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012 拒絶

「嫌?」


 サリュウス伯爵は、鼻で嗤いながらガブリエラに尋ねました。


「ええ! わたくしは貴方の様な人間離れした方のご子息とは結婚できませんわ」


 はっきりと拒絶を示したガブリエラに、両親は顔を真っ青にして立ち上がります。


「が、ガブリエラ。なんて失礼なことを言うの」 

「そうだぞ。落ち着きなさい」

「落ち着いてなどいられませんわ。だって、お母様も見ましたでしょう? お茶を足で飲む方なんて、嫌に決まっていますわ!」

「ふっ。ふははははっ。正直な娘だ。案ずるな。次第に見慣れる」


 サリュウス伯爵は、お腹の辺りを手でおさえ、愉しそうに笑いました。しかしその笑い声は不気味で、ガブリエラは軽蔑した瞳で伯爵を睨みつけました。


「ああっ。気色悪い。無理ですわっ。慣れるはずありません!」


 ガブリエラの言葉に、伯爵の笑い声はピタリと止まり、それと共に中庭の空気が張りつめ、緊張感に包まれました。

 ガブリエラもすぐにその事態に気付き、両親へと目で助けを求めました。


「ルロワ伯爵よ。これは精霊を介した契り。破れば末代まで全ての精霊から見放されるであろう」


 サリュウス伯爵の言葉に、両親は震え上がりました。

 ガブリエラは、そんな両親を情けないとばかりに睨むと、瞳をサリュウス伯爵へ向けました。


「ふん。見放されているのは貴方ではありませんこと? その醜い容姿は――」

「ガブリエラっ」


 これ以上、サリュウス伯爵を侮辱する言葉をガブリエラから言わせたくなくて、私は妹の名を強い口調で発しました。


「その方が助けてくださらなければ、お母様も貴女も、今ここに存在することすら出来なかったかもしれないのよ」

「…………」


 ガブリエラは私を憎々しげに睨むと、椅子に腰を下ろし、そのまま黙り込んでしまいました。

 中庭に暫し沈黙が続くと、ルシアンが一歩前へ出ました。


「伯爵。そろそろお時間ではありませんか?」

「そうだな」


 サリュウス伯爵が屋敷を後にしようと立ち上がった時、中庭にもう一人の客人が現れました。

 まだ帰っていなかったレオナルド王子です。

 王子は開口一番に叫びました。


「な、ななななな何だ!? その化け物はっ!」


 ルシアンは頭を抱え、サリュウス伯爵は気にせず門の方へと歩みを始めました。木の根のような足をズリズリと引きずりながら進むその様に、王子は更に顔を青くさせました。


「あ、足が……ひぇ~」

「お、お気を確かにっ!?」


 レオナルド王子はその場に卒倒し、近衛騎士達が支えています。そして、今まで王子に無頓着だった筈のガブリエラが急に王子に駆け寄ると介抱し始めました。

 ルシアンは呟きました。


「成程な。そう出たか」

「どういう意味?」


 ルシアンは何も答えず、ガブリエラを見て口元に笑みを浮かべていました。




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