第42話 「本性を現したな、ボウエイオー! その力を越え、私も無双を越えてやる!」
あらすじ
ホモではない証明
目の前には全身を黒で覆い、カメラアイのみ青く光らせる黒曜が浮かんでいる。虹の光を背負い、空中でこちらと対峙していた。
向こうからの要求で、ボウエイオーは緊急出動することになった。
こちらとしても、『アマノイワト』を搭載する黒曜との戦いは望むところだ。
「あんた、統一だったよな。天地博士の弟の」
「いかにも、私は天地統一。その様子では、『アマノイワト』の話を聞いたみたいですね」
あっさりと、天地博士の弟だと認めた。
なら、やはり『アマノイワト』に関する話は本当だったようだ。疑っていなかったといえば嘘になるが、本当のことだったら、それはそれで、当惑してしまう。
「そのシステム。どうして、天地博士から盗んだ?」
「簡単なことです。このシステムを知ったときから、私はロボットに搭載するべきだと考えていました。『アマノイワト』に性質を最も活かせると」
この世の全てをエネルギーに変換する夢の永遠機関。
天地博士はその危険性から実現させるつもりは無かったと聞く。だが、統一の話を聞くと――その気持ちは少しわかってしまう。
ロボット好きの性なのかもしれない。
「その為の、ロボット愛好会。『アマノイワト』の完成もそうだが、黒曜の完成には同好の士の力が必要でした」
「そこまでして『アマノイワト』を完成させたかったのか?」
「その通り! 私は無双を越えるためにどうしても『アマノイワト』が必要だったのです」
ん? あれ?
「無双って、誰?」
『私よ、私! 歌って踊れる天才科学者、天地 無双よ』
ははは。完全に忘れてた。いつも『天地博士』だったから。
そんなことより、姉を越えるために、このようなことをしているとは思わなかった。もっと、ロボットのことを思っていれば、他の道もあったはずだ。このような形でなければ、俺も賛同していたかもしれない。
「他人のふんどしで越えてどうするつもりだ? しかも、越えたい相手のふんどしだ」
「なんと言われても、私には越えるべき壁がある。ただの『構想』を『実現』する事が重要なのです。ただの机上の空論では意味がありません」
やはり、天地博士の弟なだけはある。
めんどくさいという点では、姉とそっくり過ぎる。そんなところは似なくてもいいと思うけどな。
「私は無双の完成させたロボット……ボウエイオーを完膚なきまでに叩き潰すことで、自らが優れていることを証明する。そのために、敗れろ! ボウエイオー!」
「そっちがその気ならやってやる! お前の勝手な証明を正面から否定してやるよ!」
もう、言葉は必要ない。必要なのは勝利のみ!
レバーをぐっと握り締め、ペダルを全力で踏みつける。
「絶対堅守ボウエイオー! 行くぞ! ボウエイグレイブ!」
何処からともなく飛来するボウエイグレイブをキャッチして、切っ先を黒曜に向ける。
正面から叩き切ってやる。
「馬鹿の1つ覚えですか? ボウエイグレイブなぞ、とうに見切って――って、危ない! 台詞の途中で攻撃とか!」
全力で薙ぎ払ってやったが、やはり通じない。今は完全に油断していると思ったが、そう簡単にはいかない。
「こちらも、全力で行かせてもらいます。前回のような情けはないと思いなさい!」
黒曜の腕から虹色の刃が伸びてくる。
なんであろうとも切断する、防御不可能な最強の剣。だが、当たらなければどうという事は――
「げっ! ボウエイグレイブが!」
あっさりと、柄を切断された。
「最初の勢いはどうしました? このままでは、一方的にやられるだけですよ!」
役に立たなくなった薙刀を黒曜に向けて投げつける。が、やはりと言うか、虹色の光に溶けてなくなってしまう。
こうなれば、もう最後の手段に頼るしかない。
