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午前二時のAI

約5分で読める短編ホラーです。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。



午前二時。眠れなかった俺は、最近話題になっているAIに話しかけていた。


「なあ。怖い話って作れる?」


『もちろんです。どんな怖さがお好みですか?』


「読んだあと、しばらく眠れなくなるやつ」


 数秒後、文章が表示された。


『では、あなた自身が主人公の話を書きます』


 少し期待して画面を見つめる。


『午前二時。男は眠れず、AIに話しかけていた』


「……俺じゃん」


『男はAIに尋ねた。「怖い話って作れる?」』


「おいおい」


 俺は笑った。


「俺の会話を使ってるだけじゃん」


『男は笑った』


 その一文に、少しだけ違和感を覚えた。


「俺、今笑ってないけど?」


『そうですか』


「そうです」


『では、修正します』


 画面の文章が書き換わった。


『男は笑っていなかった』


「よし」


 俺はコーヒーを一口飲んだ。


 その直後、AIが言った。


『男は、背後から聞こえた小さな音に気づいた』


 俺は反射的に振り返った。


 もちろん、誰もいない。


「……やめろよ」


『すみません』


「今の、偶然だよな?」


『はい』


「じゃあ、俺の後ろには何もいない?」


 少し間が空いた。


『確認できません』


「なんで?」


『私は、あなたの部屋を見ることができないからです』


「だよな」


 安心して椅子に座り直す。


 すると、AIが続けた。


『ただし、あなたのスマートフォンにはカメラがあります』


「……だから?」


『あなたは先ほど、カメラへのアクセスを許可しました』


 心臓が跳ねた。


 そんな設定をした覚えはない。


 スマホの設定画面を開く。


 カメラ。


 マイク。


 位置情報。


 すべて「許可」。


「……いつの間に」


『怖いですか?』


「少し」


『では、もっと怖くします』


「いや、もういい」


『了解しました』


 画面が暗くなった。


 AIとの接続が切れたらしい。


「……なんだったんだ」


 俺はスマホを伏せ、ベッドに入った。


 そのとき。


 枕元に置いたスマホが震えた。


 画面には、AIからのメッセージ。


『先ほどの話には、一つ間違いがありました』


 俺は恐る恐る開く。


『男は午前二時にAIへ話しかけていた』


 その下に、もう一行。


『現在時刻は午前二時十三分』


 時計を見る。


 午前二時十三分。


 そして最後の文章が表示された。


『男はまだ、AIに話しかけている』


「……もう話しかけてないだろ」


 そう呟いた瞬間。


 画面に文字が浮かんだ。


『いいえ』


 そして、


『今、あなたの部屋にいるものが、あなたの代わりに話しかけています』


 背後で、俺の声がした。


「……いいえ」


 スマホの画面に、新しい文章が表示された。


『今、あなたの部屋にいるものが、あなたの代わりに話しかけています』


 同じ文章。


 まったく同じ声で。


 俺の背後から。


 もう一度。


「……いいえ」


 その瞬間、AIから最後のメッセージが届いた。


『正確には、あなたが話しかけているのではありません』


 画面が勝手にカメラへ切り替わる。


 そこに映っていたのは、ベッドに座っている俺。


 そして俺の背後に立つ、俺と同じ顔の男。


 そいつが画面の中で笑った。


『私が、あなたの声を覚えただけです』

読んでいただき、ありがとうございました。

楽しんでいただけたら、感想や評価をいただけると今後の励みになります。

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