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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第九十九章 おはように撃たれて眠れ!
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第千六百九十三話

 



 みんなが待っている場所に近づくほど、あいさつをするだれかと出会う確率が増していく。

 最初は生徒の親御さんが多かった。お父さんもお母さんも、話しかけるし、話しかけられる。それがやがて、徐々に生徒の姿も交じってきて、応じて通りの出店も賑やかになっていく。

 たまに知った顔を見かけるようにもなってきた。

 最初に駆け寄ってきたのは茨ちゃんと岡島くんで、ふたりして浴衣姿だったんだ。

 なんそれ! ドレスコードあるなら教えてよ! と沸き立っちゃうくらい、ふたりは着こなしていた。デフォルメされた大きな出目金の泳ぐ、水色から青へとグラデーションがかった浴衣の茨ちゃんと、黒に橙の花火が咲く浴衣の岡島くん。ふたりとも、夏を楽しんでいるみたい。茨ちゃんの中指にはゴムでくくりつけられた水ヨーヨーがついていた。ばっちんばっちんと、上下に振るヨーヨーにぷちたちの視線が見事に吸い寄せられている。

 やるな。ぜったい、やる流れになるな。水ヨーヨー釣り。覚悟を決めつつ、ご挨拶。


「楽しんでるねー」

「青澄、元気? っていうか、ママ?」


 どんな挨拶だよっ!


「ひさしぶり。先で山吹たちが待ってるよ。浴衣のレンタルもやってる。ぷちたちのもあると思うよ? ちっちゃい子が借りてたから」


 岡島くんの雄弁なフォローよ!

 必要な説明まとめてしてくれて、助かる!


「ありがと! あと、水ヨーヨーって」

「ああ、それなら――……」

「ママじゃん! 青澄!」


 岡島くんが教えようとする前に、割って入ってキラキラ笑顔で茨ちゃんが言ってくる。

 いじりたすぎか! 言わせたがりか!

 あと、周囲にいる学校の子たちが一斉に聞き耳を立てているような気配が!

 あれかな? ちょっぴり話題になっちゃいましたか?

 聞きたいですか。


「まあね! ぷちたちを生み出したときにはもう、なってたみたい? 新米ママってやつにさ」

「「「 お~!? 」」」


 ぷちたちが一斉に声をあげる。なぜか茨ちゃんも一緒になってハモってる。


「すっげ。へ~」


 目を見開いて顔とお腹を交互に見られた。

 思わず声をあげる。


「お腹みないで。現世でこども生んだんじゃないから」

「じゃあ、どこから生まれてきたんだ?」


 興味本位です! って顔に書いてあるんだろうなあ。

 目に見えるようだもの。

 たまらず岡島くんが目配せをする。


「こら」

「パパはだれになるんだ?」


 残念! 届かない!


「ちょっと」

「寮部屋せまくね?」


 岡島くんが止めようと口を挟むんだけど、茨ちゃんは止まらない。

 どの質問も、そりゃ気になるだろうし、だけど言えない類いじゃないかな。

 最後の指摘なんか、ごもっとも!

 申し訳なさそうな顔をして、岡島くんが茨ちゃんの肘を取ろうとした。

 けど、ぷちたちも私を見ているし、周囲がちらちら見てくることを見て取ってもね?

 避けては通れない。答えたら噂は瞬く間に広がるだろうけど。

 式神ってなんぞ? という前提からして、私を含めて、みんなよくわかってない。

 よく知るきっかけにしたいし、学びたいし、安易に済ませる言葉を吐いたら、いろいろ言われそうだし。

 も~!

 めんどくさいっ!

 けど、そこでの感情もわりと自分次第なとこ、ある。余裕のあるなしでだいぶ変わるし、ないときは自分じゃどうにもできない可能性がマシマシになるってだけでさ?


「部屋はおいおいね。式神とはなにか、っていうのは、私の尻尾と同じくらい深遠な謎なの。だから私にもぷちたちにも、私が親で、ぷちたちがこどもだっていうこと以外は、よくわからないんだ」

「へええええ! そうなのかあ」


 ヨーヨーをぼよんぼよんとしながら、神妙にうなずく。

 もちろん気になる。ヨーヨーが気になって仕方ないよ!


「じゃあオレらが手伝ってもいいかどうか、謎な感じ?」

「――……と、いいますと?」

「んー、ほら。ママは気を張るっていうじゃん。ぷち相手にオレらが絡んで、青澄がハラハラするなら、あんま申し出るのもよくないのかなーって」

「まさかそんな!」


 ないない! むしろ助かる!

