王都到着とアルスター公爵邸の洗礼
イチカ達は、ルキウスの陞爵式に出席するため、王都へと馬車を走らせていた。
道中、領地を治めるハギムーン領に立ち寄り、ハギムーン侯爵へ滞りなく挨拶を済ませる。
その後も旅程は順調に進み、ついに重厚な王都の門をくぐり抜けた。
馬車が最初に向かったのは、ルナ・ソレイユの販売を一手に担う『シルヴァ商会』だ。
重厚な扉を開けて商会に入ると、待ち構えていたかのようにカトリーナが出迎えてくれた。
「ルキウス様、この度はご陞爵、誠におめでとうございます!」
晴れやかな笑顔で祝いの言葉を述べると、カトリーナはそのまま二人を洗練された応接室へと案内した。
「さすがカトリーナさん、耳が早いわね」
イチカが感心したように声を漏らすと、カトリーナはふふっと得意げに笑みを浮かべる。
しかしすぐにビジネスの表情へと切り替わり、本題へと移った。
ここでは、以前から進めていた『美肌の酒粕パウダー』と『なめらか米ぬかパウダー』を、美容クリームとして完全な形に仕上げるための調合について詳細な説明が行われる。
イチカの的確な指示に、カトリーナは真剣なまなざしでメモを取り、販売への手応えを掴んだのだった。
商会の用事を滞りなく済ませた一行は、次なる目的地であるアルスター公爵邸へと馬車を走らせた。
だが、公爵邸に到着するやいなや、息をつく暇もなかった。
玄関をくぐるや否や、待ち構えていたかのようにメイドたちに囲まれ、イチカはそのままドレッサールームへと――文字通り、強制連行されてしまったのである。
「さあイチカ、じっとしていてちょうだい!」
「このドレス、お姉様に絶対似合うから合わせてみるわよ!」
待ち受けていたエオノーラ夫人とエリスの熱狂的な視線の中、イチカはなすすべもなく、彼女たちの「着せ替え人形」と化すのであった。
こうして、王城からの正式な呼び出しが届くその日まで、イチカはアルスター公爵邸で慌ただしく、そして賑やかな滞在を送ることになるのだった。




