4番目のかくれんぼ
約5分で読める短編ホラーです。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
「もう帰るぞ!」
夕焼けの公園で、お父さんの声が聞こえた。
「あと一回だけ!」
小学五年生の悠斗は、友達三人とかくれんぼをしていた。
鬼は健太。
「十数えるからな!」
悠斗は急いで公園の裏にある古い倉庫へ向かった。そこは立入禁止の札がぶら下がっていて、みんなから「入っちゃダメ」と言われている場所だった。
錆びた扉の隙間から中へ入ると、薄暗く、土とカビの臭いが鼻をつく。
(ここなら見つからない。)
息を潜めていると、奥から小さな声がした。
「……みつけた。」
悠斗は肩を震わせた。
「健太?」
返事はない。
気のせいだと思ったその時、また声がした。
「ぼくも……かくれてる。」
暗闇の奥に、小さな男の子が立っていた。
白い半袖、泥だらけの半ズボン。顔は影になって見えない。
「君、誰?」
「ずっと……みつからない。」
そう言うと、男の子は倉庫のさらに奥へ歩いていった。
その瞬間、外から健太の声が響いた。
「悠斗ー! もう帰るぞー! お前、どこー!」
悠斗は慌てて外へ飛び出した。
「なんだよ、急に。」
「中に誰かいた。」
三人で中をのぞいたが、誰もいない。
「またまた。」
笑われたが、悠斗だけは納得できなかった。
その夜。
布団に入ると、窓の外から小さな声がした。
「まだ……みつけて。」
カーテンを開けても誰もいない。
翌日、学校へ行く途中、公園の前を通ると、昨日の男の子が倉庫の前に立っていた。
目が合った。
男の子は口だけで言った。
「きょうも。」
瞬きをした瞬間、姿は消えていた。
気味が悪くなった悠斗は家へ帰ると、おじいちゃんに話した。
おじいちゃんは急に黙り込み、古いアルバムを持ってきた。
一枚の写真。
そこには今の公園が写っていた。
そして、昨日見た男の子が笑っている。
「この子は四十年くらい前に行方不明になった子だ。」
「え……。」
「かくれんぼをしていて、最後まで見つからなかったそうだ。」
警察も消防も探した。
池も森も調べた。
だが、とうとう見つからなかった。
「だから昔から、この公園では四人で遊ぶなと言われている。」
「なんで?」
「四人で遊ぶと、一人増えるからだ。」
その日の夕方。
健太から電話が来た。
「今日も遊ぼうぜ! 翔太と直樹もいる。」
「四人じゃん。」
「違うよ。」
健太は不思議そうに笑った。
「悠斗を入れて三人だけど?」
悠斗の背筋が凍った。
昨日は確かに四人で遊んでいた。
健太。
翔太。
直樹。
そして自分。
なのに、みんなの記憶では最初から三人だった。
震える手で昨日撮った写真を開く。
夕焼けの公園。
笑っている健太たちの後ろ。
倉庫の扉の前に、白い服の男の子が立っている。
そして写真の端には、小さく手書きのような文字が浮かんでいた。
『やっと、みつけてもらえた。』
その日から悠斗の姿を見た者はいない。
夕暮れになると、あの公園では子どもが四人でかくれんぼをしているという。
鬼が数え終える頃には、必ず五人になっているらしい。
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