最後の部員
約5分で読める短編ホラーです。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
高校二年の夏、俺は幽霊部員だった写真部を辞めることにした。
部員は俺を含めて三人。顧問はほとんど顔を出さず、活動内容も自由。そんな緩い部活だったが、三年生の先輩が一人、毎日欠かさず部室に来ていた。
先輩は無口で、いつも古いカメラを持っていた。
「今日も撮るんですか?」
「ああ。記録しておかないと」
何を記録するのか、先輩は教えてくれなかった。
ある日、俺は部室の棚から一冊のアルバムを見つけた。
中には、写真部の集合写真が何枚も貼られていた。
どの写真にも、同じ場所で、同じように笑う部員たちが写っている。
ただ、一つだけおかしなことがあった。
写真を撮った日付が、すべて同じだったのだ。
十年前の七月十五日。
俺は先輩に尋ねた。
「これ、何なんですか?」
先輩はアルバムを見るなり、顔色を変えた。
「……見たのか」
その声が、いつもと違っていた。
先輩はアルバムを取り上げ、棚の奥に押し込んだ。
「もう帰れ。明日から部室に来るな」
翌日、俺は部室に行かなかった。
しかし、放課後になるとスマホに先輩からメッセージが届いた。
『今日、来られるか?』
断ろうとした瞬間、もう一通届いた。
『頼む。今日で最後なんだ』
俺は仕方なく部室へ向かった。
扉を開けると、先輩がカメラを構えて立っていた。
「座ってくれ」
部室の中央には椅子が三つ並んでいた。
俺はそのうちの一つに座った。
「ほかの二人は?」
先輩は答えず、カメラをこちらに向けた。
「笑ってくれ」
シャッター音が響いた。
その瞬間、部室の蛍光灯が消えた。
暗闇の中で、誰かが俺の隣に座る気配がした。
「遅かったな」
知らない男の声だった。
続いて、反対側から女の声がした。
「これで、やっと揃ったね」
俺は立ち上がろうとした。
しかし、身体が動かない。
先輩が懐中電灯をつけた。
その光に照らされた先輩の顔は、ひどく青白かった。
「ごめんな」
先輩はカメラを見つめた。
「俺も、ずっとこうしてきたんだ」
翌朝、写真部の部室で、先輩の遺体が発見された。
机の上には一枚の写真が残されていた。
写真には、三人の高校生が写っていた。
中央には、笑顔の俺。
その両隣には、見知らぬ男女。
そして、写真の裏には、こう書かれていた。
『写真部、最後の活動』
警察は、俺の行方を捜している。
だが、俺はもう学校にはいない。
写真の中で、二人の部員と一緒に座っている。
先輩は、今も部室の隅でカメラを構えている。
「次の部員が来るまで、ここで待とう」
先輩がそう言うと、俺の隣の男が笑った。
「今度は、何人入るかな」
俺は答えられなかった。
だって、部室の扉の向こうから、誰かが入ってくる音がしたから。
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