 あと、そういう話を先にしよう!? ね!? ほんとに!

 私の場合は、だけど! だれにでも、とはいわないけど!

 助かるから……っ!


「じゃあ、浴衣の着替え込みで、連れてってもいいか? 祭りでさー。どいつもこいつもノリわるくてよー。オレは大勢で全力で楽しみたいわけ! お前ら、どうよ。お祭りわいわいしたくね?」

「「「 おおおおお! 」」」


 掴まれる場所にぐっと力をかけて、ぷちたちが一斉に跳ねる。引っ張られるわ蹴られるわでたいへんです……。

 あと、茨ちゃん相手だと人見知りしないんだね?

 学校で何度も会ってきたからかな。

 私の尻尾の中で過ごしている間も、よく見ているからかな?

 面倒見がいいのは知っている。ただ、ぷちたち全員を相手にするとなると、どうだろう。


「井之頭たちと合流するんだ。みんなで見守ることになるけど、その」


 どう話すのが適切なのか見通せないのだろう。岡島くんがもごもごとしゃべる。

 人通りの多い、縁日の出店街。

 予想されるトラブルは?

 迷子だよなあ。ぜったい迷子だ。

 ケンカも、食べすぎも、拾い食いも! とにかくやまほど浮かぶ。

 食べもの関係なら岡島くんになら任せられる。どうせ止めても食べるし、回る限りは食べることになるんだし? そこはいい。拾い食いは見ていてもらうしかないとしてもだ。

 ケンカも似てる。だれが見ていてもするときはする。

 となると、迷子かな。金色を出しては化かして、鈴に変える。私を呼ぶ鈴を赤い紐に通して、みんなに持たせて説明する。必要とあらば、ぷちたちをくるんで私の元へと戻るようにと、金色に願いを込めておくことを忘れずに。そうすれば、一応は防げる。私が遠隔で操れるようにしておけば、ぬかりない。絶対に離れないよう仕掛けをつけられれば言うことなし。ぷちたちがなにか唱えたら、それですぐに私の元に戻ってこられるようにすれば、なおよし。

 鈴さえあれば、もう大丈夫と侮るなかれ。

 変な人に声を掛けられる可能性なんていうのも忘れずにおきたい。

 これだけ人通りが多いと、ここがいかに宝島という特殊な場所であろうと、なにがあるかわからない。はぐれない限り、迷子にならない限りは、岡島くんたちと一緒にいるなら、だいじょうぶだろうとは思うけれど。

 問題はぷちたちがケンカして、だれかがひとりで飛び出しちゃった場合だ。

 それは私と回っていても起こりえること。


「「「 だめえ? 」」」


 みんなが一斉に問いかけてくる。

 こういうときのおねだりの顔作りは得意なんだ。だれも教えていないのに!

 私、してるのかなあ。見られてるだけなんじゃないかなあ。


「いいでしょお?」


 なんで茨ちゃんがぷちたちと同じテンションで甘え顔をしてくるのか。


「岡島くん、なにかあったらすぐに連絡してくれる?」

「オレじゃないのぉ!?」

「茨ちゃんは、急いで揉めごとやトラブルを解決しようとするだろうから岡島くんに頼んでるの」

「――……なるほど!」

「もちろんだよ」


 ふたりが納得したから、ぷちたちがそろって茨ちゃんに飛びつく。

 身体にひっついていたいところは変わらないみたいだ。

 ひとり残らず、鈴をだしてはみんなの手首に紐を結びつけておく。全員が鈴を持っていることを確認して、一段落。

 思い浮かぶ限りの注意事項を、ぶわーっと並べ立てたいところだけど「拾い食いしちゃうと、おいしいおいしいご飯を食べ逃しちゃうし、ぽんぽんぺいんになっちゃうぞ?」ということと「お姉ちゃんとお兄ちゃんの言うこと、ちゃんと聞いてね?」ということ、それから「困ったときは鈴に、ママ早くきてってお願いするんだよ?」と伝えておいた。

 そのみっつでも、ぷちたちの反応は様々だ。

 もういいよーそんなのーって子もいれば、神妙な子もいるし、ぼーっとしていて聞いているのかどうなのかよくわからない子もいる。

 はっきり言おう。

 しんぱい!


