最北の二大切り札、王都へ突撃!
「ジャムに続く『二大切り札』……!? 一体どんな商品ですの、イチカ様!?」
商人としての血を滾らせたカトリーナ様が、身を乗り出すようにしてテーブルの瓶を見つめてくる。
私はまず、一つ目の小瓶の蓋を静かに開けた。
立ち上ったのは、どこか懐かしく香ばしい、濃厚な海の香りだ。
「まずはこちらですわ。ムーツ領の極寒の海で獲れたホタテを、シルバー部隊の皆さんと一緒に丁寧に加工し、旨味を極限まで凝縮させた『干し貝柱』ですの」
「干し……貝柱……? お魚や海産物は足が早くて、王都まではとても運べませんけれど……」
疑問に思うカトリーナ様に、私は小さくカットした干し貝柱を差し出した。
「ふふ、まあ試食してみてくださいな。噛めば噛むほど、お口の中に旨味が溢れてきますわよ」
おそるおそる口に含んだカトリーナ様の表情が、一瞬で固まった。
「……っ!? な、何ですのこの溢れ出す濃厚な旨味は……!? 乾燥しているのに、噛むたびに奥深い出汁の味わいが広がっていきますわ……!」
「乾燥させて水分を極限まで抜いていますから、長期間の保存や遠方への輸送にも完璧に耐えられますの。王都の高級料亭や貴族のスープの出汁として売り出せば、大ヒット間違いなしですわ!」
「素晴らしい……! 保存が効く高級海産物なんて、王都のグルメな貴族たちが泣いて喜ぶ逸品ですわ……!」
感動で打ち震えるカトリーナ様に、私はフッと不敵な笑みを浮かべ、二つ目の瓶――黄金色となめらかな質感を湛えたペーストの蓋を開けた。
「そしてこちらが、第二の切り札。『アピオス』という地元の小さな芋と、リンゴジャムのシロップを練り上げた『最北のマロンスイートペースト』ですわ!」
「まあ……! まるで高級な栗のクリームのようになめらか……!」
スプーンですくって一口食べたカトリーナ様は、目を見開いたままうっとりと頬を押さえた。
「なんて濃厚で品のある甘さ……! 栗のような香ばしさとサツマイモのような強い甘みが、完璧なバランスで溶け合っていますわ……! これ、本当にあの泥くさい小さな芋から作られたのですの!?」
「ふふ、見た目はただの泥くさい小石のようでも、磨けば最高級のスイーツに化けるのですわ!」
「イチカ様、あなた様は天才ですわ……! この干し貝柱とアピオペースト、そして追加のリンゴジャムがあれば……王都の高級品市場を完全に独占できますわ!!」
カトリーナ様は力強く拳を握りしめた。
「さっそく村のアルフレッドさんやシルバー部隊の皆さん、そして山奥のルーカスさんから在庫を集めましょう! 私、明日には追加の荷物を馬車いっぱいに積み込んで、再び王都へ突撃いたしますわ!」
「ええ、カトリーナ様! ムーツ領の反撃、よろしく頼みますわね!」
ジャム、干し貝柱、そしてアピオペースト。
極寒の地で生まれた三大特産品を携え、カトリーナ様の馬車は再び王都へと向けて力強く走り出した。
私たちの開拓と王都への反撃は、ここからさらに加速していく――!




