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第51話:深淵の「全自動・星見の望遠鏡」と、消えゆく伝説の再会

未開の大地でのキャンプは、地上の喧騒を忘れさせるほどに穏やかだった。だが、超次元ポスト『絆くん』が運んできたのは、温かな便りだけではなかった。

束になって届いた手紙の最後に、一通だけ、差出人不明の古びた羊皮紙が混じっていた。そこには、かつてゼノスが王国にいた頃、唯一その才能を正当に評価し、影ながら守ってくれていた「先代の宮廷魔術師長」の名前が記されていた。


『ゼノス君……。君がこの地を離れ、神域にまで手を伸ばしたことは聞き及んでいる。だが、この星の裏側には、まだ君でも知らない「過去の遺物」が眠っている。……私の命は、もう長くはない。最後にもう一度だけ、君が作る「希望」を見せてはくれないか』


「……先生。あの頑固で、誰よりも道具を愛していた人が、弱音を吐くなんて」


ゼノスは目を細め、遥か地上の、さらに辺境にある「隠居の塔」へと思いを馳せた。ミーシャが心配そうに隣に座り、ゼノスの手をそっと握る。


「ゼノス様、会いに行きましょう。この『悠久の旅路号』なら、世界の裏側だって数時間です。……大切な人に、お別れではなく『感謝』を届けるために」

「……そうだね、ミーシャ。でも、ただ会いに行くだけじゃ足りない。先生が一番見たがっていたものを、俺が今ここで形にするよ」


ゼノスは、未開の大地でしか採れない『透光の岩石』、星辰神の残り香が宿る『虚空の砂』、そしてミーシャの指先から溢れる『女神の涙』を素材として選び取った。


「トントン、と……」


槌の音は、かつてないほどに低く、重厚に響く。それは過去への恩返しであり、未来への指針を示す響きだった。


【スキル:時空遠視・概念投影コスミック・オブザーバー発動】

【神話級アイテム:『全自動・星見の望遠鏡「万華鏡カレイドスコープ」』】


それは、巨大なレンズが幾重にも重なり、宇宙の果てから過去の記憶までをも映し出す、幻想的な望遠鏡だった。これには、見る者の「最も心残りな過去」を、最も美しい「肯定された物語」へと書き換えて映し出す機能が備わっている。


「よし、ミーシャ。先生の塔へ向かおう」


『悠久の旅路号』が次元の壁を突き抜け、数時間後には、王国の辺境にある崩れかけた古い塔の屋上に降り立った。

そこには、ベッドに横たわり、静かに息を引き取ろうとしていた先代魔術師長・エルフレードの姿があった。


「……ゼノス、か……? まさか、本当に……。君の気配は、もはや……神そのものだな……」

「先生、間に合ってよかったです。……これを見てください。あなたが一生をかけて追い求めた『世界の真理』の、その先です」


ゼノスが設置した望遠鏡を、エルフレードが震える手で覗き込む。

そこには、彼が若き日に失敗し、後悔し続けていた魔法の研究が、ゼノスの道具によって完成され、世界を救う美しい光となっている光景が広がっていた。


「……おお……。私の失敗は、無駄ではなかったのだな……。君という、最高の傑作を世に送り出すための……必要な過程だったのだ……」


エルフレードの目に、大粒の涙が浮かぶ。

その時、塔の階下から騒がしい足音が聞こえてきた。現れたのは、元・王太子の軍服を脱ぎ捨て、エプロン姿で駆けつけたアステリオスだった。


「ゼノス様! 先生の危篤を聞いて、最高の『安らぎのパン』を焼いて持ってきたのだが……。な、なぜここに!? それに、その神々しい道具は……!」

「アステリオス、君も来たのか。ちょうどいい。先生に、君が作ったパンを食べさせてあげてくれ。俺の道具と、君のパン。……これが、先生への最後の授業の報告だよ」


かつての傲慢な王太子は、今や純粋な敬意を持ってゼノスの前に膝をついた。

アステリオスが差し出したパンを一口含んだエルフレードは、満足げに微笑み、ゼノスとミーシャ、そしてかつての教え子たちに見守られながら、穏やかにその生涯を閉じた。


「……ゼノス様。先生は今、星になって、私たちの旅路を見守ってくれていますね」


ミーシャが空を見上げる。望遠鏡のレンズの先、新しい星が一つ、ひときわ明るく瞬いた。


「ああ。……さあ、アステリオス。悲しむことはない。先生が遺したこの塔を、君がリフォームして『最高のパン修行場』にするといい。……道具は、俺が置いていくから」


ゼノスは、塔全体を「全自動・パン工房」へと作り変える呪具を設置し、再び未開の大地へと旅立つ準備を始めた。

過去の恩師との別れを経て、各キャラクターの絆はより深く、より揺るぎないものへと成長していく。

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