最後までご覧ください
約5分で読める短編ホラーです。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
大学一年生の蓮は、動画投稿サイトを見るのが日課だった。
怪談、心霊スポット、都市伝説。
おすすめに出てくるものは片っ端から再生していた。
ある夜。
関連動画の一番下に、見覚えのないサムネイルが表示された。
タイトルはたった一行。
『最後までご覧ください』
投稿者名は「000000」。
再生回数は0回。
「こんなのあるんだ」
軽い気持ちで再生した。
映像は薄暗い住宅街を、誰かが歩いているだけだった。
画面は揺れ、息遣いだけが聞こえる。
十分ほど歩き続ける映像。
何も起こらない。
「つまらないな……」
閉じようとした瞬間、画面に赤い文字が浮かんだ。
『あと少しです』
気味が悪くなりながらも、そのまま見続ける。
やがて撮影者は一軒の家の前で立ち止まった。
玄関の表札が映る。
そこには、
『佐藤』
と書かれていた。
「偶然か……」
蓮は笑った。
自分の名字も佐藤だったからだ。
動画はそこで終わった。
翌日。
大学から帰る途中、蓮は見覚えのある景色に気づく。
電柱。
曲がり角。
古びた自販機。
昨日の動画と同じだった。
気のせいだと思い歩き続ける。
すると目の前に、一軒の家が現れた。
表札には、
『佐藤』
蓮の家だった。
心臓が大きく跳ねた。
「……なんで?」
急いで帰宅し、動画を見返す。
すると再生回数は1回になっていた。
コメント欄は空白。
投稿日時も表示されていない。
映像を止めながら確認すると、最後の数秒だけ変わっていた。
玄関のガラスに、人影が映っている。
黒い服を着た誰か。
カメラを持って立っている。
蓮は昨日、その影など映っていなかったことを覚えている。
鳥肌が立った。
その夜。
玄関のインターホンが鳴る。
モニターを見る。
誰もいない。
だが録画映像を再生すると、一瞬だけ黒い服の男が映っていた。
動画の人影と同じだった。
翌日。
もう一度動画を開く。
映像が変わっている。
今度は家の中から撮影されていた。
玄関のドア越しに、誰かが立っている。
チャイムが鳴る。
ピンポーン。
動画の中でドアがゆっくり開く。
その瞬間、画面は真っ暗になった。
そして文字。
『次はあなたです』
蓮は慌てて動画を閉じた。
しかしスマートフォンが勝手に再生を始める。
テレビも。
パソコンも。
家中の画面という画面で同じ動画が流れ始めた。
映像はさらに続いている。
カメラは廊下を歩き、
階段を上り、
まっすぐ蓮の部屋へ向かってくる。
動画の中の撮影者が、部屋のドアノブに手を掛けた。
その瞬間――
現実のドアノブも、
ガチャ。
と音を立てて回った。
蓮は息を殺した。
鍵は閉まっている。
誰も入れるはずがない。
それでも、ドアの向こうから聞こえる。
スマートフォンで流れている動画と同じ足音が。
コツ。
コツ。
コツ。
画面の人物が一歩進むたび、
現実でも一歩近づいてくる。
動画は最後の数秒に差しかかった。
撮影者がゆっくりとカメラを持ち上げる。
黒い画面に映り込んだのは――
震えながらスマートフォンを見つめる、今この瞬間の蓮だった。
そこで動画は終わった。
翌朝。
動画は跡形もなく消えていた。
投稿者「000000」も存在しない。
ただ一つだけ残っていたものがある。
蓮のスマートフォンの動画フォルダ。
そこには昨夜撮った覚えのない一本の動画が保存されていた。
タイトルは――
『最後までご覧ください』。
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