錨
遥香
「おはよう、陽奈っ
ほら、早く朝ごはん食べちゃいなっ
もう何時だと思ってるの
もうすぐ11:00だよ!」
ドンドンっっ
ドンドンっっ
私の部屋のドアを豪快に叩く
いつもそうだ
昌也が来た次の日は、至極機嫌がいい
そんなにも深く…昌也は姉を愛するのだろうか…
私に…愛してるといいながら
どんな気持ちで姉を抱いているのだろう…
昌也は…私のことを本当はどう思っているのか…
この秘密をどう感じているのか…
姉はこのことに気づいているのか、
いないのか
陽奈の心は
ボチャンっっと
海に投げ出される錨のように
深く深く海底に沈んでいった
(昌也…あなたと話がしたい…
姉のいないところで、ゆっくり…)
。
。
。
。
今度…昌也の職場まで行ってみようか…
ふとそんな思いが陽奈によぎった
そういえば職場変わったからって名刺もらってたよね…
確か手帳に挟んでたはず…
陽奈はゆっくりベッドから起き出し、
机の引き出しを開けた
名刺は手帳に挟んであった
でも…
もう一つ挟んでいた大事な物がなくなっている
確かにここにいつも入れていたはず
この手帳は持ち歩いたりしてないから落とすはずもないのだが…
ただ、先日古い手帳などを処分したりしたから
もしかしてそこに紛れて捨ててしまった可能性もある…
陽奈は思い当たるところを探してはみたが…
どこにもなかった
嫌な感じはしたが
ないものは仕方ないので…
ひとまず、名刺だけを財布に入れた




