プリン作りとアリスの策略
賑やかな空気が漂う温泉迎賓館。
「ねえ、アリスちゃん。せっかくこうして遊びに来てくれているんだし、一緒に何かお菓子を作らない?」
そう声をかけたイチカの提案に、アリスはぱっと顔を輝かせた。
「お菓子作り……ですか? 私も、お手伝いしたいです!」
さらに、その様子を近くで聞いていたエリスも、「お菓子作りなんて楽しそう。私も参加したい」と、目を輝かせながら嬉しそうに近づいてくる。
こうして、イチカ、アリス、エリスの三人は、厨房へと向かうことになった。
厨房の仕込みを始めていた料理長のレイブンに「ちょっと厨房借りるわね」と声をかけると、返事を待つこともなくイチカはさっそく調理モードに入った。
「今日作るお菓子は、『プリン』だよ! つるんとしていてとっても美味しいんだから」
「プリン……? なんだか響きだけで美味しそうです」
アリスが目をパチクリとさせると、エリスも「わぁ、どんな味がするのかしら……すごく楽しみだわ!」と期待に胸を膨らませた。
さっそく調理に取り掛かろうと、ボウルや卵、ミルクといった材料が手際よく用意されていく。
「それじゃあ、まずは卵を割って、メープルシロップを加えてしっかり混ぜ合わせるところから始めよっか!」
イチカが声をかけると、アリスとエリスは「はいっ!」と元気よく返事をして、慎重に卵を割りほぐし始めた。
ボウルの中で卵とミルク、そして甘いメープルシロップが優しく混ざり合い、厨房にほのかな甘い香りが漂い始める。
しっかりと混ぜ合わせた液を丁寧にこし、型に流し込み、蒸し器でじっくりと火を通していく。
――やがて、厨房全体に甘く香ばしいカラメルの匂いが広がり、蒸し器から型がそっと取り出された。
粗熱を取り、しっかりと冷やし固められたプリンを、緊張と期待の入り混じった眼差しで見つめる三人。
イチカがそっとお皿をひっくり返し、型を外すと、ぷるん、と艶やかに揺れる黄金色のプリンが姿を現した。
「わあ……! すごい、綺麗にできました!」
アリスがパッと両手を合わせて歓声を上げる。エリスも「わぁ、すごーい! こんなに綺麗でぷるぷるな仕上がりになるなんて感動しちゃうわ!」と、両手を叩いて大喜びした。
さっそくスプーンを入れ、一口分をすくい取って口へと運ぶ。
口に入れた瞬間、なめらかな口溶けとともに、卵とミルクの優しいコク、そしてほろ苦いカラメルの風味がふわりと広がった。
「ん〜! とろけるっ……! とっても美味しいわ!」
イチカが目を輝かせて感動すると、アリスも目を丸くしながら小さくうっとりとうなずいた。
「本当です……! すっごく甘くて、口の中でふわっとなくなっちゃいます……」
エリスも一口食べて「はぁぁ、美味しい……!」と満面の笑みを浮かべ、三人は自分たちの手で作った極上のスイーツを囲んで、至福のひとときを心ゆくまで堪能するのであった。
――美味しいプリンをすっかり食べ終えたあと、イチカがエリスに「お父様のところへ持って行きましょう」と席を外したことで、アリスの一人になる時間が訪れた。
周りを見回すと、ふさふさとした毛並みの愛らしい子グマのルナが、ウッドデッキデッキて日向ぼっこをしている姿が目に入った。
「あ……っ、ルナちゃん……!」
アリスは目をパチクリとさせ、思わず小さく声を漏らした。
「ルナ、おいで。美味しいプリンだよ」
アリスはそう言って、手元に用意していた小さな小皿をそっと差し出す。
ルナはくんくんと鼻を鳴らし、テテテと短い足で愛嬌たっぷりに近寄ってきた。
アリスが小さじですくい取ったおやつを差し出す。
ルナは「くぅーん」と嬉しそうな鳴き声をあげながら、パクッとそれを美味しそうに頬張った。
満足そうに小さく尻尾を揺らしながら食べるその姿に、アリスはすっかり心を奪われたように頬を緩ませる。
「ルナ、うちに来たら毎日甘いものが食べ放題だよ……」
と前回に引き続き、よからぬ事を企んでいるアリスだった。




