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第44話:空飛ぶ「理想の離宮」と、全自動・雲の上のお茶会セット

世界中が「ゼノス・リゾート」と化し、四魔王が支店長のように領地の運営に勤しむ中、ミーシャが漏らした「二人きりで空の上でお茶をしたい」というささやかな願い。

俺はそれを叶えるべく、工房のさらに奥、誰にも見せていない「秘蔵のガラクタ置き場」の扉を開いた。


「ゼノス様、そんな埃を被った『折れた翼の彫像』や、教皇庁がゴミ捨て場に投げていた『壊れた天球儀』で何を作るのですか?」


ミーシャが不思議そうに首を傾げる。だが、俺の目には完成形が見えていた。


「ミーシャ、これはただのゴミじゃない。誰かが『空へ行きたい』と願い、そして挫折した『夢の残骸』だ。これに、東の魔王シルフの『浮遊する魔力の羽』と、西の魔王クロノスの『永遠に沈まない夕日の残光』を掛け合わせれば……」


俺は静かに、しかし流れるような手捌きで「トントン」と叩き始めた。


【スキル:概念飛翔・超次元居住ラピュタ・コンストラクト発動】

【作成完了:神話級アイテム『全自動・浮遊居住離宮「スカイ・ティータイム号」』】


庭に置かれた小さな模型が、淡い光を放ちながら膨れ上がり、音もなく空へと舞い上がった。それは城というよりは、一面のガラス張りと白い大理石で構成された、空に浮かぶ「光のテラス」だった。


「さあ、行こうか。ミーシャ」


俺たちがテラスに足を踏み入れた瞬間、離宮は猛烈な速度で雲を突き抜け、高度一万メートルの「静寂の世界」へと到達した。

だが、そこには凍えるような寒さも、息苦しい薄い空気もない。


「……信じられません。雲が、まるでお菓子の綿あめのように足元に広がっています。風一つ吹かないのに、私たちは今、世界で一番高い場所にいるのですね」


ミーシャが手すりから下を見下ろすと、そこにはリフォームされた四魔王領と、かつての王国が、まるでミニチュアの箱庭のように美しく輝いていた。


「よし。じゃあ、お茶にしよう」


俺はテラスの中央にある「何の変哲もない白いテーブル」のスイッチを入れた。


【機能発動:全自動・神域ティーサービング】


テーブルの上には、太陽の光を直接結晶化させた『サンシャイン・クッキー』と、雲の隙間から採取した純粋な魔力水で淹れた『成層圏ティー』が、完璧なタイミングで並べられた。


「ゼノス様……。私、ずっと一人で、地下の冷たい闇の中にいました。あの頃の私に教えてあげたいです。いつか、太陽に一番近い場所で、こんなに温かいお茶を飲める日が来るんだよって」


ミーシャの瞳に、感動の涙が浮かぶ。

それは、かつて「呪い」として世界から隔離されていた彼女が、ついに「世界の頂点」で肯定された瞬間だった。

その時、離宮の下を、一羽の渡り鳥が通り過ぎた。

その鳥の足には、王国に残された「最後の良識派」からの手紙が結び付けられていた。

内容は、かつての王太子アステリオスが、毎日パンを植えながら「ゼノス、すまなかった……あのクロワッサンは本当に美味いんだ……」と、泣きながら謝罪の言葉を呟いているという報告だった。


「……ふふ。ゼノス様、あの王太子、今度は『クロワッサンに合う究極のバター』を求めて、一日中牛を追いかけているそうですよ」

「あはは、それは楽しそうだ。……ねえミーシャ。世界はもう、俺たちが何もしなくても、勝手に幸せになっていくみたいだね」

「はい。ですから……これからは、もっともっと、二人だけの時間を増やしましょうね」


地上では魔王たちが、空の上では追放された呪具師と呪い姫が。

世界中の誰もが「役割」から解放され、ただ「美味しい」と「幸せ」のために生きる。

俺たちのスローライフは、もはや地上の喧騒すらも遠くへ追いやり、無限に広がる青空のような、終わりのない平穏へとたどり着いた。

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