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第66話:創造神の「全自動・未完成ルーム」と、巨大すぎるポメの山

光の門をくぐり抜けた先、そこに広がっていたのは「空」も「大地」もない、不思議な空間だった。

至る所に設計図のような光の線が走り、巨大な歯車が中途半端な形で静止している。

ここは、神々がこの世界を創る際、あまりの広さに途中で飽きて放置したという『世界のバックヤード』――通称「未完成ルーム」だった。


「ゼノス様、見てください。あちらの山は半分しか色が付いていませんし、あそこの川は途中で滝になって虚空に消えていますわ……」


ミーシャが呆気にとられたように周囲を見渡す。ステラも「パパ、パパ、お花が『しかく』だよ!」と、テクスチャが貼られていない立方体の花を不思議そうに指差している。


「なるほど、神様も意外とズボラなんだね。……おや、ウルさん? そっちは危ないよ」


俺の言葉が届くより早く、好奇心旺盛なポメ姿のウル(ウルちゃん)が、空間の隅に転がっていた「神の毛玉(原初素材の余り)」に鼻先で触れてしまった。


『――む? ぬおおおっ!? な、なんだ、この内側から溢れ出す圧倒的な「ボリューム」は……っ!』


シュゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!


「神の毛玉」が持つ爆発的な創造エネルギーを取り込んでしまったウル。

その体は、風船のように膨らみ、みるみるうちに巨大化していく。

だが、単に巨大化するのではない。ポメ特有の「毛並み」だけが指数関数的に増殖し、数秒後には旅路号の行く手を完全に塞ぐ、高さ数百メートルの「動くモフモフの山」へと変貌してしまった。


「……ゼノス様、これでは先に進めません。しかも、ウルさんが気持ちよさそうに寝息を立てるたびに、周囲の未完成な山々がモフモフに押し潰されていきます!」


『――ふがっ……むにゃ……。主よ、我……もはや、一歩も動けぬ……。だが、この包容力……悪くない……』


「ウルさん、それじゃ困るよ。よし、大きくなりすぎた『ボリューム』を、実用的な形に再構成してあげよう」


俺は工房から、ステラが食べていた「銀河わたあめの棒(芯材)」、未完成ルームに落ちていた「色の付いていない画材」、そして先ほどの『暁のキッチン』で作った「とろけるバターの残り」を取り出した。


「トントン、と……」


今回の槌音は、巨大なドラムを叩くように深く、それでいてリズムは軽やかに響く。


【スキル:形態安定・質量最適化ボリューム・リシェイプ発動】

【神話級アイテム:『全自動・神域モフモフ・シェイパー「ポメ・トリミング・タワー」』】


それは、巨大なウルの周囲に展開された、光り輝く「全自動バリカン&コーム」の集合体だ。

ただ刈るのではない。増えすぎたウルの神性エネルギーを、すべて「居住可能な空間」へと編み込んでいく。


「さあ、ウルさん。一気にサッパリさせるよ」


シュバババババッ!!


光の刃が空を舞い、ウルの余剰な毛が、瞬く間に美しい「雲の上の遊歩道」や「モフモフの展望台」へと形を変えていく。そして、ウルの本体は……。


「わあ! ウルちゃん、ちょうどいい大きさになった!」


ステラが駆け寄る。

そこには、体長三メートルほどの、ちょうど「家族全員で乗れる高級ソファ」のようなサイズの、最高級に整えられたウルがいた。



その頃、地上の「エルフレードの塔」では。

『絆くん』が届けてくれた「ウルの抜け毛(神性繊維)」を使って、アステリオスが新しい寝具を作っていた。


「……これだ。この布団で寝れば、どんなに厳しい冬も、神の温もりに包まれて乗り越えられる。……ゼノス様、あなたはついに、世界の『寒さ』まで全自動で解決してしまわれたのですね……」


四魔王たちも、届いた抜け毛をマントに仕込み、「見てくれ、我の威厳が三割増しだ!」とモフモフの競い合いを始めていた。


「ふぅ……。道も出来たし、ウルさんも男前になったね」


俺は、新しく出来た「ウルの毛並みの遊歩道」を歩きながら、未完成ルームのさらに奥を見据えた。

そこには、神々が最後に残したと言われる、この世界の『真の完成図』が眠っているはずだ。


「ゼノス様。……未完成だからこそ、あなたの道具で、世界はもっと素敵に塗り替えられていくのですね」


ミーシャの言葉に頷き、俺たちは進む。

神の放置した空間を「極上のリゾート」に作り変えた俺たちの旅は、ついに世界の創造主さえも驚かせる終着点へと近づいていた。

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