表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/24

冷蔵庫の野菜室

約5分で読める短編ホラーです。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。



 その日、仕事帰りにスーパーへ寄った。


 一人暮らしの俺は、いつもカット野菜で済ませている。だが、その日はなぜか、丸ごとの野菜が目に入った。


 トマト、ニンジン、玉ねぎ、キャベツ。


 どれも妙に新鮮で、値段も安い。


 俺は適当にカゴへ放り込んだ。


 帰宅して冷蔵庫を開け、野菜室にしまおうとしたときだった。


 ――トントン。


 野菜室の奥から、小さな音がした。


「……?」


 閉める。


 また開ける。


 何もない。


 気のせいだと思い、そのまま眠った。


 翌朝。


 冷蔵庫を開けると、野菜室の中に昨日買った覚えのないキュウリが一本入っていた。


 不思議に思ったが、母が送ってきたのかもしれない。


 そう考えて、その日は仕事へ向かった。


 夜。


 帰宅して冷蔵庫を開ける。


 今度はキュウリが二本。


 昨日のものと合わせて、三本になっていた。


 そして、野菜室の奥には泥がついていた。


 床を見る。


 冷蔵庫から玄関まで、泥の跡が続いている。


「……なんだよ、これ」


 怖くなって電気を消した。


 すると――


 暗闇の中で、冷蔵庫がゆっくり開いた。


 野菜室から、何かが転がり出てくる。


 トマトだった。


 その表面には、黒い点がいくつも並んでいる。


 よく見ると、それは目だった。


 何十個もの小さな目が、俺を見ていた。


 その瞬間、背後から声がした。


「野菜、食べてくれてありがとう」


 振り返る。


 そこには、泥だらけの女が立っていた。


 顔は見えない。


 長い髪の隙間から、口だけが覗いている。


「でもね……」


 女が笑った。


「次は、あなたが育つ番」


 足元を見る。


 床から、細い緑色の芽が何本も伸びていた。


 それらは俺の足首に絡みつき、皮膚の中へ根を伸ばしていく。


 痛みに叫んだ。


 しかし、声は出なかった。


 翌朝。


 近所の人が、俺の部屋から異臭がすることに気づき、警察を呼んだ。


 部屋には誰もいなかった。


 ただ、冷蔵庫の野菜室だけが妙に大きく膨らんでいた。


 そして中には――


 見たことのない野菜が一つ。


 人間の顔そっくりの形をした、赤いトマトが入っていた。

読んでいただき、ありがとうございました。

楽しんでいただけたら、感想や評価をいただけると今後の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