表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/27

コンティニュー

約5分で読める短編ホラーです。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。



「このゲーム、絶対に最後までやるな」


中古ゲームショップの片隅で見つけた古びたゲームソフトには、マジックでそう書かれていた。


大学生の悠斗は苦笑した。


「こういう演出、嫌いじゃないな」


ケースにはタイトルすらない。ただ黒いラベルに白い文字で「CONTINUE」とだけ印字されている。


家に帰り、レトロゲーム機に差し込む。


画面は真っ暗。


やがて赤い文字が浮かぶ。


『プレイヤー名を入力してください』


「ユウト」


入力すると、ゲームが始まった。


内容は簡単だった。


夜の町を歩き、出口を探すだけ。


敵もいない。


音楽もない。


ただ、自分の足音だけが響く。


十分ほど歩いたところで、画面の隅に見慣れない建物が現れた。


病院だった。


入口には立て札。


『入ると戻れません』


ゲームなんだから当然だろ、と笑って中へ入る。


受付には誰もいない。


奥から「カタン」と何かが倒れる音。


その瞬間。


現実の部屋でも、廊下から同じ音が聞こえた。


「……?」


振り返る。


何もない。


気のせいだと思いゲームを続ける。


病院の三階。


廊下の奥に、白いワンピースの少女が立っていた。


近づくたびに画面が乱れ、少女の顔だけが少しずつ鮮明になる。


あと一歩。


少女が口を開いた。


「後ろ。」


背筋が凍る。


ゆっくり振り返る。


もちろん誰もいない。


「……くだらない。」


笑い飛ばして画面へ戻る。


そこに少女はいなかった。


代わりに画面いっぱいに、自分の部屋が映っていた。


ゲーム画面の中にあるのは、今まさに自分が座っている部屋。


テレビ。


机。


カーテン。


そしてゲームをしている自分の後ろ。


暗い廊下から、誰かがこちらを覗いている。


悠斗は息を止めた。


反射的に振り返る。


何もいない。


急いで画面を見る。


今度は、ゲームの中の自分が振り返っている。


その後ろには誰もいない。


「……なんだよ。」


安心した、その瞬間だった。


ゲーム画面の自分が、こちらを見て笑った。


画面越しに目が合う。


そしてゆっくりと口を動かした。


「今はね。」


テレビが真っ暗になる。


ゲームオーバー。


画面には選択肢。


CONTINUE?


YES


NO


もちろんNOを選ぼうとした。


だがカーソルは動かない。


勝手にYESへ移動する。


決定音。


ゲームは再開された。


今度の主人公は、自分ではなかった。


暗い部屋でゲームをしている、知らない男。


その背後には、長い髪の女が立っている。


男は気づかない。


画面の端に文字が表示された。


『Aボタンで教える』


悠斗は押さなかった。


すると女は男の耳元で何かを囁き、男は椅子から消えた。


画面が暗転。


次のステージ。


また知らない誰か。


また背後に女。


何人も、何人も。


誰も助からない。


最後のステージ。


主人公の名前。


ユウト


「やめろ……。」


部屋の配置。


机。


テレビ。


カーテン。


全部同じ。


ゲームの中の悠斗はゲームをしている。


その後ろ。


ゆっくりと女が近づく。


画面には表示。


『Aボタンで教える』


震える指で押した。


ゲームの中の悠斗が振り返る。


誰もいない。


そして画面の中の悠斗が、テレビ越しにこちらを見る。


恐怖で固まる現実の悠斗。


ゲームの中の悠斗は、涙を流しながら叫んだ。


「逃げろ!」


同時にテレビが消えた。


部屋は静寂に包まれる。


助かった。


そう思った。


背後で、ゲーム機の電源がひとりでに入る。


テレビには真っ赤な文字。


『プレイヤー交代』


翌日。


悠斗の部屋は空だった。


警察は失踪事件として処理したが、部屋には争った跡もなかった。


残されていたのは、ゲーム機に差さった一本のソフトだけ。


ラベルには、昨日までなかった文字が増えていた。


「CONTINUE」


その下に、小さくこう書かれていた。


『現在のプレイヤー:ユウト』

読んでいただき、ありがとうございました。

楽しんでいただけたら、感想や評価をいただけると今後の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