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第50話:遠い空からの「全自動・超次元ポスト」と、王太子の初恋パン

世界の果て、未開の大地。

そこは、物理法則すらも自由奔放に振る舞う不思議な領域だった。空には二つの月が浮かび、川には液体状の魔力が歌いながら流れている。


「ゼノス様、見てください! このお花、私が近づくと、私の気分に合わせて色を変えて踊るんです」


女神ミーシャが楽しそうに笑うと、極彩色の花々が黄金色に輝き、軽やかな音色を奏でた。

俺たちは今、新調したキャンピング・テラス『悠久の旅路号』の横に、全自動で展開される「概念折り畳み式ガゼボ」を設置し、しばしの休息をとっていた。


「平和だね、ミーシャ。……でも、俺たちがこうしてのんびりしていられるのも、地上でみんなが頑張ってくれているおかげだ」


俺は工房の隅から、教皇庁が隠し持っていた「異界の声を聴く貝殻」と、東の魔王シルフの「最速の風の尾羽」、そしてミーシャの「女神としての慈愛の輝き」を取り出した。


「トントン、と」


【スキル:遠距離因果接続・概念配達ハイパー・メール・サービス発動】

【神話級アイテム:『全自動・超次元ポスト「きずなくん」』】


それは、銀翼の翼が生えた小さなポストだ。これがあれば、世界の果てにいようと、次元を隔てていようと、大切な人たちとの「想い」をやり取りできる。


「よし、絆くん。まずは地上の『ドーム・シティ』へ行って、みんなの様子を見てきてくれるかな?」

「ポッポ!(お任せください、マスター!)」


絆くんが光の速さで空の彼方へ消えていく。



それから数時間後。



絆くんがパンパンに膨らんだカバンを抱えて戻ってきた。中には、地上のみんなからの「今」が詰まった手紙と贈り物が溢れていた。

まず最初の手紙は、元・傲慢王太子、現在は「全自動・クロワッサン畑」を管理するアステリオスからだった。


『ゼノス様。あなたが旅立たれた後、この地では不思議なことが起きています。私が植えたパンの木に、見たこともない「ハート型のジャムパン」が実ったのです。……実は、隣町から移住してきた元・宮廷侍女の女性にそのパンを贈ったところ、彼女が涙を流して喜んでくれました。……誰かのために汗を流し、その成果で誰かを笑顔にする。王座にいた頃には決して味わえなかった、胸の熱くなる想いです。いつかあなたが帰られた時、最高の「恋するパン」を食べていただけるよう、精進いたします』


「……ふふ、あの王太子様が『恋』ですか。ゼノス様、私たちの作った道具が、彼に新しい心を与えたのですね」


ミーシャが嬉しそうに手紙を胸に抱く。


続いて届いたのは、四魔王たちからの共同映像(ゼノス製・全自動魔鏡)だった。


『ゼノス殿! 見てくれ、俺の温泉街は今日も大盛況だ!』(南のレオン:背景で魔物たちがバスタオルを巻いてくつろいでいる)


『北のスキー場では、新しい競技「全自動・ソリ滑り」が流行っておる。貴殿が残したポメラニアン型ドローンたちが、審判として厳格にジャッジしておるぞ』(北のガストフ)


映像の最後には、魔王たちが慣れない手つきで書いた「早く帰ってこいよ、相棒!」という大きな横断幕が映し出されていた。


「みんな、キャラが濃くなりすぎじゃないかな……」


俺は苦笑しつつも、温かい気持ちになった。

俺が作った道具は、ただ便利なだけじゃない。離れていても、誰かと誰かを繋ぎ、それぞれの場所で彼らを「主人公」に変えていく。


「さて、ミーシャ。みんなにお返事の『お土産』を作ろうか。この未開の地で採れた、食べると一晩中楽しい夢が見られる『虹色の実』を、絆くんに託そう」

「はい、ゼノス様! きっとみんな、驚いて喜んでくれますね」


未開の地の静寂の中で、俺たちは遠い友たちの顔を思い浮かべながら、再びトントンと槌を振るう。

追放された呪具師と女神の旅路は、過去の絆をより強く、より色鮮やかに塗り替えながら、さらなる未知の深淵へと続いていく。


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