「よおし、いくぞおお! しゅっぱーつ!」

「「「 ごおおお! 」」」


 走りだすかと思いきや、大股でのびのびと歩くだけ。

 会釈をして、岡島くんが茨ちゃんについていく。

 身体の重さがなくなったぶん、熱と感触もなくなって、それ自体が寂しさを私に訴えているようで、ますます不安になる。

 一週間ぜんぶ、まるまる過ごしていたっていうわけじゃないのに、とっくに慣れてる。

 なんてエモさを醸し出そうとしたけれど、正直「ひさかたぶりっのっ! ひっとっりきっりー!」っていう、謎のハイテンションがあるのも事実だったりして。

 気を配らなくていい、という時間の楽さよ。

 それはカナタとふたりでいる時間にもあったし、お互いさまでもあるんだけどさ。

 なんだろな。

 かさぶた火山理論プロトタイプを、さらに弄るとしてさ?

 私をひとつの火山とするのなら、ぷちたちは私の山肌にできた小さな小さな山だ。その小さな山の圧力は、小さな山では処理しきれず、その仕方もわからず、私へと流れこんでいく。ただし、その逆も起こりえる。大きな山の圧力は小さな山を簡単に崩してしまう。なので大きな山は気を張る。小さな山々へと流れていかないように、内部に留めるための圧力を増す。

 動く火山という人々。だれかと繋がり、接続するとき、私たちは内部の圧力を自分でどうにもできないほど、内部から噴き出たものは制御しきれなくなっていく。自分でガス抜きができるといい。だれかと憂さ晴らしができるといい。

 じゃあ、圧力がないといい?

 わからない。知らない。ただ、自分の圧力が自由にならないと? 思うようにならないまま、つらいなんて。しんどいんじゃないかな?

 人は触れあうとオキシトシンが分泌されて、穏やかな気持ちになるという。男性はオキシトシンを感じるのが女性よりもむずかしいという。男性ホルモン、テストステロンの関係だったかな。拮抗するんだって。オキシトシンの作用の好ましいものを得ようとしたら、男性は女性と同じ効果を得ようとするとき、拮抗して損なわれるぶんだけ、なんとかしないといけないそう。

 こういう話こそ、学ばないままするべきじゃあないと思うのだ。

 明らかじゃないことを前提にはできないからね?

 ただ、ホルモンの関係だろうと、そうでなかろうと、互いに望ましくふれあえることは力になるような気がしてならず、それはひとりじゃどうにもできないものだ。

 安全基地もそう。

 ぷちたちと過ごしていると、ひしひしと感じる。

 安全基地が、ちゃんとしてて。

 前提が満たされてようやく、私たちはしっかりと冒険を楽しめるんじゃないかな。

 だけど、それはとてもとても、むずかしいことで。

 それはだれもがひとしくできることじゃあなくって。

 だれにもひとしくあたえられることじゃあ、なくて。

 そうなったときさ。

 傷ついて、痛みによってたまりにたまった気持ちのやり場は?

 どうやったら、私たちはそこから、歩き出せるんだろう。

 トシさんと、トシさんの仲間うちのみなさんと歌うことになると、たまぁに出てくるお約束曲があって。いろんな曲の中で、こういうときにふっと浮かぶのが「笑えれば」なんだ。

 もうほんとしんどくて、つらくて、具体的にするととてもじゃないけど顔をあげるのもむずかしくて、億劫で、なにもかも最悪で、逃げ場もなくて。そういうときに、とにかく笑えれば、なんて。答えもなくて、抜け出せる見込みもなくて、救いもなければ、心のあちこちから染み出る怒りや怨みに気が狂いそうになる、そんなときさえあって。

 そういうときに、自分からにじみでるガスもドロドロした感情マグマもなにもかも、ぜんぶ吹き飛ばせるくらい、ガハハってさ。笑えたらいい。

 怒りだけにならず。怨みだけにならず。

 忍耐なんか捨てちゃって。我慢なんか思いきり蹴飛ばして。

 全力で笑って、そっからもう身体の水分ぜんぶなくなっちゃうんじゃね? ってレベルでボロボロに泣いて、その顔のおぶす具合にまたしても大爆笑して、地面に崩れ落ちて、笑って、泣いて。そこまでして、やっとはじめて、ちょこっとだけ、ちょっぴりだけ、ガス抜きできる気がして。

 ギリギリなんだ。首の皮一枚なんだ。ほんともう、そんなギリギリで留まってんだ。

 その一枚が、笑えればなんだ。トシさんたちが酔っ払ってボロボロ泣きながら大熱唱してるのを横で見たときにはテンション熱すぎて引いてたけど、でもあのときも、いまも、よくわかるんだよ。

 うまく回ってるって顔して、よくないことはできない人たちにぜんぶ押しつけて、人やなにかのせいにして、どやってんじゃねえよって怒鳴り散らしたい気持ちでいたんだ。小学生の頃。

 そういうの、声に出したことがなくて。

 そんなのずっとため込んでいたら、そりゃあガラス割ったり、机けとばしたり投げつけたりするくらい、限界になるよ。ギリギリを越えちゃうよ。

 そうならない道って、なんだろう。

 いくらでも声に出せること? いくらでも笑えること? 泣けること? そうなる前に、遊びたいときに遊べること? なんでも話せるだれかがいること? 触れると落ちつくだれかがいること?

