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第67話:世界の「全自動・バグ取りメンテナンス」と、創造主の置き手紙

「ポメ・トリミング・タワー」によって整えられたモフモフの遊歩道を進み、一行はついに『世界のバックヤード』の最深部、真っ白な空間にポツンと置かれた「一台の古びたデスク」の前にたどり着いた。

そこは世界のすべての事象を管理する、いわば「神の作業机」。

しかし、机の上は飲みかけのコーヒー(のような魔力の塊)や、書きかけの魔法陣で散らかり放題だった。


「ゼノス様、見てください。机の上にメモが残っていますわ」


ミーシャが埃を払い、一枚の羊皮紙を読み上げる。


>

『世界の構築、だいたい終わったけど、細かい調整(バグ取り)が面倒になったのであとは任せた。特に“未開の大地”のあたりは重力設定ミスってるかも。お詫びに、一番いいハンマーの予備を置いておくね。 ― 創造主より』

>


「……丸投げにもほどがあるね、神様」


俺は苦笑いしながら、机の横に立てかけられていた「神の予備ハンマー」を手に取った。それは俺が愛用してきたハンマーの原型とも言える、究極の質素さを極めた道具だった。


「パパ、この机、ガタガタしてるよ。直してあげて?」


ステラが机の脚を指差す。

見れば、世界の基礎を支える大事なデスクの脚に、折りたたんだ「未完成の銀河」が挟まってバランスを取っている始末だ。


「よし、ステラ。神様がサボった分まで、俺がこの世界を『全自動で完璧に動く』ようにリフォームしてあげよう」


俺は「創造主の飲み残し(原初の雫)」、机の引き出しにあった「書き損じの運命(可能性の紙片)」、そして俺自身の「今日まで積み上げてきた旅の記憶」を、神のハンマーで打ち合わせた。


「トントン、トトントン……!」


今回の槌音は、未完成ルーム全体に響き渡り、空中の設計図が次々と鮮やかな色彩で塗りつぶされていく。


【スキル:世界全土修復・自動最適化グランド・メンテナンス発動】

【神話級システム:『全自動・世界運営OS「きずな2.0」』】


それは道具ではない。

この世界そのものに組み込まれる、新しい「ことわり」だ。

重力の乱れは心地よい微風に変えられ、未完成だった山々には豊かな緑が吹き込まれる。

そして、人々の間にあった「不和」や「不便」というバグが、ゼノスの作った道具たちのネットワークを通じて、自動で解決される仕組みが構築されていく。


「……ゼノス様、空が……世界が、呼吸を始めました。これまで以上に、深く、優しく」


ミーシャが空を見上げる。バックヤードの真っ白な空間は、今や美しい「世界のコントロールセンター」へと生まれ変わっていた。



その頃、地上の「四魔王領」では。


「な、なんだ!? 我が領地の火山の煙が、勝手に『不純物を除去する全自動フィルター』を通って綺麗になっているぞ!」(南の魔王レオン)


「我が地の極寒の吹雪も、勝手に『魔力発電』に変換され、民の家の暖炉を温めている……。ゼノス殿、貴殿はついに、この星そのものを『全自動の楽園』にされたのだな……」(北のガストフ)


アステリオスのパン屋では、オーブンが勝手に「今日一番お腹を空かせている人」を察知して、パンの焼き上がり時間を調整し始めていた。


「ふぅ……。これで神様がいつ戻ってきても、怒られないくらいの出来栄えかな」


俺がハンマーを置くと、ステラが嬉しそうに俺の足元に抱きついてきた。


「パパ、すごーい! 世界が、ピカピカだよ!」


『――主よ。これで我の仕事も、主と家族を守るだけになったというわけだな。……まあ、このポメの姿も、移動用クッションとしては悪くない』


ウル(中型ポメサイズ)が満足げに鼻を鳴らす。


「さあ、帰ろうか。俺たちの家、ドーム・シティのみんなが待っている場所に」

「はい、ゼノス様。……いえ、これからは『世界の管理人さん』とお呼びしたほうがいいでしょうか?」

「ははは、そんな大層なものじゃないよ。俺はただの、お節介な呪具師さ」


光の門を逆方向にくぐり、俺たちは懐かしい「地上の景色」へとゆっくりと降りていく。

追放されたあの日、絶望の中で始まった旅は、世界そのものを「全自動の幸せ」で満たすという、前代未聞のスローライフ神話として完結しようとしていた。

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