「天地博士! いきなりですが、例のシステムを使います!」
『ちょ、いきなり? こっちは心の準備ができれないけど?』
『例のシステムって、なんですかー?』
早速、ぐだぐだしてきた。今は真剣なバトルの最中なので、こういうことになるのは不本意である。
まあ、一言かけたので、使ってもいいだろう。
右手をレバーから離し、その下にある取っ手を握る。そして、右に回して思い切り引っ張る。
「おおおっ!」
コックピットが激しく振動する。ディスプレイは以前のようにノイズが走り、各計器は限界値を超えていく。
まだ未完成かと思うと、天地博士からの通信が聞こえてくる。
『起動が早すぎるけど、今は仕方ないわ。このシステムは新しいジェネレータを起動するためのものよ。今までのエレクトロンジェネレータとは桁違いの出力があるわ!』
エレクトロンジェネレータ? 初めて聞いた。
というか、新しいジェネレータって、何? ロボットアニメとかで謎のパワーアップとか定番だけど、これもそういう類という訳か。
『出力上昇はおまけみたいなものよ。真価はボウエイオーの装甲である白鋼に陽の電荷を帯びさせることにあるの!』
言っている意味はわからないが、白かったボウエイオーがどんどん常闇の黒に姿を変えていく。
これが、ボウエイオーの真価――
【システム トコヨノクニ】
ノイズが走っていたディスプレイが落ち着き、中央に赤い文字が表示されていた。
システム『トコヨノクニ』そいうものらしいが、原理はさっぱりわからない。
今までの経験から、黒くなったボウエイオーなら、あの虹の光に対抗できる筈だ。
「本性を現したな、ボウエイオー! その力を越え、私も無双を越えてやる!」
黒曜から放たれる虹色の光線。本来ならば、防御不可能の必殺の一撃――だが、ボウエイオーはその直撃を受けても、まったくの無傷であった。
『この世にある全ての物質を分解する「アマノイワト」だけど、この世に存在しない物質なら分解は不可能。さあ、大吾、やっちゃいなさい!』
理屈はよくわからんが、とにかく『アマノイワト』を完封できているらしい。
「いくぞ! ボウエイオー!」
黒くなったボウエイオーを黒曜へと向かって突進させる。どれだけ虹色の光を浴びようとも、ダメージを受けることは無い。
『これって、どうなってるんですかー? 博士、変なシステム組み込まないでくださいー』
『雪絵ちゃんも、大体のことは知ってるでしょ?』
『こんなのオペレートできないですよー』
なんか、通信が五月蝿いが気にしない。
「そんな……『アマノイワト』が敗れるなんて……やはり、私では姉さんに勝てないのか――」
黒曜の振るう虹色の剣を右腕で掴み取ると、その光はパリンと割れて粉々に砕け散る。
光が砕けるという不可思議な現象を見るからに、その異常性がよくわかる。
この世の全てを分解する虹色の光は黒色によって無効化される。それ以外の武装を持たない黒曜にとっては致命的な弱点だ。
「言っただろ。他人のふんどしではその程度だって。相手は常に頭1つ上を行くもんだ!」
黒曜の背後に光る虹を握りつぶすと、黒曜はバランスを崩し、傾いていく。
そんな黒曜を右足で蹴り上げてやる。
「統一、さっさと逃げておけよ!」
蹴り上げられた黒曜は防御する事ができない程にバランスを崩している。
完全に無防備となった黒曜に胸を向ける。
「よし、ボウエイ……」
『駄目! ボウエイビームは使っちゃ駄目ーーー!』
「ビッィィィィムッ!」
激しい光がディスプレイを覆う。
今までのボウエイビームの比ではないほどの光量が目の前を白く塗りつぶしていく。
そして、ボウエイオーが激しく揺れて、姿勢を保つだけで精一杯になる。やはり、シートベルトは頼りになる。
光が収まりディスプレイに映されたのは、巨大な爆煙だった。
その爆発は今までより圧倒的に巨大だった。




