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異世界のむつ市(最北端)へようこそ!  作者: 一条ひかり


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北の絶景と豪華すぎる極上晩餐会

温泉とフィンランドサウナで長旅の疲れを完全に洗い流したジークフリート夫婦とは、心身ともにすっかり軽くなっていた。


「いやはや、あのサウナとやらの後は、世界がまったく違って見えるな……」


軽く汗を流し、リラックスした浴衣姿のジークフリートが、満面の笑みでそう呟く。


そんな王弟ご一行を次に案内したのは、温泉迎賓館の裏手に新しく整備されたウッドデッキだった。


標高や立地を活かし、広大に開けたその場所からは、暮れゆく夕日に染まるムーツ領の雄大な大自然が360度パノラマで広がっている。


「なんと美しい景色でしょう……。王都の喧騒とは違う、息をのむような静けさですね」


ビクトリア妃殿下は、北国の澄んだ風を髪になびかせながら、眼下に広がる森や整えられた領地の景色にうっとりと見入っていた。


傍らには、昼間にも堪能した地元のリンゴを使ったハーブウォーターが用意されており、風を感じながら優雅なティータイムを味わう。


温泉でぽかぽかと温まった体に、ひんやりとした涼しい外気が心地よく吹き抜ける最高のロケーションだ。


大自然の中で贅沢な夕暮れを堪能した後は、いよいよ夜のメインイベント――極上の晩餐会へと移った。


ダイニングルームのテーブルには、ムーツ領が誇る至高の食材をふんだんに使ったフルコースが並び、その圧倒的な香りと佇まいに、王弟ご一行は席に着くなり目をを見張った。


まず運ばれてきたのは、冷製前菜『海峡サーモンとホタテのフレッシュカルパッチョ』。


一度も冷凍せずに仕立てたという鮮やかなサーモンと肉厚なホタテは、一口食べればその圧倒的な瑞々しさが舌の上で弾ける。


爽やかなハーブとベリーのドレッシングが素材の甘みを極限まで引き立てており、ビクトリア妃殿下は「まぁ、なんと贅沢な前菜でしょう……」と初手から心を奪われていた。


続くスープは、ムーツ名産の極甘カボチャを使った『極上カボチャのポタージュ』。


なめらかな舌触りと、絹のように濃厚な甘みが、旅の余韻に浸るゲストの体を優しく、そして力強く温かく包み込んでいく。


魚料理として登場したのは、氷室でじっくりと旨味を極限まで熟成させた『オーマの大トロステーキ』だ。


北国の爽やかな野いちごのソースと、ミネラルたっぷりの特製塩でシンプルかつ大胆に味わうその一品は、魚の常識を覆すほどの重層的な旨味を放つ。ジークフリートも「熟成された脂のりと、このソースの酸味の調和がたまらん」

と思わず唸った。


そしてメインの肉料理は、同じく氷室熟成の『ワイルドボアのロースト』。


野趣あふれるジューシーな肉の旨味に加え、栗やピーナッツに似たコクと甘みを持つ『アピオスの濃厚マッシュ』が贅沢に添えられており、口いっぱいに広がる芳醇なハーモニーに、もはや言葉を失うほどだ。


締めくくりのデザートは、ムーツ名産のリンゴのコンポートと、到着の頃合いに奇跡のタイミングで収穫されたフレッシュな『夏秋イチゴ』を合わせた、温冷仕立ての特製タルト。


昼に食べたショートケーキとはまた違ったアプローチで、イチカの技術と北の大地の恵みが結集した芸術品に、夫妻は完全に骨抜きにされていた。


大自然の絶景、極上の温泉とサウナ、そして地元の素材を限界まで活かした究極のフルコース。


完璧すぎるおもてなしに大満足した夜は、こうして穏やかに更けていく――はずだった。


だが、この北の迎賓館には、さらなる「とんでもない仕掛け」が夜の闇の中で待ち構えているのであった。

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