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第60話:神代の「全自動・写し身(コピー)機」と、ポメたちの集会

ピカピカのフカフカになった一行は、ついに未開の大地の北限、万年雪とクリスタルの樹氷がそびえ立つ『鏡像の氷原』へと足を踏み入れた。

ここは、空間そのものが鏡のような性質を持っており、訪れた者の「姿」や「能力」を反射して、実体のない幻影を作り出す不思議な領域だ。


「パパ! あそこにもウルちゃんがいる! あっち

にも!」


ステラが指差す先、氷の柱の向こう側に、真っ白なポメラニアン姿のウルが何匹も歩いている。本物のウル(ポメ姿)は、「我はここにおるわ!」と尻尾を振って困惑気味だ。


「ゼノス様、この地は少し危険です。幻影たちが実体を持とうとして、私たちの魔力を吸い取ろうとしています。特にステラちゃんやウルのような強大な存在は、鏡像の影響を受けやすい……」


ミーシャが女神の衣を翻し、警戒を強める。確かに、鏡に映った自分たちが少しずつ「独り歩き」を始めようとしていた。


「なるほど、自分のコピーに魔力を奪われるのか。……だったら、魔力を奪われる前に、こっちで『完璧な身代わり』を全自動で作っちゃえばいいんだね」


俺は工房の棚から、かつて教皇庁が聖遺物の複製に使おうとして失敗した「真実を拒む銀の鱗」、北の魔王ガストフの「氷点下の溜息ためいき」、そして先ほどの洗濯で出た「ウルの究極にフカフカな抜け毛」をひと束取り出した。


「トントン、と……」


今回の槌音は、氷に反射して何重にも重なり、オーケストラのような壮大な響きとなって原野に広がった。


【スキル:存在複製・因果分身パーフェクト・コピー発動】

【神話級アイテム:『全自動・写しコピー機「ポメ・ポメ・パニック」』】


それは、大きなカメラのような形をした呪具だ。

レンズを通した対象の「可愛さ」と「質感」だけを完璧に抽出し、実体のあるぬいぐるみのような分身を無限に生成する機能を持つ。


「よし、ウルさん。ちょっと一枚撮らせてね。……はい、チーズ!」


カシャッ! という音と共に、洗濯したての最高にフカフカなウルのコピーが、ポコポコと機械から飛び出してきた。


「わんわん!(ポメ語:我がいっぱいだ!)」


本物のウルが放つ威圧感や神性魔力は一切持たず、ただただ「柔らかくて、温かくて、愛くるしい」という属性だけに特化した『ポメ・コピー』たち。彼らが氷原を埋め尽くすと、鏡像の性質を持つ空間が混乱し始めた。


「……すごいです、ゼノス様。空間が『どれが本物か』を判別できなくなって、魔力の吸収が完全に止まりました」


それどころか、あまりの可愛さに空間の歪みそのものが癒やされ、殺伐とした氷の原野が、瞬く間に「巨大なポメラニアンの楽園」へと作り変えられてしまった。



その頃、地上の「ドーム・シティ」では。


『絆くん』が運んできたお土産――ゼノスが試作した「全自動・ポメ分身」たちが、街の広場を埋め尽くしていた。


「な、なんだこのパラダイスは!? 触っても触っても、ポメラニアンが湧いてくるぞ!」(南の魔王レオン)

「うむ……。この毛並み、この弾力……。会議をしている場合ではない。全軍、ブラッシングの準備だ!」(北のガストフ)


魔王たちは、あまりの癒やしに戦意を完全に喪失し、こぞってポメたちを抱きしめていた。アステリオスもまた、パン屋の看板犬として数匹を雇い、街全体が「ポメ色の多幸感」に包まれていた。


「パパ、ポメちゃん、いーっぱい!」


ステラは、自分より大きなポメ・コピーたちの背中を跳ね回り、転がって笑っている。本物のウルも、自分にそっくりな分身たちに囲まれて、まんざらでもない様子で鼻を鳴らした。


「ふぅ……。どんなに厳しい環境でも、工夫次第で遊び場に変えられる。それが道具のいいところだよね」


俺は、氷の柱を削って作った「全自動・冷やし甘酒サーバー」から、家族分の一杯を注ぎ出した。

極寒の地を、世界一温かな場所に変えた俺たちの旅は、数え切れないほどの「フカフカな仲間」と共に、さらに北の深淵へと進んでいく。


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