 わからないよ。

 そんなの、わからない。

 ぜんぶ必要としか思えない。

 なのに、ギリギリだったら? 限界を超えたら? そのとき、あまねくすべての人に、必要なぜんぶ、ううん。ぜんぶじゃなくていい。ひとつでもいい。あってくれと願うし。ひとつとしてない人だって、たくさんいるかもしれない。

 邪が隔離世にいるのは、その現われと見ることさえできるかもしれない。

 だけど無理だ。ひとりでそんな仕組みを変えられるはずがない。身の回りのことからねっていうのは、身の回りのことで精いっぱいだからっていう話もあって、ますます、ままならないのだ。

 歌うことしかできないよなあ。

 かといって、許容もできない。

 パンが必要だけど、あらゆる種類のパンが欲しい。パンだけじゃいやで、パスタも欲しいし、もちろんご飯だってほしいぞ?

 バラで飾らずにはいられないのが、人。遊ばずにはいられないのも、人。

 生活を彩り、多種多様な遊びをして、人や世界と触れあい、知識や技術を深めていく。

 ままならないなら、それでよし、じゃあ?

 原始的な生活のままで止まっていた。良い悪いじゃあない。そもそも変化しなかったんじゃない?

 変えずにはいられない。

 けれど、それは心地よい利益を広めて底上げする形がいいよなあって思うわけ。

 そんときこそ、地面に寝転がって、目から涙が出て、ひいひいいって息をするのが大変になっちゃうくらいの大爆笑ができるんじゃない?

 なにかが脅かされる。あるいは、その可能性が見て取れて、判断に悩む。

 そういうことのほうが多いのは、だってそりゃあ、そもそも居るのもたいへんなまま、場合によっては手立てを見失ってしまうような悲惨な状況さえ克服できていない私たちだから。

 まだまだ荒れた道を移動している真っ最中なのだ。

 整備してこ? って話ね。荒れた道はやめとこ、でもなく。自分よりだめな人たちに歩かせよ、でもなく。整備してこ? って話だ。

 悲しくなるくらい、裏切りのない話でごめんなさいトークなんだけどね。

 そこんところを意識して、ぷちたちといるとさ?

 私って、ぷちたちと過ごすうえで欲しい経験値がやまほどある。

 私自身に対しても、そう。

 ずーっと、死ぬまで続くんだろうなー。この気持ちって。

 むしろ続いてほしい。

 やっと学ぶのが楽しくなってきたんだ。

 やっと知りたい気持ちと過ごすのが気持ちよくなってきたんだ。

 このノリで、続けたくなる意欲で尻尾の穴についても考える。

 安全基地として。冒険として。ふたつのフィールドは、領域が異なる。

 キラリはどちらか限定するよりも、どちらにも活用できるように変身をイメージしている。対するマドカは変身という刺激を用いて、私の穴がどちらを求めているのかを探ろうとしていたっぽい。

 どちらもそう的外れじゃない。キラリが一歩、踏みこんだ形。穴がどんなものかを調べながらやっていく手段だから、どうしても抽象的で、あいまいなものになりやすい。そこでキラリは隔離世の戦闘における機能を重視することにした。わくわく要素を足して、マドカの目的がより叶うようにと意識してもいる。

 だけど、そもそも霊子体はなんなのかーとか、穴やヒビはなにを意味するのかーとか、だれもろくにわかっていない。症例はちらほらと。けれど、好ましいケアおよび治療法はできてない。

 最初はそれってどうなの? この現代社会で!? って思ったけど。

 なにいってんだ、といまなら思う。いじめも自殺もなくなっていない現代社会で。心の傷さえまんべんなく、すべての人のすべての痛みを治すほうが困難が多すぎると想像できちゃう悲しい実情じゃんね? 未来ちゃんの話を聞いてるとしみじみ思うんだ。まだまだだって。私はもっともっと治療が行き届く未来へと進む流れが欲しいぞって。

