刺々しいお宝
「イチカ様、見てください! 少年団の新しい防衛用武器になりそうなものを見つけました!」
先日、マルクがどこからか大事そうに抱えてきたのは、全体が鋭い刺で覆われた緑と茶色の球体――イガに包まれたままの大きな栗だった。
「投げつければ相手に大打撃を与えられます!」と目を輝かせるマルクに、イチカは思わず苦笑いを浮かべたものだ。
「マルク、それは武器じゃなくて……とびきりのお宝よ!」
というわけで本日、イチカは護衛のレイモンド、そして大きな背負い籠とトングを持ったマルクを伴い、領内の森へとやってきていた。
トングは先日、イチカの指示で鍛冶職人に作らせた金属製の挟み具である。
「ここです、イチカ様! 例の刺々しい玉が落ちていたのは!」
マルクが指さした先には、見上げるほどに立派な栗の木があった。足元には、はちきれんばかりに実ったイガ栗がゴロゴロと転がっている。
「すごい……! こんなに大きな栗がたくさん!」
「ふむ、確かに触ると痛そうですが……これが食べられるのか?」
半信半疑のレイモンドをよそに、イチカは慣れた手つきでトングを操り、イガを踏んで中の大きな栗の実を次々と取り出していく。
マルクも面白がってトングを使い、夢中になって栗を拾い集めた。
あっという間にマルクの背中の籠は、丸々と太った栗の実で満タンになった。
男爵邸へ戻ったイチカは、厨房で山積みの栗を前に腕を組んだ。
「本当ならマロンペーストにしてモンブランを作りたいけれど……あれを作るには道具が足りないのよね。だから今日は、道具がなくてもできるこれを作りましょう!」
イチカが選んだのは、秋の定番「栗ご飯」だ。
皮をむく手間こそかかるものの、調理自体はそれほど難しくない。
イチカは料理長のレイブンに手本を見せながら、栗の下処理や、昆布出汁とほんの少しの塩を加えた米と一緒に炊き上げる手順を説明していった。
やがて厨房いっぱいに、米の炊ける甘い香りと栗の芳醇な香りが立ち込める。
ふっくらと炊き上がった栗ご飯を前に、レイブンは感心したように顎を触った。
「これは見事な出来ですね……。ほくほくとした栗の甘みと、出汁の塩気が実によく合います。
迎賓館で出す料理としても面白いですが、全体のご馳走との構成や組み合わせを考えねばなりませんな」
「そうね。メニューの全体調整は、秋が深まってから冬の間にでもゆっくり考えましょう」
「承知いたしました。では、今夜の夕食に早速お出ししましょう」
その日の夕食。食卓に並んだホカホカの栗ご飯は、ルキウスとエリスの二人にも大好評だった。
「ほぅ、あの刺だらけの実がこのような上品な味になるとはな。
出汁の風味が染みた栗の甘みが実に美味い」
「お姉様! お米と栗のほくほく感がとっても合っていて、いくらでも食べられちゃいそう!」
二人が美味しそうに頬張る姿を見ながら、イチカは「武器じゃなくて食べ物にして大正解だったわね」と微笑んだ。




