王都到着そして商館にて
馬車に揺られた長旅の疲れを心地よい風が吹き飛ばしていくように、私たちの馬車はついに、白く輝く石造りの壁に囲まれた巨大な王都の門をくぐり抜けた。
北方のムーツ領とは違う、人々の活気と様々な香りが入り混じる王都の空気。窓から外を覗き込む私の隣で、ルーカスはこれから始まる王弟殿下との面会や北方警備隊の準備に向けて、表情を少し引き締めている。
「ふう、ようやく着いたね。馬車の旅も悪くはないけど、やっぱり腰が痛いわ……」
「贅沢を言うな、イチカ。無事に到着しただけでもよしとしなければな」
ルーカスの苦笑いをよそに、私たちの馬車が向かったのは、王都の一等地に店を構える敏腕商人カトリーナの商館だった。
商館の扉が開くなり、鮮やかなドレスを身にまとったカトリーナが、まるで私たちが来るのを分かっていたかのように、余裕の笑みを浮かべて出迎えてくれた。
「よくぞいらっしゃったわ、イチカ様。それにルーカス前騎士副団長まで……噂の『北方警備隊』の件で、王都中がちょっとしたザワつき始めているというのに、よくぞお揃いで」
さすがは情報通のカトリーナ。
私たちが王都の門をくぐったことだけでなく、ルーカスの動向まですでに把握しているらしい。
「カトリーナさん、お久しぶりです! 手紙じゃ伝えきれなかった話が山ほどありますわ。それに、約束の品もちゃんと持ってきましたわ!」
私がそう言って、馬車から慎重に下ろした木箱を指し示すと、カトリーナの瞳が商人の色にギラリと鋭く光った。
「ふふ、お待ちしておりましたイチカ様。これが噂の『シャンプー』に『リンス』、そして『モイスト石鹸』ですね。
王都の貴族街の婦人たちの間では、すでにイチカ様の商品の噂で持ちきりなんです。
さあ、中に入って詳しく聞かせてください」
カトリーナに案内されて通された応接室で、私たちはさっそくビジネスの打ち合わせへと突入する。




