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第55話:星の記憶が眠る湖と、究極の「全自動・想い出記録魔鏡」

聖獣ウルの背に揺られながら、俺たちは未開の大地のさらに深淵、空と大地の境界が曖昧になるほどの静寂に包まれた『星の記憶が眠るメモリアル・レイク』へと到着した。

そこは、湖面が鏡のように透き通り、星が生まれてから今日までのすべての出来事が「光の断片」として水底に沈んでいると言われる神域だ。


「ゼノス様、見てください……。湖の中に、私たちの旅の軌跡が映っています」


ミーシャがステラを抱きかかえ、湖面を覗き込む。そこには、追放されたあの日、二人で食べた最初の炊き出しの湯気から、四魔王との決戦、そして先日の星の修復まで、すべての「大切な一瞬」が煌めいていた。


「パパ、これ、なあに?」


ステラが小さな指で湖面に触れると、そこから光の粒子が飛び出し、過去の映像が立体的に浮かび上がる。だが、星の記憶は膨大だ。整理されずに溢れ出す記憶の奔流は、幼いステラにとって少し刺激が強すぎた。


「よしよし、ステラ。過去はただ眺めるものじゃなく、これからの君を支える『力』に変えていこうね。……よし、ここに溜まった膨大な記憶を、家族みんなで楽しめる『物語』に変える道具を作ろう」


俺は湖の底に沈んでいた「古の神々が落とした水晶の涙」、聖獣ウルが脱皮した際に残した「銀のひづめの欠片」、そして『絆くん』が運んできたアステリオスの「想い出が詰まった香ばしいパンの耳」を取り出した。


「トントン、と……」


今回の槌音は、湖の波紋と共鳴するように、静かに、しかしどこまでも深く響き渡った。


【スキル:記憶定着・思念投影メモリー・アーカイブ発動】

【神話級アイテム:『全自動・想い出記録魔鏡「あしあと・シアター」』】


それは、旅路号のリビングに設置された、一面の壁ほどもある巨大な魔導スクリーンだ。これには、触れた者の記憶から「最も心温まる瞬間」を自動で抽出し、最高の演出を加えて上映する機能がある。


「さあ、上映会を始めよう」


俺がスイッチを入れると、リビングの照明がゆっくりと落ち、湖の記憶が鮮やかな映像となって流れ出した。

そこには、ゼノスが道具を作る時の真剣な横顔、ミーシャが初めて美味しいお茶を飲んで微笑んだ瞬間、魔王たちが慣れない手つきでステラの祝い品を作っている舞台裏までが、ユーモアたっぷりに編集されていた。


「あはは! レオン叔父ちゃま、指を火傷してる!」


ステラが画面を指差して笑う。彼女の笑い声に合わせて、湖から新しい光が生まれ、魔鏡の中に吸い込まれていく。過去の記憶が、今の笑顔によって「新しい輝き」へと書き換えられていくのだ。



一方、その頃。


地上の「エルフレードの塔」では、四魔王たちが集まって、ゼノスから届いた『絆くん』の返信を待っていた。


「……ん? 何だ、この温かい感覚は……」(南の魔王レオン)

「ああ。まるで、遠くにいるゼノス殿やステラ姫と一緒に、同じ食卓を囲んでいるような……そんな不思議な充足感だ」(北のガストフ)


魔鏡『あしあと・シアター』の機能は、次元を超えて「想い」を繋ぐ。離れていても、同じ映像を共有し、笑い合える。その「繋がっている実感」こそが、ゼノスがみんなに贈りたかった最大の利便性だった。



「ゼノス様……。道具は、不便を解決するだけではなく、こうして『孤独』を消すためにもあるのですね」


ミーシャが俺の肩に頭を乗せ、穏やかな声で囁く。


「そうだね。技術がどれだけ進んでも、最後に残るのは『誰と一緒にいたいか』っていうシンプルな気持ちだけなんだ」


湖のほとり、静かな夜。

俺たちは、過去の想い出をさかなに、未来の冒険について語り合った。

聖獣ウルも、魔鏡から流れる自分の「勇猛な過去」の映像を少し照れくさそうに見つめながら、穏やかに鼻を鳴らした。

星の記憶を「家族の記録」へと書き換えた俺たちの旅は、さらなる絆の深まりと共に、明日へと続いていく。

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