充電残量
約5分で読める短編ホラーです。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
午前二時、スマホの充電が十二パーセントになった。
明日は朝から仕事だ。寝る前に充電しておこうと思ったが、コンセントはベッドから遠い。
そこで、机の引き出しからモバイルバッテリーを取り出した。
古いものだった。
いつ買ったのかも覚えていない。けれど、まだ使える。
ケーブルを繋ぐ。
「ピッ」
スマホの画面に「充電中」と表示された。
その直後、モバイルバッテリーの残量が表示された。
――100%。
「珍しいな」
満充電のまま放置していたらしい。
スマホは十二パーセントから十三、十四と順調に増えていく。
ところが、五分ほど経ったところで妙なことに気づいた。
モバイルバッテリーの残量が、
100%から99%ではなく、
100%のままなのだ。
「まあ、古いから表示がおかしいのか」
気にせずスマホを操作していると、突然画面が暗くなった。
再起動すると、充電は止まっていた。
モバイルバッテリーを見る。
表示は――99%。
「ああ、やっぱり減ったか」
そう思った瞬間、スマホに通知が届いた。
知らない番号からだった。
《充電ありがとう》
意味が分からない。
その直後、また通知。
《あと一人》
背筋が冷たくなった。
冗談だと思って通知を消す。
すると今度は、モバイルバッテリーが勝手に点灯した。
残量――98%。
そしてスマホに、写真が一枚送られてきた。
暗い部屋。
ベッド。
机。
見覚えのある家具。
「……俺の部屋?」
撮影場所は、どう見ても自分の部屋だった。
そして、自分が写っていた。
ベッドでスマホを見ている自分。
そして、その背後に――
黒い人影が立っていた。
慌てて振り返る。
誰もいない。
もう一度スマホを見る。
写真が更新されていた。
今度は、さっきより近い。
人影がベッドの横まで来ている。
モバイルバッテリーの残量は97%。
そして通知。
《まだ足りない》
《この家にいる人の分》
その瞬間、廊下から母の声がした。
「……ねえ。誰かいる?」
母は一人暮らしのはずだった。
三年前に亡くなっている。
スマホが震えた。
最後の通知。
《一人分、追加しました》
モバイルバッテリーの残量が、
96%から97%へ戻った。
そして暗い画面に、カメラのような小さな赤い点が灯った。
今度は写真ではない。
スマホの画面いっぱいに、文字が浮かんだ。
《次は、あなたを充電します》
ベッドの下から、
ケーブルを引きずる音がした。
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