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第43話 「いや……その……。熟女好きといわれ続けて……熟女モノってどんなものかと思いまして……」

あらすじ

【システム トコヨノクニ】

 滑空のキャノピー越しにとんでもないものが見える。50mを越えるスーパーロボット同士の空中大決戦。

 もう、無茶苦茶だ。

 ボウエイオーはロケットでこちらの滑空を超える旋回性能を誇っていやがる。

 戦闘機があんな軌道をすることは不可能だろ。なによりパイロットにかかるGでミンチになるんじゃねぇか?

 まさか、シートベルトがあるから大丈夫、みたいなノリでいるんじゃないだろうな。

 虹を背にもつ黒曜にいたっては、瞬間移動しているようにしか見えない。

 どんな戦いだよ、まったく。


「こうしてボウエイオーの戦いを上空で見るのは、何気に初めてじゃなねぇか?」

「そうですね。いつもはボウエイオーが活躍する前に撃墜されてましたからね」


 情けないことに、鈴木の言うとおりだ。

 だが、今回はそんな事はなく、こうして滑空を操縦できている。


「おいおい、ここからでもすげー戦いだな」

「黒曜の虹は綺麗ですね」


 今回はこちらに攻撃が来ない。

 こうやって余裕を持ってスーパーロボット同士の戦いを眺められる。


「そういえば、俺たちいつも喧嘩してたな。その度に落とされてた気もするけどな」

「大概が岸本、お前のせいだがな!」


 知ったふりをする岸本につい、声を荒げてしまう。

 いけない。このままではまた、いつものような展開になってしまう。


「やけに刺々しいな。俺は本当のことしか言ってないぜ?」


 ああ、本当のことだろうとも。

 だからこそ、悪いんだよ!

 人には言ってはいけない事が存在するのをわからねぇのかよ。


「大体、余計な事を言うのが悪いんですよ。今言うべきことじゃないことばかりでしたよね!」


 流石の鈴木もキレている。

 俺も白スクとかの件で、部隊内の地位が向上している。同僚からおがまれるのはもう嫌だ。この恨み、晴らさずおくべきか……!


「何だよ。言うじゃないか、鈴木。俺、知ってるぜ」

「な、何を知っているんです?」


 攻守一転。いかん。いつものパターンだ。

 岸本がこう言ってただで済んだ事がねぇ。

 また、血の涙が降るぞ。


「お前、熟女モノを隠し持ってるらしいじゃないか」

「ちょっ! 鈴木!?」


 衝撃の真実。

 いやいや、鈴木は母親の写真を大事にしていただけだろ。本当に熟女好きだったのかよ。

 もう、何を信じていいかわからなくなってきたぜ……


「いや……その……。熟女好きといわれ続けて……熟女モノってどんなものかと思いまして……」


 マジだった!

 でも、鈴木、お前の気持ち、少しわかるぜ。

 ちょっとした好奇心って誰にでもあるよな。俺もちょっと白スクに興味が出ちまった。たったそれだけだったのによぉ……。


「おい、鈴木……お前、本当にじゅくじ――」

「ぼ、ボウエイオーが黒くなりましたよ!」


 俺の言葉を遮るように、鈴木の叫びがスピーカーから聞こえてくる。

 何かと思い、視線をボウエイオーに向けると、確かに黒くなっていた。

 だから、何?


