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第53話 「よし、30秒もあれば十分です」

あらすじ

全ロボット出撃(刃雷除く)

 全長300mを超える超巨大ロボット改人モンスターに対して5機のスーパーロボットが対峙している。空には3機の戦闘機が旋回している。

 今まで戦ってきたスーパーロボット(刃雷じんらい除く)が味方にいるだけで負ける気がしない。

 1機1機の実力はこちらがよく知っている。


「それでは行きましょう! 全員、総攻撃です!」


 ノリノリで叫ぶ統一の声にロボット愛好会のロボットたちが動き出す。

 激震げきしんは小槌を振り下ろし、さらに改人の姿勢を崩し、火車かぐるまはプラズマ化するほどの熱線を、氷牙ひょうがは全てを凍らせる極低温で応戦する。

 ――だが、改人の『アマノイワト』の前には無力。足場を崩されても揺れる程度で、熱線と冷気は虹の壁に阻まれてしまった。


「おい、統一。『アマノイワト』は全てを分解、吸収するんだよな」

「その通りです」

「冷気なら効くんじゃないのか?」

「どうやら、急激な気温低下もエネルギーの一種として反応しているのではないだろうか。だから、あの虹の壁の前では無意味」


 統一は冷静に分析して、すました声で答える。


「だが、攻撃を与え続ければもしかしたら――もしかしたりするかもしれない」


 やけに曖昧な声に期待していられないことが理解できた。

 こちらも攻撃に転じたいところだが、武器がないのではただの足手まといだ。

 やる気だけが空回りして焦ってきてしまう。


「ボウエイオー」


 聞き覚えのある声が聞こえてくる。


「その声、氷牙のパイロット!」

「そうだ。ともに戦えることをうれしく思う」


 以前、氷牙のパイロットとは問答をしたことがあった。

 唯一といっていいほど、まともな考えの持ち主であることを知っている。


「武器がないのならこいつを使え!」


 氷牙の背中にあった巨大な槍をボウエイオーに向けて投げてよこす。

 その槍は薙刀ではないにしろ、刃の部分が大きく、ボウエイグレイブに近い取り回しができるだろう。


「なんだよ。格好いいじゃないか」

「ふっ……そっちは格好悪くなったな」


 溶鉱炉で一部が溶けたボウエイオーに対して冗談交じりに答えてくる。

 こういうやり取りをしたかったんだよ。


「何をいい雰囲気になっているんだ、大吾くん! そういうやり取りは私にしていただけないか!」


 統一がかまってちゃん全開でこちらに絡んでくる。本当に扱いに困るやつだ。


「だったら、弱点の2つや3つ、4つや5つぐらい教えろ!」

「それは無理です! なぜなら、『アマノイワト』は無双が作り出した完全なシステムですからね!」


 なんでそこでお前が威張るんだよ。いや、ただの姉を自慢したいだけの弟だな。


「ですが、この改人の『アマノイワト』は不完全です。あまりに大きくなりすぎて自身を動かすことしかできない。足が異常なほど細いのは、浮かびあがれないための苦肉の策! 何か突破口があるはずです」


