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画面の中の空室

約5分で読める短編ホラーです。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。



午前二時、マンション管理会社に勤める俺は、監視カメラの映像を確認していた。


担当は「404号室の前」。


最近、誰も住んでいないはずの部屋の前で、毎晩同じ時間に人影が映るらしい。


午前二時十七分。


廊下の奥から、女が歩いてきた。


404号室の前で立ち止まり、ドアを見つめる。


そして、カメラに向かって顔を上げた。


俺は眉をひそめた。


女の顔が、見えない。


正確には、顔の部分だけが異様に暗く潰れている。


「映像の不具合か?」


録画を巻き戻した。


女が廊下に入ってくる。


歩く。


止まる。


顔を上げる。


何度再生しても同じだった。


ただ、一つだけおかしなことに気づいた。


女がカメラを見上げるたび、ほんの少しずつ位置が違う。


最初はカメラから三メートル。


次は二メートル。


その次は一メートル。


「……近づいてる?」


嫌な汗が出た。


俺は別のカメラに切り替えた。


404号室の廊下を映すカメラは一台だけ。


なら、女がどこから来ているのか分からない。


そう思った瞬間、画面が一瞬乱れた。


そして、別の映像が映った。


管理室。


俺が今いる部屋だった。


「え?」


監視カメラの映像に、俺の背中が映っている。


俺は椅子に座っている。


画面の中の俺も、監視モニターを見ている。


だが、画面の中の俺は突然立ち上がった。


俺は動いていない。


画面の中の俺は、ゆっくりこちらを振り返った。


そして、カメラに向かって口を動かした。


『後ろ』


反射的に振り返った。


誰もいない。


ほっとして画面を見る。


そこには、女が立っていた。


管理室の映像。


俺の真後ろ。


顔のない女が、椅子に座る俺を見下ろしている。


俺は慌てて立ち上がった。


その瞬間、監視モニターが全部消えた。


静寂。


数秒後、一台だけ復旧した。


404号室前の映像だった。


そこには俺が立っていた。


画面の中の俺は、カメラを見上げている。


そして、口を動かした。


『見てる?』


俺は画面から目を離せなかった。


すると、画面の中の俺の後ろに女が現れた。


女は俺の肩に手を置く。


そして俺の耳元で何かを囁いた。


次の瞬間、画面の中の俺が笑った。


俺は怖くなってモニターの電源を抜いた。


真っ暗になった画面に、自分の顔が映る。


……その顔の後ろに、誰かがいる。


振り返れない。


すると暗い画面の中で、俺の口が勝手に動いた。


『やっと、画面の外に出られた』


その声は、俺のものではなかった。

読んでいただき、ありがとうございました。

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