「お、本当だ。なんで黒くなったんだろうな」


 黒いボウエイオーが黒曜の虹を砕きながら攻撃を仕掛けている。

 あの虹は何も効かないって話だった気がするが、黒くなった事が関係しているのかもしれない。


「あの構え、ボウエイビームですよ!」

「生ビームは初めてだな!」


 生ビームって、ビールのように言うなよ。

 まあ、確かにボウエイビームは記録映像でしか見た事がない。ここは期待して目に焼き付けるとしよう。

 そのまま、ボウエイビームが黒曜を貫くのが見えたが――

 次の瞬間、ピッカっという効果音が聞こえそうな輝きに目を焼かれる。

 そのとんでもない輝きは、すぐに爆発へと変化する。その爆発は遥か遠くにいるこの滑空まで巻き込んだ。


「ぐぉぉぉぉ! 操縦桿がうごかねぇ! またこうなるのかよ!」


 視界全ての空を焼いた爆発に巻き込まれ、俺は滑空と共に地上へと落ちていった。




 見渡せる全てが赤黒く染まっている。

 黒い雲のような巨大な煙に、未だに燃え続ける空が見える。眼下の建造物も倒壊し、燃え上がっている。

 それは、世界全てが焼き尽くされてしまったようだった。


 ボウエイビームを撃った後、このような状態になっていた。


「なんだよ、この威力は……」


 どういう、ことだろう。

 いつもと同じようにボウエイビームを撃ったはずだ。いや、これは『トコヨノクニ』によってパワーアップしたということなのか……。


『ごめん、大吾』


 天地博士の短い声が聞こえたと思うと、ディスプレイが切れた。

 同時に異常値を示していた各計器も急激に下がっていく。この状態は、電源を切られたのだ。

 真っ暗なコックピット内で、自分の体が落ちていくのを感じる。身体を固定するシートベルトに肉が締め付けられていく。

 そういえば、今まで空中戦を繰り広げていたんだっけか。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 叫んだ後はすぐに激しい揺れ、というより落下した衝撃に身体を揺さぶられる。

 意識を失いかけたが、どうやら気を保てたようで、視界がぐわんぐわん揺れる程度ですんだ。これはシートベルトに感謝だな。


『大丈夫?』

「そんな事聞くならやらないでください」


 博士の間の抜けた問いにそう答えていた。

 人が空を飛んでいる時に電源を切るとか正気の沙汰ではない。殺意を感じる。


『悪かったわ。「トコヨノクニ」を安全に停止させるには、電源を切るのが一番なのよ』


 そんな、スーパーファミコンみたいに、手軽に言って欲しくない。

 それでも、システムは止まったようだし、問題なしってことなのだろうか。


『システムも無事とまったようね。でも、これは説明不足だったわね』

「説明不足? 何のことです?」


 『アマノイワト』を完封、黒曜に勝利を収めたというのに何が説明不足だったのだろうか。

 そういえば、ビームを撃つ時に天地博士が何か言っていたような……。


『今なら他に漏れることもないだろうし、説明しておくわ。まず、「トコヨノクニ」とは、対消滅エンジンを起動するシステム。この世界にはない陽の電荷のみで構成される異世界と直結し、反物質を無限に生み出すものよ』


 言ってる意味はよく分からないが、異世界とか出てきた。化学を超えてオカルトっぽくなってきた。そのうち、異世界転移なんてものも手軽にできるようになるかもしれない。

 うん。自分でも何を言っているのかわからない。


『そして、反物質砲。最後に放ったボウエイビームがそれよ』


 反物質砲。

 天地博士は軽くいいながら、とんでもないことを口走った。

 アニメなどで出てくるトンでも超兵器。


『ボウエイビームの周囲2kmは被害が出てるみたいねー……。黒曜も自衛隊の戦闘機もロストしちゃってますー』


 雪絵さんの声もいつもより緊張を帯びている。

 周囲への被害がとんでもないことになっている。

 黒曜はともかく、戦闘機はヤバイな。


「マジですか」

『大マジよ。下手すれば日本全てが――いえ、地球が危ないわ』


 本当にとんでもないことになってきた。

 『アマノイワト』を搭載されていたとはいえ、1体のロボット。

 それに対して日本壊滅の危険を孕んだ武器とかやりすぎだ。


『それを使用したということは、きっと日本、いえ、世界中に知れ渡るわ』


 俺はごくりと、息を飲んだ。


『その時……ボウエイオーがどうなるかわからないわ』


 それは、今後のボウエイオーに対する処遇のことを言っていることは理解できる。

 そんな危険なロボット――いや、兵器を世論が許すはずがない。

 下手をすれば、核兵器を越える可能性を持っているのだから。

 核兵器ではないとしても、非核三原則を掲げる日本では過ぎたる兵器だ。


『ロボット愛好会の創設者であろう統一の生死が不明――』

「つまり、次のロボットは出てこないということですか……」


 それはつまり、ボウエイオーが必要なくなるということだろう。

 とんでもない兵器を持っている以上、平和利用なんて許されないだろうし。


『ボウエイオーの凍結はもちろん、日本防衛所の存在すら危ういわ』


 プレハブ小屋を拠点とした極小の組織なんて、潰すのは容易いだろう。

 それに、ボウエイオーが無ければ、日本防衛所の意味がない。


『しょうがないんじゃないですかねー。ボウエイオーは役割を果たしてしまいましたらー』

『そうね。後は世論に委ねるしかないわ』


 正義のスーパーロボット、ボウエイオーの幕切れが、極悪兵器とされて処分されるなんて――なんという皮肉なのだろうか。

 俺たちの未来は、日本に……世界に委ねられた。

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