 なので、手探りになる。それは承知してる。私もキラリもマドカも、みんなもだ。

 ここまでくると、私の穴は致命的なものに思えてくる。

 けれど、どうだろう? 視点を変えてもよくないかなって、いまの私は考える。

 カナタがシュウさんにこうしてくれと。シュウさんがカナタにこうしろと。そう互いに、安全基地が安全でない理由を相手に求めて、相手に変わるよう圧をかけて、どうにもならなかったように。

 まるっきり同じ構図を、中学生時代の私とキラリはやってた。キラリの圧を一とするなら、私の圧は百を超えてたレベルだから、緋迎さんちの兄弟ゲンカよりも悲惨。とにかく私がひどかった。

 意地の張り合い、ろくなことにならん!

 こんなんじゃ済まなくて、お互いに首の皮一枚状態で、とにかく笑いたかったし、とにかく笑えなかった。いつだってなにかが足りないんだ。私たちの知らないなにかがさ。

 だれかを変えようとしても、なにかを変えようとしても、それは無理筋になりがちだ。

 おまけにだれかやなにかに「ったくさ~!」と、ぷりぷりしてれば済む感じになるのが、まずい。まずいんだけど、他に手がなくて、そればっかりやっちゃうことさえあり得てつらい。

 それって、私という火山から噴き出るガスか、間欠泉みたいなもの。ぷしゅーっ。出してどうする。

 安全基地を脅かすものなら、基地の整備を。

 じゃあ、冒険に出た自分を阻むなにかなら? 安全基地はあるのだ。安心して、どぉーんとぉ! ぶつかっていく。挑戦すればいい。

 尻尾にできた穴は、ガス? 間欠泉? それとも洞窟かな?

 穴だとみて、それを探るために短歌を利用しようと思いついた。私もマドカの初期プランのように、私の穴の意味を探りたい。

 転化する。穴に短歌を入れてみる。それは刺激を与える手立て。

 だけど穴を知る手立てがいま、ちょうどひとつ、思いついた。

 洞窟にして、冒険してみるのもよくない?

 変身するなら、冒険しときたいじゃん。やっぱ! 窮地に陥って、変身だ! って流れが大定番じゃん?

 まあ、そんな洞窟になるかはわからないんだけどさ。

 なにせ、ガスも間欠泉も込みの洞窟だったら、どう? ガスって、有害なものだったら? 高濃度で吸ったら即おだぶつ! みたいな状況だったら?

 変身どころじゃないのである。

 ま、それはそれで試してみればいっか。万全の対策を取りつつさ。


「春灯!」

「はあい!」


 お母さんに呼ばれた。さすがにぼうっとしすぎたみたいだ。

 身軽さが寂しさに直結する。

 どうしたって、あの子たちがだいじょうぶか気になる。

 私は私のことをするぞ、と言い聞かせても、テンション上がった部分があっても、それでも気になる。

 なるもんはしょうがないな!

 鈴に反応もなければ、岡島くんからの連絡もない。

 あの子たちの安全基地になるぞと決めたら、今度はあの子たちがだいじょうぶか、離れていても自分がやるぞっていう気持ちが落ちつかなくて、気持ちのやり場がない。

 安全基地に必要なこと、たくさんある。

 あと、たぶんだけど、しちゃうんなら、しちゃえばいいや。意識しとけばいい。

 心配しちゃうぞ~? あまくみんなよ~?

 こんな軽いトーンに本気で落ちつくまでには、だいぶかかりそうだけど。

 ゆっくりやってこ。

 どうせ合流することになりそうだし?

 洞窟で、あの子たちが無事に冒険を楽しめる仕組みを考えるのもありだ。

 それには、あの子たちが考えたくなるようなお題を用意しときたい。

 これにはオマケがあって、私も乗り気になるんだよね。

 そういうことにして!

 歩きだすんだ。

 そういうことにして!

 伸ばしたいほうこうに、長く成っていくんです。

 いまの予定では!

 あれ? でもさ。

 予定って、だいたい狂うものじゃない?

 すべてが思いどおりってこと、ないもんなー。あったらだれかがだいぶ譲ってくれてるか、我慢してるかしてそうだ。それとも、とびきり運がいいか。どちらにせよ、ないなー。ないわー。

 こうだって決めるほど、こうあるべしって求めるほど、うまくいかなさが心に障る。

 さてさて。

 それじゃあ、どうするの?

 安全基地を脅かさずに挑む術は、なんでしょう?




 つづく!

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