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『また従妹に譲ってくれ』が四十八回目だったので、儀礼台帳を白紙に戻しました  作者: ヲワ・おわり


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25/70

第25話 宿場町の夕暮れ

全70話完結予定です。毎日5話ずつ、7:10/12:10/17:10/20:10/22:10に投稿します。

少しでも続きが気になりましたら、評価・ブックマークで応援していただけると励みになります。

 宿場町に着いたのは夕暮れ前だった。


 空の端が橙色に変わりはじめていた。建物の輪郭が光の中に沈んでいた。旅人の姿が通りに増えていた。宿を探す者、食べ物を買う者、馬に水をやる者。王都とは違う種類の賑わいだった。目的を持った人間の動きだった。荷車が通った。子供が駆けていった。犬が一匹、通りを横切っていった。王都の大通りの人混みとも違った。もっと素朴で、もっと速かった。


 ロドリクが先に手配を済ませていた。宿の主人と短い言葉を交わして、荷物が運ばれた。アシュリーは宿の前で少し待った。シエルが馬車から降りて隣に立った。


「ここで泊まるんですね」とシエルは言った。「いい宿じゃないですか」


 アシュリーは建物を見た。飾りのない石造りだった。清潔に見えた。それで十分だった。看板に灯りがついていた。扉の前に鉢植えが一つあった。誰かが水をやっている。そういう細部だった。


 夕食まで少し時間があった。ロドリクが「少し外を歩けますか」と言った。部屋に籠もるよりは体を動かした方がいい、という意味の言葉だった。アシュリーは頷いた。シエルも当然のようについてきた。馬車の中に長くいたせいか、外の空気が冷たく感じた。橙色の空はまだ明るかった。日が完全に落ちるまで、もう少し時間があった。


 通りには屋台が並んでいた。肉を焼く煙が上がっていた。香辛料の匂いが混じっていた。王都の市にも屋台はあったが、こういう雑な活気は宮廷には持ち込めないものだった。アシュリーは少し歩いた。人の間を縫うように進んだ。ロドリクが少し後ろを歩いていた。人が多い場所では自然にそうなっていた。道幅は広くなかった。両側から屋台の煙が流れてきた。通る人々はそれを気にしていなかった。慣れた様子だった。旅人も地元の者も、同じ通りを同じように歩いていた。


 一つの屋台の前で足が止まった。


 鉄板の上で何かが焼かれていた。薄く切られた肉だった。脂が音を立てていた。甘い匂いが漂っていた。旅人らしい男が一枚受け取って歩きながら食べていた。


「これは何ですか」


 アシュリーは屋台の前で言った。ロドリクが隣に来た。


「焼いた豚肉です」とロドリクは言った。「蜂蜜と木の実の油で仕上げるそうです。宿場町の旅人に人気で、この辺りの定番だと聞いています」


 短い説明だった。押しつけがましくなかった。それだけ言って止まった。


 アシュリーは屋台を見た。屋台の主人が次の肉を鉄板に乗せた。煙が少し立った。


「食べてみますか」


 ロドリクが言った。尋ねる形だった。勧めているわけではなかった。


 アシュリーは少し考えた。


 屋台で食べた記憶がなかった。王都の宮廷でそういう機会はなかった。儀礼管理官という立場では、食事は食事の場で取るものだった。通りで立ったまま何かを食べるという発想が、そもそも四年間の中になかった。行儀の問題ではなかった。儀礼を管理する者が通りで物を食べている、という場面が、自分のどこにも想定されていなかった。それだけのことだった。しかし今は宮廷にいない。台帳も持っていない。儀礼管理官ではなく、ただ北へ向かっている一人の女性だった。


「はい」


 言った後で、自分でも少し驚いた。


 屋台の主人が一枚を薄い木の板に乗せて差し出した。ロドリクが先に受け取って、アシュリーに渡した。温かかった。脂の匂いがした。


 アシュリーは一口食べた。


 甘かった。蜂蜜の甘さが肉の脂に溶けていた。想定していた味ではなかった。肉は塩で食べるものだという先入観があった。それが外れた。


「思っていたより甘い」


 言葉が出た。独り言に近かった。


「蜂蜜が多めだそうです」とロドリクが言った。「地域によって違うと聞きました。ここより北に行くと辛い味付けになります」


 シエルが横から口を出した。「お嬢様が屋台で召し上がるところを、私、生まれて初めて見ました!」


 笑い声が混じっていた。責めているわけではなかった。ただ驚いていた。驚きが嬉しさになっていた。


 アシュリーは木の板を持ったまま、少し間を置いた。


 そして笑った。


 短い笑いだった。声を立てたわけではなかった。しかし笑っていた。自分でも意識する前に笑いが来た。シエルの言葉が可笑しかったというより、この状況全体が、四年間の自分の中にまったく存在しなかったものだという気づきが来た。屋台の前で温かい肉を食べながら侍女に驚かれる、という場面が、儀礼管理官のアシュリー・ヴェルヴェントに起きている。それが何かおかしかった。


 この旅に出て初めての笑顔だった。


 ロドリクはアシュリーの方を見ていた。何も言わなかった。視線が少し動いた。それだけだった。言葉にしなかった。しかしその視線は、確かに一度、アシュリーの表情に止まった。褒めるわけでも、指摘するわけでもなかった。ただ見た。それだけの間だった。アシュリーはそれに気づいたが、特に何かを感じる前に、視線はすでに動いていた。


 シエルは「私も食べていいですか」とすでに屋台の主人に話しかけていた。主人が笑いながら一枚焼いてやっていた。シエルが受け取って「熱い熱い」と言いながら食べていた。その声が通りに混じった。


 夕暮れの通りに煙が流れていた。三人は少しの間そこに立っていた。どこかへ行く必要もなかった。急ぐ用事もなかった。屋台の煙が目に染みた。アシュリーは少し目を細めた。空が橙から赤に変わっていた。宿の灯りが増えていた。人の声が遠くで混じり合っていた。


 翌朝、旅は続いた。景色が変わり始めていた。

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