 その突破口を知りたかったのだが。

 やはり使えない。

 そんなやり取りをしている間にもロボットは攻撃を続け、戦闘機はありったけのミサイルをぶち込んでいる。

 改人は巨大な手であたりかまわず破壊していく。


「じゃあ、その完全な『アマノイワト』でなんとかしろ!」

「無理です。半壊した黒曜こくようでは十全に機能を発揮できません」

「あー! 使えねぇ!」


 氷牙から託された槍は無駄に消費するわけにはいかない。

 ボウエイグレイブと同じようなことになったら、元の木阿弥だ。


「よし! 私と火車、氷牙で攻撃を一点に集中させます! もしかしたら、虹の壁を突破できるかもしれません。ボウエイオーはそこに槍を投げ入れてみてください!」


 バラバラに攻撃していた3機が一か所に集まってくる。

 黒曜を頂点として、右は火車、左は氷牙と三角形を作り上げる。そして、その中心にボウエイオーを動かした。ここで軽くはぶられる激震。


「行きますよ! いち、にの、さん!」


 黒曜の虹色のビーム、火車の白く白熱した熱線、氷牙の極低温の輝きが一転に集中して、激しい光を放つ。


「今だ!」


 集中する攻撃に対して虹色の壁が見えなくなる。

 そこに全力で槍を投げ飛ばす。

 槍は改人に向けて飛んでいき、虹の壁を――貫けない。

 ボウエイグレイブと同じ運命をたどってしまった。


「まあ、槍が刺さったとしても、改人を倒せないわけですからね」

「わかっていてもそういう事は言うなよ」


 進退窮まったこの状況、何か突破する方法はないものか。

 改人の手が火車と氷牙のいる一帯を薙ぎ払う。

 その跡には2体のロボットの影はない。


「!」

「大丈夫です。2機は健在です」


 胸をなでおろし、改人をにらみつける。

 その巨大はこちらをあざ笑うかのように、ゆっくりと前進していく。

 全ロボットの力があっても、無力だと言わんばかりだ。


「雪絵さん! 何か策は?」

『今は無理かなー。ボウエイビームもあの壁は抜けないですしー、本当に最後の手段ですからねー』


 こんなことをしている間に、改人は暴れ続ける。そのスピードは徐々にだが上がってきている。

 両腕を振るう猛威はさらに凶悪になっていく。

 ビルをなぎ倒し、分解し、吸収している。『アマノイワト』の特性上、エネルギー切れはありえない。

 何をしても改人の破壊は必須事項だ。

 何か逆転の一手を――


「黒いボウエイオーはどうしました? もはや温存する必要はないのではないですか」


 さも当然な統一の声が聞こえた。

 今までその話題が出なかったのが、不思議なくらいだった。


「……天地博士、聞いているんでしょう?」

『なに? いきなり話題振らないで!』

『え、天地博士もいるのか?』


 天地博士からの通信に愛子が驚いている。どうやら、防衛所ではなく天地博士はあの警察署から何らかの手で通信を行っているようだ。


「『トコヨノクニ』は使えますか?」

『大吾ちゃん! それはあまりにも、危険ですよー』


 雪絵さんが言い分は正しい。

 破棄されろくに整備もされていない。ただでさえ危険な対消滅エンジンを起動したら、日本を巻き込んで爆発なんてことも十分あり得る。


『……』


 天地博士は答えない。


「どれだけの時間、使えますか?」

『……30秒よ』

「根拠は?」

『私が作ったシステムだもの。どんな状況にあっても30秒くらいは稼働するわ』

「よし、30秒もあれば十分です」


 天地博士の回答に少し笑ってしまう。


「本当に博士は行き当たりばったりなことばかり言いますね」

『え? そんなことないよ。いつも計算の上で言ってるからね!?』

「でも、天地博士のそういうところ、好きですよ」


 通信越しでも息をのむ音が聞こえる。


『ちょっと大吾ちゃん! 好きってどういう意味ですかー?』

『おい、大吾! 答えろ!』

『ふふふ、これは私の大勝利のようね!』

『ここは無計画の事を好きって言ってるだけです。勘違いしないでください』


 サンキュー春香。冷静な突っ込み。

 とにかく、騒ぐ一同を無視して『トコヨノクニ』の起動プロセスに移る。

 右のレバー下にある取っ手を握る。そして、右に――回らない。

 溶鉱炉の熱で、歪んでしまったのかもしれない。


「ふんぬー! この、回れ!」


 取っ手に全ての力を込める。左手もレバーから離し、取っ手を握る。

 全力を使い、ガキンという音と共に取っ手が回る。

 あとは、もうひと踏ん張り、今度は思い切り手前に引く!

 ところどころ欠けたディスプレイにさらにノイズが交じり、視界を塞いでくる。


【システム トコヨノクニ】


 赤い文字が表示された。

 コックピットが激しく揺れ始め、壊れた計器は吹き飛びながら限界を迎えたことを知らせる。

 そして、ボウエイオーの手が黒くなったのを確認した。

 ここから30秒。

 やってやるしかない。


「行くぜ、ボウエイオー!」


 調子の悪いロケットを全力で吹かす。そして、一直線に改人へ向かう。

 迎撃するかの如く乱暴に振り回された腕がボウエイオーを襲う。


「大吾くん、何を……?」

「こうすんだよ!」


 ボウエイオーは突進することを止めず突進していく。

 そのさなかに改人の腕が肩に触れた。虹色の壁は効かないとしても、その衝撃がボウエイオーをよろめかせる。

 赤子のように手をばたばたと動かす改人に、対応しきれない。

 よろめいたところを手のひらではたかれる。


「やべぇ!」


 コックピットが激しく揺れたかと思うと、ボウエイオーはビルに突っ込んでいた。


「時間は!? あと、10か?」


 心の中で数えていたカウントが途切れてしまう。もう、時間はない。

 背中のロケットをもう一度全力にして空へと飛び立つと、なりふり構わず一直線で改人へと向かう。

 虹の壁へ突撃と共に虹が割れる。改人を阻むものはなくなり、後は奴を倒すだけだ。


『大吾ちゃん! ボウエイビームよ!』


 雪絵さんの慌てた声が聞こえる。

 だが、まだだ。


「ここが使いどころだろ! スクリュードリルパンチッ!!」


 左を前方に突き出し、先端を激しく回転させる。

 そして、ドリルを突き刺す要領で、ボウエイ―を改人へと穿っていく。

 中心へと向かっていくが、無理をしたボウエイオーの左腕が動かなくなる。

 ディスプレイは真っ黒で何も映さない。きっとここは改人の中。何とか30秒以内でここまでこれたはずだ。

 ここなら、確実に破壊できる!


「ひぃぃぃさぁつぅッ! ボウエェェイィビィィィームゥ!」

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