黒の根っこ
隠れる場所も見つからずに開けた大地を小走りだしてから数分ほどがたった。
正直なところ、襲われずに進めていることが違和感すらある。
「ボク的には嫌な予感がするんだけど」
「あたしもだけど……足を止めたところで良いこともないんじゃない」
「そうだよね。少なくとも気配? なんか感じるそれは大きくなってきてるから本命には近づいてきてるんだろうけど」
真琴の言う通りで確かに黒の魔力は徐々に強く感じ取れてきている。
だからこそ敵がなんでこんなにもいないのかがわからない。
もちろんあたし達は敵が隠れているのを見つける能力に関しては、かなり低いと言えるとは思う。
だって、そんな能力を身につける必要のない世界で生きてたんだから。
それにしたって、隠れる場所は少ないはず――なのに魔物がいない。
違和感を覚えながらも足を止めずに大きな黒の魔力の元へと走り続けた。
そして、おそらくこの場所における大本といえる目的地へとたどり着いたけど……。
「あたしたちだからなのかわからないけど……すごい、煙が吹き出してるよね」
「うん。温泉地とでも言えるぐらいに」
そこにあったのは地面から盛り上がった太い木の根っことでも言えるような黒い塊だった。
大きさは木の根っこというには大きすぎるけど。
「世界樹の根っこ本体だとしても、ここまで真っ黒なのはおかしい……ってことのはずだよね?」
真琴はその塊を遠巻きに眺めながらそう聞いてくる。
「多分……でも、世界樹の根って黒の魔力をだしているのがおかしい状態であって、普段はむしろ必要だとしたらあたしたちが切って解决ってわけにはいかないよね」
「ボクもそれで済むなら楽そうだけど。この規模の浄化ってどうやるんだろう……」
今までやってきた浄化は大きくても動物がそのまま大きくなったようなものだった。
この根っこはその倍があるだろうし、魔力の濃度に至っては段違いと言わざるを得ないほど多い。
「近づいてみる?」
「ボクが前でいく。パット見は周りにも魔物もいないし……それがおかしいと言われたらそうなんだけど」
「あたしもいつでも変身はできるようにしておく」
あたし達は戦えるような準備をしてからゆっくりと世界樹の根へ近づく。
そしてもう少しで手で触れられるかもしれないという距離まで近づいた時だった。
根から今までよりも色が濃く魔力の気配も強い煙を吐き出し始めた。
あたし達は反射的に数歩後ろに下がって様子を見ていると、煙は空中にたまりだしたかと思うとある程度の量になって地面に降りてきた。
風が吹いてないにしてもおかしな煙の集まり方をしているけど――嫌な予感がする。




