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ルール違反

約5分で読める短編ホラーです。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。



 そのカードゲームには、たった三つだけルールがあった。


 一つ。自分のターン以外にカードを触ってはいけない。


 二つ。捨てたカードを拾ってはいけない。


 三つ――ゲームを途中でやめてはいけない。


 大学生の翔太は、友人三人と深夜にカードゲームをしていた。


 誰かが持ってきた、古い海外製のゲームだった。


「このゲーム、負けるとどうなるの?」


 翔太が聞くと、友人は笑った。


「別に。最後までやればいいだけ」


 最初のゲームは普通だった。


 ところが二戦目、翔太がカードを捨てた直後だった。


 床に落ちたカードが、一枚だけ裏返った。


「……あれ?」


 翔太は反射的に手を伸ばした。


「触るな!」


 友人の声が飛んだ。


 しかし遅かった。


 翔太の指がカードに触れた瞬間、部屋の電気が消えた。


 数秒後、明かりが戻る。


「……何だったんだ?」


 友人たちは黙っていた。


 そして、テーブルの上を見ていた。


 翔太は気づかなかった。


 さっきまで四人だったのに、椅子が一つ増えている。


 五つ目の椅子。


 そこには誰も座っていない。


「続けよう」


 友人の一人が呟いた。


 ゲームは再開した。


 次のターン。


 翔太の手札に、見覚えのないカードが混ざっていた。


 黒いカード。


 名前は――『違反者』。


 効果欄には一文だけ。


 『ルールを破った者の隣に座る』


 翔太は笑った。


「これ、誰が入れたんだよ」


 誰も答えない。


 そのとき。


 隣の空席から、椅子が軋んだ。


 ギシッ。


 まるで誰かが座ったように。


 翔太は見ないようにした。


 ゲームを続ける。


 すると友人の一人が突然、手札を床に落とした。


「あ……」


 彼は拾おうとした。


「やめろ!」


 翔太が叫ぶ。


 だが、その手がカードに触れた。


 瞬間。


 友人の姿が消えた。


 椅子だけが残った。


 テーブルの上には、彼の名前が書かれたカードが一枚。


 『脱落』


 残った二人は悲鳴を上げ、立ち上がった。


 しかし翔太だけは気づいていた。


 立ち上がった瞬間、ゲームのカードが一斉に裏返ったのだ。


 そこには同じ文章が書かれている。


 『ゲームを途中でやめてはいけない』


「……座れ」


 翔太は震えながら言った。


「座らないと……次は誰が消えるかわからない」


 二人が泣きながら椅子に座る。


 そしてゲームを続けた。


 何時間経ったのかわからない。


 最後に残ったのは翔太だった。


 目の前には一枚のカード。


 『勝者』。


 震える手で、それをめくる。


 そこには短い文章が書かれていた。


 『勝者は、次のゲームの参加者を一人選ぶ』


 翔太のスマホが鳴った。


 画面には、母親からの着信。


 翔太は震えながら電話に出た。


「翔太? 今どこにいるの?」


「……家に帰るよ」


「そうじゃなくて……」


 母親の声が震えている。


「さっきから、あなたの部屋で誰かがカードを切る音がするんだけど……」


 翔太はゆっくり振り返った。


 五つ目の椅子に座っている白い顔の男が、カードを切っていた。


 そして男は、笑いながら一枚を翔太の前へ滑らせた。


 カードには、こう書かれていた。


 『次の参加者:母親』

読んでいただき、ありがとうございました。

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