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第52話 「俺は二次元の女の娘が大好きだ! 三次元の女なんてくそくらえだ!」

あらすじ

ボウエイオー復活

 滑空を駆り、コードネーム改人モンスターへ向かう。

 まだ目標と距離があるはずなのに、その巨大が目に飛び込んでくる。


「おいおい、なんだよありゃ。でかすぎるんじゃねぇか!?」


 今まで相手にしてきたロボット愛好会のスーパーロボットも馬鹿げたサイズで度肝どぎもを抜かれたが、今回はそれ以上の衝撃だ。そそり立つビル群にあっても、群を抜いて飛びぬけている。東京スカイツリーとツーショットを決められそうなほどでかい。

 同じロボットでも大人と赤子ほどのサイズの違いがある。


「これはたまげましたね。冗談だったらよかったのですが……」


 冷静な部類の鈴木も何とコメントしたらいいかわからない様子だ。

 正直、俺も適切なコメントが浮かび上がらねえ。


「なーに。今までやってこれたんだ。今回も大丈夫だって!」

「……」

「……」


 今回こそ、俺も鈴木も岸本を無視する。

 奴に対して口を出そうものなら、隠していた秘密が白日の下にさらされてしまう。それが真実ならいいが、言われない暴露によりゆがんだ嗜好を植え付けられるまでいってしまった。


「なんだよ。今回もかよ。そろそろ許してくれよ」


 岸本は少しいじけたような口調でおどけて見せる。だが、許すわけにはいかない。


「こんな話を聞いたことがある」


 口を閉ざしたはずの鈴木の口から言葉がこぼれた。

 本当に大丈夫なのかと、鈴木機をつい見てしまった。滑空しか視界に入らないため、その表情は窺い知れない。


「同好の士からの情報だが、岸本は写真が載ったお宝をもっていないのだと……」


 写真が載っていない――だと。いや、軽く流してしまいそうだったが、『同好の士』って何の同好なんだ。そちらの方が気になってしまう。


「――そ、それは……」


 岸本はいつのも反応とは違い、かなり言い淀んでいる。

 鈴木が手に入れた情報は『確かな』ものだったようだ。


「岸本! お前、どういうことだ? おっぱい星人じゃねぇのか!?」

「さあ、観念したらどうですか?」

「お、俺は……」


 何か思い悩んでいる。そう感じるが、こちらとしても追及を止めるわけにはいかない。

 これはチームとしての結束が試されているのだ。

 命令とはいえ、いまだかつてないほどバラバラになったチームを組まされている。今回も関係が崩れたらもう再起することはできないだろう。


「まさか、持ってないとか言うんじゃねぇだろうな!」

「持ってるさ! 俺だって男だ!」

「なら、言ってくださいよ」


 岸本は一旦黙ってしまうが、次に大声で自白してきた。


「俺は二次元の女の娘が大好きだ! 三次元の女なんてくそくらえだ!」


 その時、俺と鈴木に衝撃が走る。


「ロリ、ロリ巨乳、ロリ婆、俺っ子から僕っ子、隣のお姉さんから人妻、熟女はもちろん、女騎士に、人外娘、スライム娘だって大好きさ。幼馴染もいいが、転校生も捨てがたい、後輩も嬉しいが先輩も喜ばしい、仕事の後輩も同僚も上司だってみんなまとめて来い。貧乳から巨乳までどんな乳にも貴賎なし。猫耳は当然OK、むしろウェルカム。それだけ俺は……愛している!」

