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 雨降りの音と共に俺は目覚めた。

 小鳥遊はまだ横でぐっすり眠りこけていた。その姿は普段と異なり無邪気さに溢れていた。可愛いと、これは素直に思った。

「小鳥遊、小鳥遊」

 起こすのは本意ではなかったが、しかし俺は彼女に訊かねばならないことがあった。

「……ふわあ」

 あくびをしながら、彼女は体を起こす。そして俺のほうをぼうっと見つめた。

「おはよう、ございます。高城さん」

「小鳥遊、教えてくれ」

「はい?」

「あんたの祖父は今どこにいる?」

「お祖父様ですか? 今はダイニングルームで朝食を取っていると思いますが……」

「ダイニングだな。どこにある?」

「……まさか、お祖父様に会う気ですか」

「ああ」

「やめてください!」

「どうして」

「どうしてもです!」

「ダイニングはこの間フランス料理を食べた場所だな。今から向かう」

 彼女は何か喚いていたが、俺はそれを無視して部屋を出た。

 俺の中には、明確な怒りがあった。

 彼女に対してではない。

 彼女にあんな馬鹿げた『官能演習』とやらを強要した、彼女の祖父に対してだ。

 一言言ってやらなければ、気が済まない。


 食堂の扉を力任せに開ける。

 そこには多数の人がいたが、祖父が誰なのかはすぐにわかった。明らかにオーラの異なる存在が、テーブルの端についていた。

 俺はつかつかと彼の元へ行く。とっさのことで、他の人達は完全に固まっていた。

「あんたが小鳥遊操の祖父か」

「……君は確か、操の恋人の」

「恋人? 何言ってるんだ。そんなことより今は官能演習の話だ。あんなものを一六歳の孫娘にけしかけるなんて、どうかしてるだろ! あいつ、泣いてたんだぞ! 馬鹿馬鹿しい決まりは即刻やめて……」

「ちょっとまっとくれ。官能演習とは何のことだ?」

「しらばっくれるな! あんたが決めたしきたりだろう!」

「いや、本当に知らんのだよ。官能演習? 初めて聞いた単語だ」

「……」

 嘘を言っているようには見えなかった。大体、ここで嘘をつく理由がない。

 迷っている俺は、唐突にぐいと体を掴まれた。

「何をやっているんだおまえ!」

「何だよ、離せよ」

 しかしもちろん離してはくれなかった。

 俺はそのまま屋敷の外へつまみ出された。傘すら渡されなかった。大降りの中、俺はうつむいて帰った。

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