噛んだら最後
約5分で読める短編ホラーです。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
コンビニで新発売のグミを見つけた。
透明な袋の中に、赤いグミが十個。形は全部違っていて、商品名はただ一言――『オマエノアジ』。
変な名前だと思ったが、口コミでは「今まで食べたグミで一番うまい」と評判だった。
家に帰り、さっそく一粒口に入れた。
甘い。
そのあと、ほんの少しだけ鉄の味がした。
「……血?」
気のせいだと思って噛み砕く。
すると、スマホが震えた。
知らない番号からメッセージが届いている。
『一個目、食べたね』
背筋が冷たくなった。
いたずらだろう。
そう思って画面を閉じようとした瞬間、二通目が届いた。
『次は、左手』
ぞっとして左手を見る。
何もない。
気味が悪くなり、残りのグミをゴミ箱へ捨てた。
その直後。
口の中で、何かが動いた。
「……え?」
舌の裏に、硬いものが触れている。
吐き出してみると、それは小さな赤いグミだった。
袋に入っていたものと同じ形。
だが、さっきは確かに全部捨てた。
スマホがまた震える。
『二個目』
思わずグミを床に叩きつけた。
すると――
グミが、床の上でゆっくり動いた。
まるで生き物のように。
そして、こちらへ這ってくる。
逃げようとした瞬間、左手に激痛が走った。
「痛っ!」
見ると、人差し指の先が赤く膨らんでいる。
皮膚の下で何かが動いていた。
指先が裂ける。
ぽろり、と赤い塊が落ちた。
グミだった。
スマホに三通目のメッセージ。
『三個目。あと七個』
震える手で袋を確認する。
捨てたはずの袋が、テーブルの上に戻っていた。
中には九個。
そして、一番下に紙が入っている。
震える文字で、こう書かれていた。
『全部食べ終わったら、最後に一個だけ残ります』
意味が分からない。
だが、その瞬間。
背後から、母の声がした。
「何それ。おいしそうね」
振り返る。
母が、笑っていた。
口いっぱいに赤いグミを頬張りながら。
「これ、あなたの味がする」
母の口から、赤い液体が垂れた。
そしてスマホに、最後のメッセージが届く。
『一人分、増えたね』
その瞬間、テーブルの上のグミが十個に戻った。
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