「な、何を……?」

「二次元の女の娘だろ!」


 岸本は思いのたけをぶつけるかの如く、早口でまくし立てていく。さっきの台詞を5秒未満で言い切るほど早い。

 その姿はまさしく漢。


「なんだよ、岸本……言えたじゃねぇか」

「それは……つらかったでしょう」

「お……お前ら……」


 3人の心が重なった瞬間だった。


「な、なんだ。俺はスク水好きがバラされて大変な目にあったし許すつもりはないが、自分を隠す必要がなくなって楽になっちまったところもある」

「そうですね。俺は誤解からとんでもない目に遭わされましたが、今は新しい道を見つけました」


 鈴木、お前は見つけちゃダメだろ。


「みんな……俺は……俺は……」


 今まであった疑心暗鬼はこれ以上ない異体同心となった。

 もう、俺たちチームに怖いものなど何もない。


「行くぜぇ!」

「はい!」

「応!」


 以心伝心、俺たちは名乗りを上げる。


「スク水の好きの宮本こと、スク宮!」

「熟女好き、鈴木!」

「二次元しか愛さない男、岸本!」


 今、俺たちは1つになった。

 絆で結ばれた3人が世界を救うと信じて。




 改人モンスターの体が少し揺れたと感じると、左右から迫りくる巨大な手のひらが一瞬止まったように見えた。


『今よ、大吾ちゃん! ペダルを思いっきり踏んで!』


 とっさに聞こえた通信に意識を引き戻される。

 言われた通りペダルを全力で踏み込んだ。すると、ボウエイオーは急上昇を行い、閉じられる手のひらをぎりぎりで回避することができた。

 攻撃の終わった改人モンスターはまるで拝んでいるかのような姿勢をとっている。少しでも遅ければあの手のひらに収まっていたのだ。


「もしかして……雪絵さん?」


 先ほどの通信の声に聞き覚えがあった。

 いつもすぐ近くでサポートしてくれた仲間の声。



『はーい。オペレータの雪絵ですよー』

『どうだ、大吾。雪絵さんが来てくれたぞ!』

『兄さん、私もいます』

『ついでに私もいる』


 雪絵さんだけじゃない、愛子も春香もセンセイまでいる。

 近くでこちらを応援してくれる。


「でも、雪絵さんは……」

『んー、もう、約束は果たしたしー、次はこっちかなーってー』


 スパイとかはもうどうでもいい。今、ここで仲間としていてくれることは間違いない。

 今は一緒に戦ってくれる。


「よっし!」


 気合を入れなおす。

 空を見上げれば自衛隊の戦闘機が3機飛んでいる。きっとあの隙を作ってくれたのは彼らなのだろう。

 これだけ仲間にいれば改人モンスター相手でも――。


「何かいい手ないですかね?」

『うーん。現状はないかなー』

「ですよねー!」


 戦闘機に攻撃の手が向かわないように、改人モンスターの意識をこちらに向ける程度しかできない。

 先ほどのように挟まれないように気を付けながら、改人モンスターの目の前でウロチョロする。

 戦闘機のミサイルは命中し、爆発しているようだが、ボウエイグレイブと同じように虹の壁に阻まれダメージは入っていない。


「くそっ! このままじゃ……」


 何の手立てもないまま、改人モンスターの気を逸らし続ける。その巨大な腕はスピードがない代わりに、そのサイズでこちらを追い詰めてくる。

 背がビルに当たり、逃げ場を失って動きが止まる。そこに腕が迫ってくる。

 ――が、改人モンスターが目の前で衝撃を受けて少しよろけた。

 その隙をついて難を逃れる。


「ふん。ボウエイオーを助ける側に回るなどと思ってもみなかったわ!」


 改人モンスターの異様に細い足の下にロボットが大きなハンマーを持って立っていた。

 その姿は一度見た覚えがある。


激震げきしん!? 倒したはずじゃ……」


 振り下ろした格好の激震が持っていたのは間違いなく「小槌」。ずんぐりとした丸体形は見間違えることはない。


「久しいな。ボウエイオーのパイロット」

「あんたは、氷牙ひょうがのパイロット!? ってことは」


 激震の後方には氷牙に火車かぐるまの姿がある。

 ロボット愛好会のロボットとして何度も剣を交えてきた。

 だが、すべて破壊したはずでは……


「ロボット愛好会が総出でやって来たのです。この危機にね」


 やけに涼し気な声が聞こえてくる。

 この声にも聞き覚えがある。


「統一に、黒曜こくようか!」

「その通りです。こんな不細工なロボットを野放しにはできません。こちらも手を貸しましょう」

「だけど、どうして氷牙とかがあるんだよ」

「ふふふ、いずれロボット愛好会大進撃とか全てのロボットを集めて戦いたかったのです」


 倒してきたはずの機体、半壊した黒曜。

 だが、さすがに刃雷じんらいの姿は見えない。ヤバいことをしでかした上に、パイロットであるイワマは警察署にいるはずだ。

 統一の言いたいことはわかる。最終決戦で今まで出てきたロボットが出撃する熱い展開。

 まさに、今という訳だ。


「それより、統一、お前生きてたんだな」

「ふん。私と黒曜ならあの程度でやられるわけがないだろう」


 半壊してるくせによく言う。


「よし、一緒に戦おうぜ!」

「言われずとも!」


 ここで、強力な味方を得ることができたのは僥倖ぎょうこう

 これなら、改人モンスターともやりあえる。

 今こそ、長い闘いに終止符を打つときだ!

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