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ピュアハート~異世界に魔法聖女爆誕!~  作者: 初雪しろ


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ドレスアップ!

 土ごと自分が持ち上げられた事に気がついて一瞬混乱してしまう。

 あたしは周囲をみて反射的にだけれどぶつかるものが何もない方向に向かって転びそうになりつつ跳んだ。

 そして見事にヘッドスライディングのように地面に突っ込んだ。


「いったぁ……なんなの!?」


 そのまま倒れているのはやばいのはさすがにわかる。

 あたしはどうにかすぐに立ち上がって、さっきまで自分がいた方向を見る。


「うわぁ……」


 そこに現れた存在を見て思わずそんな声を出していた。

 いや、まああたしから見ると簡単に言えば――めっちゃでっかくて手の爪が鋭利すぎるモグラ。

 身長でいえばあたしの2倍ぐらいかな。

 横幅はさらに大きく感じて、あたしの全身はそのモグラの影にすっぽりと収まってしまうくらい。

 あたしは突然の状況にフリーズしてしまった。


「中庭に魔物がでたぞー!」


 思考まで止まりかけていたところでそんな男の人の声が聞こえて、頭を振って正気に戻る。

 そして声が響き渡ったあと、戦える冒険者達が中庭に来て魔物を囲むように武器を構えて集まり始める。

 モグラは体を完全に地上にでてきて集まってきた人達を観察するように視線を動かしていた。


「やばい。逃げるタイミングっていつ……ん?」


 あたしは正直なところ、この状況で邪魔にならずに逃げるタイミングというものがわからなかった。

 アニメとかでとっさに逃げたりすると、逆に物音に反応して狙われたりとかいう場面が浮かんでしまってどうしよう。

 ただ、手に持ったスマホが震えている事に気がついて少し冷静になった。


「今度は何。レーダーはもう見なくたってわかってるけど、何なの」


 せめて震えているのを止めようと画面をつけると、別のアプリからの通知だった。

 見覚えはもちろんないけれど、ホーム画面に知らぬ間に現れていたマークだった気がする。


 それはいいとして――。

『セイクリッド・ドレスアップの準備が完了しました』

「なにこれ? ……もしかして、能力の変身ってこれ!? ドレスアップって!?」


 一瞬、何を言っているかわからなかったけれどピンときてしまった。

 地下で見たあたしの能力――本当に文字通り変身しろということなのかな。

 ただ、あたしだって曲がりなりにも高校生なんだけど。アニメはともかく実写の特撮の変身でさえ本当に変身しているわけじゃないのなんてわかってる。

 だから――ピンとは来たものの実際の変身がどうなのか少し不安がよぎった。


 果たしてこのアプリをぶっつけ本番で使ってみていいのかどうか。

 そもそも変身したからってあたしは都合よく戦えるようになれるのか。

 それにこんなに人が集まってきてしまった状況で万が一が起きたら――そんな悩みが数秒頭を埋めた時だった。

 獣の雄叫びとでも言うべき声が響き渡り、あたしの真横を人が通り過ぎた。

 いや、吹き飛ばされてあたしの横を通り過ぎてそのまま壁にぶつかった。


「がはっ」

「だ、大丈夫ですか!?」


 思わず地面に落ちたその人に駆け寄って肩を少し触って揺する。

 どうやら意識は失ってしまったけれど息はしていた。


「いや、これあたしがここで変身したところでどうにかなるの?」


 そう思いつつ中庭の魔物のほうへと視線を向けると他にも人が倒れていたり、負傷した人と新たにやってきた人が入れ替わりつつ戦っている。

 だけど、あたしでもわかる――攻撃が通じていない。

 いや、無傷ではないんだとは思うけれど決定打になっていない。

 あたしはエミリアの言葉を思い出す。


『通常の魔法や攻撃がかなり効果が薄くなってしまったりするんです』


 神官の人や特定の人が対処すると言っていたけれど――多分、強い人は目撃例のあった南の対処にすでに行ってる気がする。

 現にこの場に見た目からわかる神官はいない。


「誰か教会に連絡を! 神官がくるまで耐えるぞ!」


 そんな言葉を聞いてか負傷はしているが走るのには支障のない人が城の中へと走っていく。


「間に合わない」


 あたしは無自覚に呟いていた。

 そして、握っているスマホを改めて見た。

物語で見るものとして楽しんでいた。子ども心に憧れは持っていた。

 けれど、現実に戦うなんて未だに想像はつかない――でも、今この場でまともにあれを相手できる可能性があるのはこれしかない。

 そうだとしたらあたしがやらずに誰がやる。

 現実味がない――そんなのは異世界に来ている時点で考えても無駄だ。

 それに、どうせ今日じゃなくてもいつかは戦わないと帰ることは出来ない。


「ふっきれろあたし、変身!」


 あたしは無理やり自分に決断させて通知からスマホのアプリを起動した。

 ――が、数秒すぎても何も起こらない。


「ちょっ、なんで!? 普通こういうのって起動したら変身できるとかじゃないの!?」


 あたしは思わずスマホ画面を見る。

 アプリは起動していた。

 画面には『セイクリッド・ドレスアップ』の文字とマイクのマーク――ってもしかして、これって。


「音声認識!?」


 わざわざ声に出して変身ってドラマとかアニメだからじゃないんだよ!?

 現実に変身するうえでスマホ使うならワンタップってよくない!?

 それこそ見栄えとわかりやすさのために叫ぶとかそういうものじゃないの?

 本当に必要なの? いや、言ってる場合じゃないんだけど……そうなんだけど!


「もう、言えばいいんでしょ! セイクリッド・ドレスアーップ!!」


 あたしはやけくそ気味に叫ぶ。

 その瞬間、あたしは光りに包まれた。

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