鎧を着た魔物
煙は根っこを守るかのように集まっていく。
あたし達はどうしていいかわからず警戒してそれを見守るしかなかった。
そして地面の上に固まった煙は不自然に何かを形どるように動き出していく。
「あれはあんまり放っておかないほうが良さそうだけど……」
「でも、煙の状態だと攻撃って効くの? あたしの魔法を試す方法もあるけど、根っこの浄化を考えると消耗もある程度は抑えないと」
「ボクの武器にも魔力は籠っているし効果があるかも知れないけど。そもそも毒だったら近づいたら不味いよね」
「うん……」
結局、見守るしかない状態になった。
煙は更に増えていきそして自然に集まるには不自然としか言いようのない形になると最後に周囲に魔力を解き放った。
衝撃波のように飛んできた魔力に思わず一瞬気圧されて目を閉じてしまい次にその煙があった位置を見ると初めて見るような魔物が立っていた。
今までの魔物とは明らかに違う圧を感じる。
「えっと、あれってボクたち的にいえば……ケンタウロス?」
真琴が指を指しながらそう言った。
そこに立っていたのは、たしかに下半身が馬のように見えながら上半身といえる位置に人の上半身がついているファンタジーや神話にでてくる存在のケンタウロスだった。
ただ、あたしとしては違和感が悪い方面ですごい。
「弓とかじゃなくて明らかに剣持ってる上に上半身はガチガチに鎧装備してない?」
人間といえる部分は黒い鎧に包まれていた。
丁寧に頭もフリフェイスのものを装備している。
「ボクの攻撃は下半身の馬の部分を狙わないといけなさそう。ただ、あの足で蹴られたらひとたまりもないよね」
馬の脚力で蹴られたらどうなるかはイメージしやすかった。
いくら聖女の力で守りを固めたところで数発が限界だと思う。
魔物はゆっくりとこちらをむく。
そして、剣を構えると――真っ直ぐにこちらへと向かって走ってきた。
「やるしかないみたいだねというか、馬の下半身だからはやい!?」
真琴はそう言いつつ武器を構えながら右へ向かって走り出した。
同じ方向に走ってもただの鬼ごっこになるか。
あたしはそう判断して左へと走りだしつつ、スマホを取り出す。
全部の力使い切るわけにはいかなくてもここで出し惜しみしてる場合じゃない。
「えっと、セイクリッドじゃなくて……あーもう!!」
アプリ内の名前を弄ってからの変身ワードに未だに慣れない――というか羞恥心が一瞬だけどよぎってしまう。
「開き直れあたし! 『ドレスアップ・マイハート』!」




