真面目そうだけど。


『共に教える社会を目指す、みたいな。そうした信条で活動しているそうだ。人を集め、こどもたちを集めた一種の私塾みたいなもので。その宣伝に是非にっていうんだよ』

「――……はあ」


 まだ、よくわからない。


『けど、調べてみたらきな臭い噂が多くて。なのに、どういう流れか、妙に羽振りのいい金額でのオファーでさ。僕のところまで話が流れてきた』

「それでお断りした、と。きな臭いから」

『そしたら連日、なんでなのかとか、お金に糸目はつけないとか、春灯に直接はなしたいとか言いだして。きちんとお断りしたうえで、これ以上はご迷惑ですとお伝えしたんだけどね? その翌日、つまり今日、会社に来てさ』

「お、おお」


 それはそれは、かなり押しが強くて厄介な。


『もちろん個人情報だからお伝えできないとして、春灯の家の話は伏せたし、これ以上一方的にこられるようだと、こちらとしても法的措置を取らざるを得ないと伝えてある。ただ、万が一にも相手がどうにかして、押しかけてくるようなら警察に通報して、僕にも連絡をちょうだい』

「は、はあ」

『会社に来たのは五十代過ぎの男性がひとり。中肉中背で、かなり日焼けした、髪の薄い人だ。ネットに詳しそうには見えなかったけど、お金があって強引な人間は怖いから』


 探偵を雇って調べさせるくらいはしそうだ。たしかに怖い。

 セキュリティがしっかりしているマンションだとロビーがあって不審者が入れないようなっていたりするみたいだけど、それに比べたら一軒家はね? けっこうおっかない。


『諦めてもらえたと思うんだけどね。すこしでもなにか思い当たることがあったら絶対に連絡してね。送り迎えも徹底する』

「そ、そうですか」

『できるかぎりのことはするからね。遠慮は絶対になしだ。いいね?』


 損害賠償絡みの話かな。

 会社は契約した私のことをきちんと守るべし、みたいなことかな?

 ド新人の私側からの記述変更、よく通ったなあ。

 そんなことお母さんに言ったら「おまえ……っ!」と鬼の形相をされるに違いない。

 ちゃんと読み、自分で自分に有利な記述はきちんと追加、不利な記述はきちんと修正、お互いに折り合いをつけられるよう対話をなさいと口酸っぱく言われてる。

 それでも。


「はあ」


 こういうとき、どうしたらいいかわからなくないです?


「あのう。どれくらい危ういんです?」

『実際、春灯に嘆願して仕事がうまくいくかといったら話は別だ。事務所として引き受けられないと提示したうえでごねることに利点はない。加えて警察に相談するとまで言われたら?』

「まあ、それ以上はごねないですよね」


 得がないし、相手は受けてくれないと諦めるしかない。


『でも、ことばが届かなくなっている人もたまにいるからさ』


 正論も届かず、自分都合で推し進めちゃう。


『すっかり項垂れて帰っていったから、だいじょうぶだとは思うんだ。ただ、会社に押しかけてきたことを踏まえると、いちおう知らせておきたいなと思って』

「怖がらせちゃいけないから黙っていよう、じゃあ、押しかけられたとき対処できないですし。助かります」

『ごめんね。学校の寮に戻るのなら、送っていくから知らせて?』


 さすがに高校はガードマンさんがいるし、部外者が入るのはむずかしい。

 絶対に不可能とは言わないけどね。学校に戻ったほうが安心まであるな。

 ぷちたちとの生活を思うと、来ないなら現状維持でいきたい。

 だけど安全を最優先にするのなら?

 もー。

 かといって。


「高城さんから見て、その宣伝に出るのはアウト判定なんですよね?」

『ああ』


 なのに受けるのは怖い。

 仕事における勘所については、高城さんを信じている。

 いっそ、ぷちたちがいないところで囮になって絡まれて、警察に通報してひと区切りっていうのが楽に済む気がするくらい、参る。

 門前払いで止まらずにエスカレートしていく時点で、いま浮かんだ手を使っても止まらない気がする。

 気楽な仕事じゃないなあ。ほんと。


「じゃあ、ひとまず様子見します。なにか思いついたり、やばそうだってときは絶対に連絡します」

『約束してね?』

「もちろん!」

『よし。ごめん、春灯を不安にさせるような仕事してちゃいけないんだけど』

「んー。さすがにこればかりは仕方ないのでは」

『そうはいっても、会社にできることがあるからにはね。いい? なにか起きる前に止めるのが一番なんだから。借宿の手配が必要だ、とかでもいいんだからね?』

「ううん!」


 うちの家族も私も、それなりに動けちゃうからなあ。

 なんなら緋迎さんちにお世話になったら? ますます防御力が高まるまであるのでは?

 いや、まあ、ご迷惑になるから気楽には言えないけれども。


「まあ、ひとまず様子見で!」

『――……絶対に遠慮しないでくれよ?』

「もちろんですとも!」

『じゃあね? すぐにスケジュールは送るから』


 通話が切れるから、スマホをポケットにしまった。

 なにげなしに周囲を見渡す。

 これで高城さんが教えてくれた人が見つかったら?

 もうそれ、ホラー。

 いまやほぼ夏とはいえ、ないない。やめてほしい。

 たいへんなお仕事だなあと実感する。

 気軽に写真を受けないこと、なぜならどう使われるかわからないからとか。個別にお仕事どうかと言われたら受けないこと、事務所を通しておかないと仕事がだいじょうぶかどうか管理できないからとか。

 いろいろ聞く。

 小さい頃にも、よく注意されたっけ。

 知らない人についていかない。知らない人からなにももらわない。

 私もいま、ぷちたちに注意することがある。

 しみじみと実感する。

 守られていて、安全なのが当たり前だという時期に感じたほど、世界は隅々まで穏やかじゃない。

 それにしても、高城さんがNG出すほど怪しい教育運動って、なんぞ?

 尋ねそびれちゃった。キーワードはもらったし、あとで調べてみよっかな?

 でもね。あとだよ? いい?

 いまはぷちたちがカナタとそばを打ってるの!

 人生初のそば打ち。

 せっかくなら楽しい時間になるよう盛り上げて、みんなで満喫したいからね!




 つづく!

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