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第43話:魔王領の「ビフォーアフター」と、究極の「全自動・環境改造トラクター」

「案内くん」ドローンによる整理整頓が進み、理想郷『ドーム・シティ』はもはや一つの完成された「天国」となっていた。だが、平和になればなるほど、新たな問題が発生する。


「ゼノス様……。我が領地の部下たちが、帰りたがりません。皆、『ゼノス様の街のトイレの方が、魔王城の玉座より居心地が良い』と言って、勝手に住民票を移そうとしています」


北の魔王ガストフが、困り果てた顔でお茶のおかわりを求めてきた。見れば、南のレオンも、東のシルフも、西のクロノスも、一様に自分の領地の「過疎化」に頭を抱えている。


「このままでは、我らの領地はただの『魔物が住むだけの荒野』になってしまいます。ゼノス殿……厚かましい願いとは承知しているが、我らの国も……その、貴殿の手で『マシ』にしてはもらえないだろうか?」


魔王たちが一斉に頭を下げる。かつて世界を恐怖させた四魔王が、一人の呪具師に「リフォーム」を依頼する。歴史上、これほどシュールな光景はないだろう。


「……なるほど。みんなが自分の国に帰りたくなるくらい、住みやすくすればいいんだね。よし、素材パーツはここにあるものを使おう」


俺は工房から、教皇庁が隠し持っていた「聖地を浄化する黄金の鐘」と、四魔王が持ってきた各領地の「極端な気候の結晶」、そして俺が昔、王国の荒地を開拓するために自作して、当時の上司に「効率が良すぎて不気味だ」と捨てられた「ボロボロのくわ」を取り出した。


「トントン、と」


【スキル:環境再編・概念耕作ワールド・リフォーム発動】

【作成完了:神話級アイテム『全自動・環境改造トラクター「国造り(くにづくり)くん」』】


それは、巨大な蒸気機関車のような力強さと、ポメラニアンのような愛らしさを併せ持つ、不思議な大型車両だった。


「よし。ガストフ、レオン。こいつに君たちの領地の『土』を少しだけ入れてくれ」


俺がトラクターを起動し、四魔王領へ向けて発進させると、トラクターは空間を飛び越え、それぞれの領地を猛烈な勢いで駆け抜け始めた。

南の「灼熱魔領」では、溢れ出すマグマを吸い込み、それを「全自動・床暖房付きの温泉街」へと再編していく。


北の「氷獄魔領」では、絶望的な猛吹雪を「全自動・フワフワなかき氷機」と「常に最高の雪質を保つスキーリゾート」へと変換していく。

東の「大嵐魔領」は「風力発電パラダイス」に、西の「静寂魔領」は「熟睡できる癒しの森」へと塗り替えられた。



「な……なんだこれは……!? 我が国の『地獄のような熱さ』が、心地よい『サウナ』になっている!」



「吹雪が……吹雪が舞い散る桜の花びらのような輝きに……!」


魔王たちは、自分たちの国がわずか数時間で「高級リゾート地」へと変貌を遂げる様子を、モニター(ゼノス製・全自動テレビ)で見て絶叫した。


「よし、これでみんな自分の国に帰りたくなるだろ? 各領地はドーム・シティと『全自動・リニア特急』で繋いでおいたから、週末はこっちに遊びに来ればいい」


「「「「ゼノス様、一生ついていきます!!」」」」


もはや魔王たちは、恐怖の対象ではなく、ゼノスという巨大な「観光チェーン店」の各支店長のような存在になった。



その頃。


環境改造トラクターが通り過ぎる際、ついでに「浄化」の風を受けた王国の旧王都では――。


「……え、何これ。土が金に……いや、土が全部『ふかふかのパン』になってる!?」


自首して農業を始めたアステリオス王太子が、耕していた畑が「全自動・クロワッサン畑」に変わったのを見て腰を抜かしていた。


「私は王だ……! 王がパンを植えてどうする……! ……あ、でも、このパン、泥の味がしない……美味しい……すごく、美味しい……」


かつての傲慢な王太子は、ゼノスが意図せず撒き散らした「豊かさの欠片」によって、ただの「パンが大好きな農夫」へと、強制的に魂を洗浄され始めていた。


「ゼノス様。……世界が、あなたの『趣味の園芸』で埋め尽くされていきますね。……ふふ、次は空の上に『動く城』でも作りませんか? 二人きりで、世界を見下ろしながらお茶をしたいです」


ミーシャが俺の腕に寄り添い、うっとりと空を見上げる。

俺たちのスローライフは、もはや一つの星を「まるごとリフォーム」する段階へと突入していた。


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