第35話 「――あれから、1年がたったのね。本当に時間が過ぎるのは早いわね」
あらすじ
祖父登場
突如として現れた『ロボット愛好会』は、巨大ロボットを使い、ロボット文化の復活を企む。
現存兵器が一切通じない巨大ロボット『激震』を前に日本政府は最終兵器の投入を決定。
極秘裏に開発されていた『絶対堅守ボウエイオー』がついに日本防衛所から発進した。
激震と合間見えるボウエイオーは苦戦しつつもそれを撃破。ボウエイオーは日本の守護神となった。
その後、迫り来るロボット愛好会は『氷牙』『火車』『刃雷』を繰り出し、ボウエイオーに対抗してきた。
巨大ロボットはいずれも強敵でボウエイオーは何度も窮地に立たされた。
それでも、ボウエイオーは逆境を乗り越え、勝利を収めていく。
そんな中、ボウエイオーに対抗すべく、超巨大ロボット『モンスター』を出撃させる。
他の巨大ロボットの2倍はある大きさで日本を蹂躙していく。
ボウエイオーもモンスターに対抗すべく応戦。激突を繰り返すが、巨大な体躯のモンスターの前にはどのような攻撃も通じることはなく、このまま終わりを告げようとしていた。
その時、密かに開発されていた、ボウエイバードが発進、ボウエイオーと合身することで、『ボウエイオー・ブレイブ』となり、再度モンスターに戦いを挑む。
パワーアップしたボウエイオー・ブレイブは相手の巨大をもろともせず。新必殺技『ブレイブバードスマッシュ』をモンスターに叩き込み、ロボット愛好会を下した。
それが効したのか、日本では空前のロボットブームが到来、図らずもロボット愛好会の目的は達成されたのだった。
平和が訪れたかと思いきや、日本は火星人から侵略されることになる。
「日本人はタコを食べ過ぎた」
と、謎の声明を発表した。
火星人が繰り出す巨大火星ロボは強大にして、無比。
最後の切り札でもあったボウエイオー・ブレイブまでも歯が立たなかった。
このままでは日本が侵略されてしまう。
そんな危機に対し、またも密かに開発されていたボウエイオー2号機、ネオボウエイオー蝦夷の出撃を決定、火星ロボとの決戦に挑む。
無敵を誇っていた火星ロボに対し、ネオボウエイオー蝦夷は互角以上に戦い、火星人の侵略から日本を守ることに成功した。
だが、火星人も黙っていることもなく、火星大王ロボmkⅡで再び侵略を開始、苦戦を強いられる戦いの中、改修されたボウエイオー・ブレイブが駆けつけた。
強大な火星大王ロボmkⅡも2体のボウエイオーの前にはなすすべもなく、Wボウエイビーム・無欠により撃破されたのだった。
そして、日本に再び平和が訪れた。
※
「――あれから、1年がたったのね。本当に時間が過ぎるのは早いわね」
天地博士と雪絵さん、そしてセンセイのいる居間にてゆっくりと温かい茶を飲んでいた。
今まで繰り返してきた数々の戦いを思い出しながら。
「ようやく、日本にも平和が訪れたようだ……」
センセイは相変わらずの渋く男前な声でそっと呟いた。
今まで何度も窮地に陥ったが、センセイのアドバイスにより脱する事ができた。
愛くるしい犬である。
「愛子ちゃんと晴香ちゃんは何をしているんですかねー」
雪絵さんはクラッカーを口に運びつつ、2人ことを思い返す。
「晴香は高校を卒業して大学生になりました。愛子は――」
「まさか、防衛所を直接狙われて命を落とすとか、本当に口惜しいわ」
ここにいない2人のことに想いを馳せる。
大学生になった晴香は兄離れをし、今では充実したキャンパスライフを堪能しており、防衛所に来る回数もぐっと減った。
愛子は火星人の襲撃の犠牲になった。
日本が平和になったのも、愛子のおかげなのかもしれない。
「そろそろ、日本防衛所も解体されるわね」
平和となった日本に防衛所など必要ない。
大破した2体のボウエイオーは失われた。もう、日本防衛所の存在価値はなくなってしまった。
「私は研究を続けるわ。どこか、適当な研究所にでも行って平和の維持に努めるつもり」
「んー、私は自衛隊にでも入ろうかしらー。あそこなら、私の能力も生かせるでしょうしねー」
「俺は無職へ逆戻りですよ。新しい就職先を見つけないといけないですね」
その話の中、センセイだけが耳を垂らし、傍観していた。
センセイはその能力を解明すべく、どこかの施設へ送られる事が決定していた。
そこで何が行われるのかまだわかっていないが、防衛所のように緩く生きていくことはできないだろう。
「私のことは忘れてくれ。きっと他の動物の為になるさ」
少し弱気な哀愁漂う台詞には胸を締め付けられる。
「防衛所に来られるのは、今日が最後でしたね……」
「すぐにでもこの建物は取り壊されはずよねー。地下施設が凄いから、解体には時間がかかるみたいー」
こうして、一同がここに集まるのは、今日で最後。
各々が新しい未来に一歩踏み出していくのだ。
ありがとう、日本防衛所。
そして、ボウエイオー。
「あー、疲れた。あれ? みんな揃って何してるんです?」
突如、居間のドアが開いて予想外の人物が現れた。
それは――
「愛子! 生きていたのか!」
「は?」
なんと、亡くなったはずの愛子がここに現れたのだ。
幽霊などではない。本物の愛子。
一体、何があったと言うのだろう。
「秘密にしていたが、愛子くんは密かに別の施設へ移送され、治療を受けていたのだ。もう大丈夫なのかね?」
「はぁ……」
くそっ!
愛子が生きてるなんて、思わなかった。
これは最後のサプライズだ。
「あのーさっきから――」
「愛子ちゃん、だめよー。まだ寝てなくちゃー。怪我に触るわよー」
確かによく見れば、愛子の様子が少しおかしい。もしかして、まだ意識がはっきりとしていないのか……。
「ちょっと! 何してんすか! 話が読めないですよ!」
「ああ、愛子。酸素欠乏症にかかって」
「やはり、治療が遅かったというのか……」
俺とセンセイは変わり果てた愛子に対して、憐憫を抱くしかなかった。
何て、哀れな愛子……。
「大丈夫! こんなこともあろうかと、記憶修復剤を作っておいたわ!」
「流石は博士! そこに痺れるし、憧れるかもしれない!」
いつもながら、こういう唐突もないアイテムを出してくれる。
これに何度助けられたかわからない。
「もー! 何なんすか! 酸素欠乏症とか、意味がわからないです!」
「あー、そろそろ限界ですかねー」
「さすがに幕切れか。仕方ない」
俺たちは折れるしかなかった。
「愛子ちゃん。私たち、『最終回ごっこ』をしていたのよ」
「え? 何……ごっこ?」
「この長く辛い戦いが終わった後のことを、適当に話をあわせる遊びだ。ちなみに、お前は戦いの中で死んでいる」
よくわからないと、ぽかんとしていた愛子だったが、そのうち、理解できてきたのか、顔を真っ赤にして怒ってきた。
「何、そのよくわからない遊び! あたしも混ぜて欲しかったです! のけ者なんて酷い!」
「機会があれば誘うわ。まあ、その時にね。もう二度としないでしょうけどね!」
怒る愛子に煽る博士。
クラッカーを食べ続ける雪絵さんに、久しぶりの出番にご満悦なセンセイ。
今日も日本防衛所は平和だなぁ。
湯飲みの温かいお茶を飲みながら、そう思った。




