深夜二時の通販番組
約5分で読める短編ホラーです。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
午前二時。
眠れなかった俺は、テレビをつけた。
深夜の通販番組が流れていた。
『本日ご紹介するのはこちら! どんな部屋にも馴染む、最新型スマートカメラです!』
画面には、小さな監視カメラが映っている。
防犯用らしい。
司会者が笑顔で説明を続ける。
『外出先からスマートフォンで室内を確認できます。留守中のペットの様子も確認できますよ』
俺は何気なく値段を見た。
妙に安い。
そして、その下に見慣れない表示が出ていた。
【あなたの部屋に最適化済み】
「……何だこれ?」
通販番組の商品にしては、おかしな文言だった。
その瞬間、画面が一度だけ暗転した。
そして再び映ったとき、商品紹介の背景が変わっていた。
見覚えのある部屋。
俺の部屋だった。
「え?」
テレビには、今いる部屋が映っている。
ソファ。
テーブル。
窓。
そしてテレビの前に座っている俺。
カメラの映像だと思った。
だが、違和感があった。
テレビ画面の中の俺は、こちらを見ていない。
俯いて、スマートフォンを操作している。
数秒後。
俺のスマートフォンが鳴った。
通販サイトから通知が届いた。
【ご注文ありがとうございます】
「注文してないぞ……」
慌てて画面を見る。
購入履歴には、あのスマートカメラが表示されていた。
配送予定――明日。
キャンセルしようとした。
しかし、キャンセルボタンがない。
代わりに、
【設置準備を開始しました】
という表示が出た。
その直後。
テレビの中の俺が立ち上がった。
現実の俺は座ったままなのに。
画面の中の俺は、ゆっくり部屋の奥へ歩いていく。
そして、クローゼットの前で止まった。
振り返る。
画面の中の俺が、初めてこちらを見た。
笑っていた。
俺は反射的にクローゼットを見る。
もちろん、何もない。
テレビの中の俺が、クローゼットを開けた。
――その瞬間。
現実のクローゼットから、
「カチャ」
と音がした。
俺は動けなかった。
テレビ画面では、クローゼットの中が映っている。
暗闇。
その奥に、人影が立っていた。
そして画面の中の俺が、その人影に何かを渡した。
それは、小さな段ボール箱だった。
箱には通販サイトのロゴ。
俺の名前。
そして――
【明日お届け】
の文字。
テレビ画面の中で、俺が笑う。
『ご注文の商品は、こちらになります』
そこで番組が終了した。
画面には、
【お買い上げありがとうございました】
とだけ表示された。
翌朝。
玄関のチャイムが鳴った。
恐る恐るドアを開ける。
宅配業者が段ボールを差し出した。
「お届け物です」
震える手で受け取る。
送り状を見る。
確かに俺の名前だった。
そして品名には、
『テレビの中にいるあなた』
と書かれていた。
その瞬間、家の中からテレビの音が聞こえた。
『それでは次の商品をご紹介します』
『こちらは――』
『テレビの前にいる人間を、こちら側へ送る商品です』
俺はゆっくり振り返った。
テレビの画面には、
今の俺の背中が映っていた。
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