滑り台の下
約5分で読める短編ホラーです。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
小学五年生の大輝は、放課後になると近所の「桜ヶ丘公園」で友達と遊ぶのが日課だった。
その公園には古いすべり台があり、下の部分は錆びて赤茶色になっていた。大人たちは危ないから近づくなと言っていたが、子どもたちは秘密基地のように使っていた。
ある夕方、友達が先に帰り、大輝だけが公園に残った。
空はまだ明るいのに、公園には誰もいない。不思議なほど静かだった。
すると、すべり台の下から声が聞こえた。
「ねえ、かくれんぼしよう」
女の子の声だった。
大輝はしゃがみ込み、暗いすべり台の下をのぞいた。しかし誰もいない。
気のせいだと思って立ち上がろうとしたとき、もう一度声がした。
「見つけて」
今度ははっきり聞こえた。
怖かったが、少し気になった大輝は公園を探し始めた。
ブランコの後ろ。トイレの陰。砂場の横。
誰もいない。
そのたびに声だけが近づいてくる。
「まだだよ」
「ちがうよ」
「もっと近く」
日が沈み始め、公園の街灯がついた。
そのとき、大輝は気づいた。
砂場に小さな足跡がある。
裸足の足跡だった。
しかも、公園の真ん中から始まって、すべり台の下で途切れている。
大輝は息をのんだ。
その瞬間、背後で声がした。
「やっと見つけた」
振り向くと、誰もいない。
だが、地面を見ると、自分の足元にもう一つ、小さな影があった。
大輝の影の隣に、女の子の影が立っていた。
大輝は叫びながら家へ走った。
その日以来、二度と夕方の公園には行かなかった。
数年後、中学生になった大輝は、ふと思い出して公園のことを調べた。
昔の新聞記事に、小さな記事を見つけた。
「三十年前、桜ヶ丘公園で女児が行方不明。最後の目撃場所は、すべり台付近」
大輝は背筋が凍った。
記事の端には、白黒写真が載っていた。
笑っている女の子。
その顔を見た瞬間、大輝は息を止めた。
その子は、あの日から毎晩夢に出てくる女の子と、まったく同じ顔だった。
そして記事の下には、記者の手書きメモが印刷ミスのように残っていた。
『まだ、見つかっていない』
その文字を見た瞬間、大輝の部屋の窓の外から、小さな声が聞こえた。
「こんどは、ちゃんとかくれてね」
窓ガラスには、大人になった大輝の影と、もう一つ、小さな影が映っていた。
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